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───
25年前
「ジルゴバート・・・。」
クラスト陛下・・・いや、クラスト兄様が“兄様”の顔になり自室に呼んだ俺のことをベッドに腰掛けながら見上げている。
剣の腕も政治の腕も確か、それに人望まである完璧な兄が俺をすがるような目で見てくる。
父である先代の王が病により2年前に亡くなり、兄を次の国王にすると明言し亡くなった。
更には・・・
俺には国王の継承権は与えないということも明言をして。
“ジルゴバートは王の器ではない”
そんな“迷言”を残して。
兄よりも全てのことが劣る俺に、そんな“迷言”まで残されている俺に、クラスト兄様は口を開いた。
「お前にはマルチネス妃がどう見える?」
1年前に結婚をした自分の妃のことをそんな風に聞いてきた。
それには首を傾げながらも答える。
「美しくて聡明な女性に見えます。」
“ミランダよりはずっと劣るけれど”
心の中でそう続けた。
そしたら・・・
「ミランダよりも輝いて見えるか?」
そんなことを言われ・・・
固まっている俺にクラスト兄様が砕けた笑顔で笑った。
「ミランダは姿も美しいし器量も良い娘だからな、この宮廷の男達は夢中になる。」
「そうですね・・・。」
「ミランダよりもマルチネス妃は輝いて見えるか?」
もう1度そう聞かれてしまい、俺は首を横に小さく振った。
「俺もだ。
俺もマルチネス妃が輝いては見えない。」
クラスト兄様はそう言って、俺をすがるような目で見上げてきた。
「先王である父が亡くなる直前の最後の仕事、隣国との和平の為に迎えた大切な姫だ。
・・・だが、俺は大切にしてあげられていない。」
「クラスト兄様が・・・?
いつも大切にしているではありませんか。」
「いや、最も重要な“大切にする”ことがこの1年出来なかった・・・。」
クラスト兄様は深く項垂れ、続けた。
「マルチネス妃と1度も子作りが出来ていない。」
それには驚き少しだけ固まった。
「この1年・・・1度もですか?」
「ああ、1度も・・・。
頑張ってはみているが、出来ていない。」
「それは・・・あちらが拒んでいて?」
「違う、俺の男性器の問題だ。
全て俺の方に問題がある。」
「そう・・・だったんですね。
何も気付かず申し訳ありません。」
「側近達に相談はしていたが、お前にいらない苦労を掛けたくなかったから黙っていた。
でも、もう1年経った・・・経ってしまった・・・。」
「はい・・・。」
深く項垂れていたクラスト兄様がゆっくりと顔を上げ、俺の方を少しだけ見た後、また深く項垂れた。
そして・・・
「俺の代わりにマルチネス妃と子作りをしてくれないか、ジルゴバート・・・。
俺達は2人兄弟だ、お前にしか頼めない・・・。
お前しかいない・・・お前しか、いない・・・。」
俺に深く頭を下げながら頼んでくるクラスト兄様の姿を見下ろし、俺の下半身に熱が集まってくるのを感じた。
今までに感じたことのない気持ち良すぎる優越感。
人の上に・・・この完璧な兄様の上に・・・この大国、サンクリア王国の国王陛下の上に・・・今俺は君臨している・・・。
そう思った瞬間・・・
熱が集まっていた下半身の先から熱すぎる熱が放出した。
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25年前
「ジルゴバート・・・。」
クラスト陛下・・・いや、クラスト兄様が“兄様”の顔になり自室に呼んだ俺のことをベッドに腰掛けながら見上げている。
剣の腕も政治の腕も確か、それに人望まである完璧な兄が俺をすがるような目で見てくる。
父である先代の王が病により2年前に亡くなり、兄を次の国王にすると明言し亡くなった。
更には・・・
俺には国王の継承権は与えないということも明言をして。
“ジルゴバートは王の器ではない”
そんな“迷言”を残して。
兄よりも全てのことが劣る俺に、そんな“迷言”まで残されている俺に、クラスト兄様は口を開いた。
「お前にはマルチネス妃がどう見える?」
1年前に結婚をした自分の妃のことをそんな風に聞いてきた。
それには首を傾げながらも答える。
「美しくて聡明な女性に見えます。」
“ミランダよりはずっと劣るけれど”
心の中でそう続けた。
そしたら・・・
「ミランダよりも輝いて見えるか?」
そんなことを言われ・・・
固まっている俺にクラスト兄様が砕けた笑顔で笑った。
「ミランダは姿も美しいし器量も良い娘だからな、この宮廷の男達は夢中になる。」
「そうですね・・・。」
「ミランダよりもマルチネス妃は輝いて見えるか?」
もう1度そう聞かれてしまい、俺は首を横に小さく振った。
「俺もだ。
俺もマルチネス妃が輝いては見えない。」
クラスト兄様はそう言って、俺をすがるような目で見上げてきた。
「先王である父が亡くなる直前の最後の仕事、隣国との和平の為に迎えた大切な姫だ。
・・・だが、俺は大切にしてあげられていない。」
「クラスト兄様が・・・?
いつも大切にしているではありませんか。」
「いや、最も重要な“大切にする”ことがこの1年出来なかった・・・。」
クラスト兄様は深く項垂れ、続けた。
「マルチネス妃と1度も子作りが出来ていない。」
それには驚き少しだけ固まった。
「この1年・・・1度もですか?」
「ああ、1度も・・・。
頑張ってはみているが、出来ていない。」
「それは・・・あちらが拒んでいて?」
「違う、俺の男性器の問題だ。
全て俺の方に問題がある。」
「そう・・・だったんですね。
何も気付かず申し訳ありません。」
「側近達に相談はしていたが、お前にいらない苦労を掛けたくなかったから黙っていた。
でも、もう1年経った・・・経ってしまった・・・。」
「はい・・・。」
深く項垂れていたクラスト兄様がゆっくりと顔を上げ、俺の方を少しだけ見た後、また深く項垂れた。
そして・・・
「俺の代わりにマルチネス妃と子作りをしてくれないか、ジルゴバート・・・。
俺達は2人兄弟だ、お前にしか頼めない・・・。
お前しかいない・・・お前しか、いない・・・。」
俺に深く頭を下げながら頼んでくるクラスト兄様の姿を見下ろし、俺の下半身に熱が集まってくるのを感じた。
今までに感じたことのない気持ち良すぎる優越感。
人の上に・・・この完璧な兄様の上に・・・この大国、サンクリア王国の国王陛下の上に・・・今俺は君臨している・・・。
そう思った瞬間・・・
熱が集まっていた下半身の先から熱すぎる熱が放出した。
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