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「はい。・・・なんだか子どもみたい。
結婚したから誰にも私を取られないのに。」
「インソルドではそうかもしれないが、ここは違う。
なんといっても腐り果てているからな。
第1王妃の息子2人、第1皇太子も第2皇太子もクラスト国王の子どもではないくらいだぞ?
クラスト国王の弟殿下と第1王妃の間に出来た子どもだ。」
「なにそれ・・・。
それって皇太子なの・・・?
そんなことをクラスト陛下が許してたの?」
「クラスト国王は子作りが出来ない身体だったと側近達の間ではよく知られていたことだったらしい。
だから俺もクラスト国王の血は流れていないはず。
そしてクラスト国王の弟殿下の血も。
俺の母親は死ぬ直前までクラスト国王の子どもだと言い残していたらしいが、ムキになっていたらしいから怪しさしかないな。
長過ぎるくらい長く続いている国だ。
そんなこともしながら血を絶やさないようにしていたらしい。」
そんなことをサラッと言って、ステル殿下はその目に力を込めた。
「カルティーヌがこの王宮に来たからには、俺の妻になったからには、俺はこの命に代えてでもカルティーヌに傷1つ付けさせない。
その為に俺は次の国王になる。
そして・・・」
ステル殿下は言葉を切り辛そうな顔で目をギュッと閉じ、しばらくしてから開けた。
「アデルの砦の向こう側に追いやられた挙げ句、恐怖と痛みと苦しみと絶望の中で死んでしまった全ての民が次の人生で幸せになれるような国を作り直したい。」
その言葉をステル殿下から聞き、私は深く深く頷いた。
「アデルの砦の第1騎士団と一緒に多くの遺体を埋葬してくれたのは第2騎士団だったと聞いたよ。」
「そうだな・・・。」
「ありがとう。」
「・・・多くの命を守れなかったから“ありがとう”ではない。」
「うん、でも・・・ありがとうとは言わせて。」
両手を伸ばしステル殿下の首に両手を回した。
ステル殿下を抱き締めるとステル殿下も私の身体を抱き締め返してきた。
少しだけ震えているステル殿下の身体を感じながら、私は口を開いた。
「作り直そう、この王国を。
生き抜くだけではなく、作り直そう。
私達にはその地位を与えられた。」
「そうだな、与えられたな・・・。
そんなものなんていらなかったと思っていたのに・・・。
よく浮かび上がってくれたな、カルティーヌ。
こんな花で可哀想だが・・・。」
「“こんな花“じゃないから。
私はヒヒンソウの花が1番好きなの。」
私の言葉にステル殿下はピクリと身体を動かし、私の首筋に埋めていた顔をゆっくりと上げた。
それから大きな手を私の胸の間に置き・・・
私の唇に唇を重ねてきた・・・。
歯を強く食い縛っていたのか、ステル殿下の唇からは血の味がした・・・。
カルティーヌside.............
結婚したから誰にも私を取られないのに。」
「インソルドではそうかもしれないが、ここは違う。
なんといっても腐り果てているからな。
第1王妃の息子2人、第1皇太子も第2皇太子もクラスト国王の子どもではないくらいだぞ?
クラスト国王の弟殿下と第1王妃の間に出来た子どもだ。」
「なにそれ・・・。
それって皇太子なの・・・?
そんなことをクラスト陛下が許してたの?」
「クラスト国王は子作りが出来ない身体だったと側近達の間ではよく知られていたことだったらしい。
だから俺もクラスト国王の血は流れていないはず。
そしてクラスト国王の弟殿下の血も。
俺の母親は死ぬ直前までクラスト国王の子どもだと言い残していたらしいが、ムキになっていたらしいから怪しさしかないな。
長過ぎるくらい長く続いている国だ。
そんなこともしながら血を絶やさないようにしていたらしい。」
そんなことをサラッと言って、ステル殿下はその目に力を込めた。
「カルティーヌがこの王宮に来たからには、俺の妻になったからには、俺はこの命に代えてでもカルティーヌに傷1つ付けさせない。
その為に俺は次の国王になる。
そして・・・」
ステル殿下は言葉を切り辛そうな顔で目をギュッと閉じ、しばらくしてから開けた。
「アデルの砦の向こう側に追いやられた挙げ句、恐怖と痛みと苦しみと絶望の中で死んでしまった全ての民が次の人生で幸せになれるような国を作り直したい。」
その言葉をステル殿下から聞き、私は深く深く頷いた。
「アデルの砦の第1騎士団と一緒に多くの遺体を埋葬してくれたのは第2騎士団だったと聞いたよ。」
「そうだな・・・。」
「ありがとう。」
「・・・多くの命を守れなかったから“ありがとう”ではない。」
「うん、でも・・・ありがとうとは言わせて。」
両手を伸ばしステル殿下の首に両手を回した。
ステル殿下を抱き締めるとステル殿下も私の身体を抱き締め返してきた。
少しだけ震えているステル殿下の身体を感じながら、私は口を開いた。
「作り直そう、この王国を。
生き抜くだけではなく、作り直そう。
私達にはその地位を与えられた。」
「そうだな、与えられたな・・・。
そんなものなんていらなかったと思っていたのに・・・。
よく浮かび上がってくれたな、カルティーヌ。
こんな花で可哀想だが・・・。」
「“こんな花“じゃないから。
私はヒヒンソウの花が1番好きなの。」
私の言葉にステル殿下はピクリと身体を動かし、私の首筋に埋めていた顔をゆっくりと上げた。
それから大きな手を私の胸の間に置き・・・
私の唇に唇を重ねてきた・・・。
歯を強く食い縛っていたのか、ステル殿下の唇からは血の味がした・・・。
カルティーヌside.............
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