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私の言葉にモルダン近衛騎士団長はもっと目を鋭くさせた。
そして私には何も言い返さずにケロルドの方を見た。
「申し訳ありません・・・その・・・聖女様です。」
「聖女だ~?
何を言い出すのかと思ったらそんな迷信を!!」
「いえ、本当に聖女様でして。」
「胸の真ん中に花の刻印が浮かび上がって王族と結婚するというアレだろ!?
王族が身分の低い女を側室ではなく正室に迎える為の言い訳だろ!!
数百年に1度ポッと出て来て“国に安泰を”なんて記録されてな!!
で、誰の正室になった身分の低い女なんだよ!?」
モルダン近衛騎士団長が大笑いしながらそう聞くと、周りにいた騎士達もグースを宥めながら笑い始めた。
私は胸壁から飛び降り、1番近くにいたモルダン近衛騎士団長が乗っていたグースに近付きながら答えた。
「ステル殿下の皇太子妃。」
「・・・ステル団長・・・いや、殿下の・・・?
それは有り得ない・・・あいつには好きな女が・・・。」
18年前、近衛騎士団は団長と副団長が消えてしまった。
そして新しく団長として選ばれたのがこのモルダン団長ということになる。
クラスト陛下ではなくジルゴバート弟殿下に選ばれたということになるこの男。
そんな男がステル殿下に好きな女がいたことを知っている。
まあ、宮廷のほとんどの人達は知っているようだったけれど。
「・・・そんなことより、何をしている!!
馬とは違う!!これは魔獣だぞ!!?
触るな!!!」
モルダン団長が私の身体を掴むよりも早く、私はグースの上に勢い良く乗った。
「・・・なっ・・・な、なにを・・・っ何故・・・っっ」
目も口も大きく開けながら驚き私を見上げているモルダン近衛騎士団長。
そんなに驚かれると私の方が驚く。
「乗るのに申請とか必要だった?」
「いや・・・そうではなくて・・・グースに乗れるのは限られた者だけで・・・。」
「グースが認めた人間だけだよね?」
「そうだ・・・それも・・・」
「サンクリア王国の為に戦う戦士。
小国だったクリア王国を4つ目の大国であるサンクリア王国にした剣王、魔獣持ちだったロンタス王が従えていた魔獣グース。
サンクリア王国の為に戦う戦士であるとグースが認めればその人間はグースに乗れる。」
「それもそうだが・・・しかし、グースはその個体が認めた1人の人間しか乗せない・・・。」
「そうなの?それは知らなかった。
インソルドにもインラドルにも1体ずついたけど、みんな乗ってたよ?
なんなら子どもでも乗ってたけど。」
「インソルドと・・・インラドル・・・?」
モルダン近衛騎士団長が驚いた顔のまま呟いたので、私はその顔に大笑いしながら頷いた。
「私はインソルドのマフィオス家の長女、カルティーヌ。」
「インソルドの・・・マフィオス家の・・・。
そうでしたか、失礼しました。
自分は男爵家出身のモルダン、18年前より近衛騎士団長に就任しております。」
モルダン近衛騎士団長が右手を握り拳にし、その手を左胸に当て騎士のポーズをした。
その姿を見てから私はグースの身体を両足で少しだけ刺激した。
それによりグースは翼を開き小さく羽ばたき、少しだけ浮上した。
久しぶりに感じるこの感覚に嬉しくなりながらモルダン近衛騎士団長を、それから他の騎士長を見渡す。
「私は没落貴族のマフィオス家の人間だけどね~!!
よかった、この王国はまだクラスト陛下の王国みたいだね!!
てっきりジルゴバートの王国に変わってるのかと思ってた!!
私は死なないからグースに乗ろうとして確かめようとしてたんだ!!
みんなまだちゃんとクラスト国王陛下に忠誠を誓う騎士・・・戦士だね!!」
モルダン近衛騎士団長も他の騎士達も何の反応もしなかったけれど、私は大きく笑いながら空を指差した。
「ちょっと飛んでくる!
“死の森”まで馬で約3週間も掛かる道のりをたった10分で翔ることが出来るグースの足だから一瞬で戻ってくるから!!
体感的にはもっと乗ってるけどね!!」
それだけ言い残し、両足で強くグースを刺激した。
そして私には何も言い返さずにケロルドの方を見た。
「申し訳ありません・・・その・・・聖女様です。」
「聖女だ~?
何を言い出すのかと思ったらそんな迷信を!!」
「いえ、本当に聖女様でして。」
「胸の真ん中に花の刻印が浮かび上がって王族と結婚するというアレだろ!?
王族が身分の低い女を側室ではなく正室に迎える為の言い訳だろ!!
数百年に1度ポッと出て来て“国に安泰を”なんて記録されてな!!
で、誰の正室になった身分の低い女なんだよ!?」
モルダン近衛騎士団長が大笑いしながらそう聞くと、周りにいた騎士達もグースを宥めながら笑い始めた。
私は胸壁から飛び降り、1番近くにいたモルダン近衛騎士団長が乗っていたグースに近付きながら答えた。
「ステル殿下の皇太子妃。」
「・・・ステル団長・・・いや、殿下の・・・?
それは有り得ない・・・あいつには好きな女が・・・。」
18年前、近衛騎士団は団長と副団長が消えてしまった。
そして新しく団長として選ばれたのがこのモルダン団長ということになる。
クラスト陛下ではなくジルゴバート弟殿下に選ばれたということになるこの男。
そんな男がステル殿下に好きな女がいたことを知っている。
まあ、宮廷のほとんどの人達は知っているようだったけれど。
「・・・そんなことより、何をしている!!
馬とは違う!!これは魔獣だぞ!!?
触るな!!!」
モルダン団長が私の身体を掴むよりも早く、私はグースの上に勢い良く乗った。
「・・・なっ・・・な、なにを・・・っ何故・・・っっ」
目も口も大きく開けながら驚き私を見上げているモルダン近衛騎士団長。
そんなに驚かれると私の方が驚く。
「乗るのに申請とか必要だった?」
「いや・・・そうではなくて・・・グースに乗れるのは限られた者だけで・・・。」
「グースが認めた人間だけだよね?」
「そうだ・・・それも・・・」
「サンクリア王国の為に戦う戦士。
小国だったクリア王国を4つ目の大国であるサンクリア王国にした剣王、魔獣持ちだったロンタス王が従えていた魔獣グース。
サンクリア王国の為に戦う戦士であるとグースが認めればその人間はグースに乗れる。」
「それもそうだが・・・しかし、グースはその個体が認めた1人の人間しか乗せない・・・。」
「そうなの?それは知らなかった。
インソルドにもインラドルにも1体ずついたけど、みんな乗ってたよ?
なんなら子どもでも乗ってたけど。」
「インソルドと・・・インラドル・・・?」
モルダン近衛騎士団長が驚いた顔のまま呟いたので、私はその顔に大笑いしながら頷いた。
「私はインソルドのマフィオス家の長女、カルティーヌ。」
「インソルドの・・・マフィオス家の・・・。
そうでしたか、失礼しました。
自分は男爵家出身のモルダン、18年前より近衛騎士団長に就任しております。」
モルダン近衛騎士団長が右手を握り拳にし、その手を左胸に当て騎士のポーズをした。
その姿を見てから私はグースの身体を両足で少しだけ刺激した。
それによりグースは翼を開き小さく羽ばたき、少しだけ浮上した。
久しぶりに感じるこの感覚に嬉しくなりながらモルダン近衛騎士団長を、それから他の騎士長を見渡す。
「私は没落貴族のマフィオス家の人間だけどね~!!
よかった、この王国はまだクラスト陛下の王国みたいだね!!
てっきりジルゴバートの王国に変わってるのかと思ってた!!
私は死なないからグースに乗ろうとして確かめようとしてたんだ!!
みんなまだちゃんとクラスト国王陛下に忠誠を誓う騎士・・・戦士だね!!」
モルダン近衛騎士団長も他の騎士達も何の反応もしなかったけれど、私は大きく笑いながら空を指差した。
「ちょっと飛んでくる!
“死の森”まで馬で約3週間も掛かる道のりをたった10分で翔ることが出来るグースの足だから一瞬で戻ってくるから!!
体感的にはもっと乗ってるけどね!!」
それだけ言い残し、両足で強くグースを刺激した。
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