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アデルの砦は魔獣だけではなく、そういった民を巨大な城壁の向こう側に通行させない為の物にもなってしまっていた。
出るのは簡単なのに戻る時には高額な手数料を払い申請し、その申請が監視棟で通らなければ通行することが出来ないことになっていた。



それは第1騎士団の管轄ではなく、ジルゴバート弟殿下の私設警護団のうちの1つ。
ジルゴバート弟殿下の私設警護団が第1騎士団に入り込み数ヶ月後の出来事だった。



アデルの砦の向こう側では税収が年々上がり、アデルの砦のこちら側には多くの民が貧困に喘ぎながら暮らしていた。



アデルの砦にいる第1騎士団がその民達に寄り添い民は毎年冬を越せていた。
1年前のあの日は春が始まる少し前の温かな日だった。



「多くの民が死んでしまった・・・。
それに喜んだのはジルゴバートだけ・・・。
きっと、ジルゴバートは喜んでいたはず・・・。
アデルの砦のこちら側にいる民のことをムシケラ以下に思っていたはずだから・・・。」



両手を強く握り締めながら呟くと、後ろを歩くケロルドから不穏な空気が出た。



「カルティーヌ姫、宮廷内でそういった発言は本当にお気をつけください。」



重い声を出してきて、それには笑いながらケロルドを振り向いた。



「そんな声も出せるんだ?
それはあの日に生き残れたはずだね。」



「僕は奇跡的に生き残れましたが、3人もの団員が亡くなりました・・・。」



「え・・・3人!?
あ、こういう言い方もアレだけどさ、え、3人!?」



「はい・・・ステル副団長・・・あ、ステル団長・・・いや、ステル殿下が指揮を取り始める前に3人殺られてしまって・・・。」



「・・・アイツ、やるな~・・・。」



物凄く悔しい気持ちになりながらステル殿下のことを思い浮かべた。



そしたら・・・



「今日1回も見てないから昨晩の姿しか思い出せない・・・!!」



少しだけ頭を抱えながらも笑った。
私は自分よりも強い男の元へと嫁げていたらしいから。
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