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この世界には4つの大国と3つの小国がある。
それらの国や森、川、海、山脈、氷山、その全てよりも遥かに大きな面積を占めているといわれているのが“死の森”だった。



“死の森”を中心としてこの世界は地図で表記されている。
でも、この“死の森”の広さを正確に記した地図はこの世界に存在していない。



“死の森”を渡りきった者は誰1人いないうえに、“死の森”の解明はどの国でも出来ていないから。



ひび割れたカラカラの地面、あるのは様々な濃淡の霧だけ。
その霧は深い森のように思わせる。
空も見えない深い森に。



そこからたまに魔獣が出現する。
魔獣の多くは人を襲い、街や村を襲い、そして王都を目指す。



“死の森”のすぐ目の前にある広大な森を抜けると街や村が見えてくる。



そして大国の1つであるサンクリア王国。
私が暮らすインソルドの村には400人が暮らしている。
この小さな村は王都から馬で約3週間の場所にある。



川を挟んで隣にあるヨークが暮らす村、インラドルの村も同じくらいの村人がいる。



インソルドとインラドルは“死の森”と広大な森の間、その小さな領地にこの2つの村が存在している。



王都に領地がある貴族だったマフィオス家がこの辺境の地に流されたのは大昔のこと。



没落貴族となったマフィオス家はこの村で生き抜く為に強くなった。



“死の森”と広大な森の狭間で、強く強く強く、どこまでも強くなった。



「怖い顔しないでよ、ルル。
“月のモノ”の話を男の前で話したのは謝るから。ごめんね?」



狩りの後に男達が水浴びをする湖のほとりでソソの水浴びを眺めながらこの村のことを考えていたら、ソソがそう言ってきた。



「うん、ちょっと驚いただけ。
別に怒ってないよ?」



少しだけ癖のある漆黒の髪の毛が水で濡れてペタッと顔に貼り付いているソソに答え、私は小さなナイフを太ももから抜いてあぐらをかいた。



「おいで?髪の毛切ってあげる。」



私の言葉にソソが嬉しそうに頷き、湖からゆっくりと上がってきた。
そしたら、その時・・・



カサ────────...と向こう側から小さな音が聞こえた。
裸のソソとほぼ同時にその音の方に構えた時、魔獣がいた。



狩りや討伐の後の私とソソの水浴びには誰も入ってはいけないと村の人間だったら全員が分かっている。



人ではないとは思っていたけれど、物音を出したのは魔獣だった・・・。
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