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俺の目の前には羽鳥さんがいる。
いつも座っていた俺の目の前のカウンター席に、羽鳥さんがいる。
凄く嬉しいはずなのに。
死ぬほど嬉しいはずなのに。
ずっとずっと待ち続けてたはずなのに。
死ぬほど苦しくなってくる。
「醤油ラーメンがオススメなんだ?
今時ラーメン1杯が650円って随分と安いな!!」
「税込での値段ですからね?」
「羽鳥さんがこういうお店に来ていたのは意外です。
勉強で来ていたんですか?」
「勉強・・・もあるかもしれませんけど、醤油ラーメンも美味しいですし、それに・・・この場所で少し息抜きをさせて貰っていました。」
「お嬢様も大変ですからね。」
「流石は婚約者様、よくご存知で。」
死ぬほど苦しくなってくる。
「財閥のお嬢様にずっと片想いをしていたくらいなので、一般家庭出身の俺でもお嬢様の大変さは分かります。」
「一般家庭って・・・。
ご両親2人とも化粧品業界最大手の社長さんなので、一般家庭ではないですよ。」
死ぬほど苦しくなってくる。
「2人とも代表に成り上がっただけの家なので、一般家庭にも満たないような親2人ですけどね。
小さな商店街出身の2人なので。」
死ぬほど苦しくなって、死ぬほどムカついてくる。
「何か忘れ物ですか?」
男のその言葉にチラッと羽鳥さんのことを見ると、昔と同じような高そうな鞄の中を漁っている。
「ハンカチが見当たらなくて・・・。
ナプキンがない所では膝の上にハンカチを広げているんですけど・・・。」
その言葉を聞き、俺は慌ててポケットの中に手を突っ込んだ。
そしてソレを握り、苦しい中でも自然と笑顔になった時・・・
「俺のでよければ使いまいますか?」
その男が綺麗にアイロンがかけられたハンカチを羽鳥さんに差し出した。
その渡し方もやけに格好良く見えたし、そのハンカチもやけに綺麗に見えたし、それだけじゃなくて高そうなハンカチに見えた。
何年前のクリーニングの袋なのかも分からないような袋に入った、俺が口を付けてしまったようなハンカチなんかより・・・
やっぱり”普通“でもないような俺が渡すハンカチなんかより・・・
羽鳥さんに似合っていた。
その男もその男が持つハンカチも、ムカつくくらいに羽鳥さんに似合っていた。
いつも座っていた俺の目の前のカウンター席に、羽鳥さんがいる。
凄く嬉しいはずなのに。
死ぬほど嬉しいはずなのに。
ずっとずっと待ち続けてたはずなのに。
死ぬほど苦しくなってくる。
「醤油ラーメンがオススメなんだ?
今時ラーメン1杯が650円って随分と安いな!!」
「税込での値段ですからね?」
「羽鳥さんがこういうお店に来ていたのは意外です。
勉強で来ていたんですか?」
「勉強・・・もあるかもしれませんけど、醤油ラーメンも美味しいですし、それに・・・この場所で少し息抜きをさせて貰っていました。」
「お嬢様も大変ですからね。」
「流石は婚約者様、よくご存知で。」
死ぬほど苦しくなってくる。
「財閥のお嬢様にずっと片想いをしていたくらいなので、一般家庭出身の俺でもお嬢様の大変さは分かります。」
「一般家庭って・・・。
ご両親2人とも化粧品業界最大手の社長さんなので、一般家庭ではないですよ。」
死ぬほど苦しくなってくる。
「2人とも代表に成り上がっただけの家なので、一般家庭にも満たないような親2人ですけどね。
小さな商店街出身の2人なので。」
死ぬほど苦しくなって、死ぬほどムカついてくる。
「何か忘れ物ですか?」
男のその言葉にチラッと羽鳥さんのことを見ると、昔と同じような高そうな鞄の中を漁っている。
「ハンカチが見当たらなくて・・・。
ナプキンがない所では膝の上にハンカチを広げているんですけど・・・。」
その言葉を聞き、俺は慌ててポケットの中に手を突っ込んだ。
そしてソレを握り、苦しい中でも自然と笑顔になった時・・・
「俺のでよければ使いまいますか?」
その男が綺麗にアイロンがかけられたハンカチを羽鳥さんに差し出した。
その渡し方もやけに格好良く見えたし、そのハンカチもやけに綺麗に見えたし、それだけじゃなくて高そうなハンカチに見えた。
何年前のクリーニングの袋なのかも分からないような袋に入った、俺が口を付けてしまったようなハンカチなんかより・・・
やっぱり”普通“でもないような俺が渡すハンカチなんかより・・・
羽鳥さんに似合っていた。
その男もその男が持つハンカチも、ムカつくくらいに羽鳥さんに似合っていた。
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