【R18・完】お嬢様は“いけないコト”がしたい

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このブランドのハンカチを妹に調べて貰ってから百貨店に初めて入った。
18歳になった翌日、俺は初めて百貨店に入った。



何年も着ている洋服で、何年前から着ているのかも分からないような洋服で、俺は百貨店といわれる場所に初めて入った。



そこで売られていたハンカチ。
羽鳥さんの名字と同じ“Hatori”の洋服屋。
ヨレヨレの服を着て入った俺にも親切に接客をしてくれ、このハンカチと似たようなハンカチを見せてくれた。



そのハンカチを見て俺は驚くしかなかった。



うちの店が出しているラーメン1杯の値段どころではない、“たっっっっか！！！！”としか思えないような値段のハンカチだったから。



それで思い知った。



元々頭では分かっていたけれど、改めて思い知った。



俺と羽鳥さんの間にはやっぱり境界線が引かれていた。



手を伸ばしても絶対に届くことはないくらいの境界線が引かれていた。



好きになっていい人ではなかった。



妄想や夢でもデートやセックスなんて出来る人ではなかった。



勘違いしてしまっていた。



あの人があまりにも俺のことを好きでいてくれるから。



俺はあんなにも勘違いしてしまっていた。



“普通”だったら喋ることも出会うことも、すれ違うこともない人だった。



「異性として好きになって、変な妄想や夢を見て、気持ち悪い所を見せて、すみませんでした・・・。」



クリーニングの袋の上から指先でほんの少しだけ羽鳥さんのハンカチに触れた。



“会いたい”と思いながら・・・。



“もう1度会いたい”と思いながら・・・。



「次は絶対に失敗しません・・・。
俺、もう二十歳になりました・・・。
“普通”以下の男ですけど、もう大人なので次はもう失敗しませんから・・・。」



羽鳥さんのハンカチに今日もそう伝える。



28歳になっている羽鳥さんを想像しながら。



25歳の時よりももっとお姉さんになっている、俺の知らない羽鳥さんを想像しながら。



今日もそんなことをしていた時・・・



“あの日”の翌日につけた店の扉の鈴、その音なんて何も聞こえないくらいの大きな音で店の扉が開いた。



「おい、幸治！！
千寿子(ちずこ)が一人暮らししてる家どこだよ！！？」



俺が高校を卒業した日と同じくらいのタイミングで北海道へと行った常連さん。
大きな会社の北海道支社の立ち上げを任され、最年少で出世をしたといういつも“千寿子千寿子千寿子千寿子”と福富のことが大好きで、煩くて面倒な男の常連さんが約2年半ぶりに店に入ってきた。



やっぱり“千寿子”と煩く騒ぎながら。