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待合室に戻ると幸治君だけではなく唯斗君まで椅子に座っていて、他に2人しかいない女の人から私のことをチラチラと見られてしまった。



私の姿を確認すると幸治君はサッと立ち上がり、凄く心配そうな顔で私のことを見ている。



それは分かったけれど、先に唯斗君に伝える。



「車で送ってくれてありがとう。」



「うん、どうだった?」



唯斗君からの質問に今度は幸治君のことを見上げて口を開く。



「大丈夫だった。」



私の言葉に幸治君は凄く安心した顔を見せ、その顔に私は自然と笑顔になりながらもう1度口を開いた。



「ちゃんと元気だったよ。
生まれる前から凄く良い子。
こんな“ママ”なのにこの子は凄く良い子で・・・」



“幸治君に似たのかもね”



その言葉は飲み込み、でも幸治君に向かって片手を伸ばした。



そしたらすぐに幸治君が手を動かしてくれて私の手を優しく握ってくれた。



「でも一美ちゃんまた車で帰るでしょ?」



唯斗君からの質問に“どうしよう”と考える。



“どうしよう”



その言葉が浮かんでくるけれど、幸治君の手はもう離せそうになくて。



「どうしよう・・・。」



実際に言葉に出してしまった私に幸治君は私の手を優しく引き、もっと自分の近くに引き寄せた。



「俺も一緒に行くから、もう1度ちゃんと話しましょう。」



幸治君からの提案には頷きたくなる。



頷きたくなるけれど、そんな簡単には頷けない。



きっと頷いてはいけない。



そう思って苦しくなった瞬間・・・



また私の下腹部に痛みが走った。



“なるべく安静にしてください。”



最後に言われた先生の言葉が私の中にもう1度戻ってきた。



「俺はこの後は分家会なだけだから時間は大丈夫!
車で2人とも送って行くよ!」



唯斗君の言葉に私の思考は停止した。



でも、一瞬だけ。



「分家会って?」



「あ・・・!いや、まあ・・・向こうに出向してる30代以下のメンバーで月に1度開催してる会でさ。
愚痴言ったり悪口言ったり酔い潰れたり歌いまくったりする会。
一美ちゃんと一平君は呼んでないよ、2人が悪口の対象だったりするし。」



普通にそんなことまでバラしてきた唯斗君に私も普通に頷き、妊娠してから初めてこんなにクリアに思考が動き出した。



そして交渉君の手から私の手を抜き、鞄からキーケースを取り出した。



そこにある5本の鍵を見下ろしてから、その1本を幸治君に渡す。



幸治君と一緒に暮らしていた家の鍵を。



「返すの忘れててごめんね?」



それでもこのキーケースから取り外すことが出来なかった鍵を、今幸治君に返した。
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