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雲1つない青空は悲しい空ではなく、何でか懐かしい空に思えてきた。
幸治君と出会った日も幸治君の18歳の誕生日の日もこんな青空だったからかもしれない。
「羽鳥さん、俺・・・好きな女の子が出来た。」
「うん・・・。」
「羽鳥さんと同じ歳のお姉さんで、羽鳥さんと同じ生粋の・・・本物のお嬢様で・・・。」
「うん・・・。」
「羽鳥さんもよく知ってる女の子、一美さんっていうお姉さん。」
「うん・・・・っっ」
何でか涙が溢れてきて、幸治君の好きな相手である“一美さん”の話を“羽鳥さん”は聞いていく。
「俺、羽鳥さんと同じくらい好きな女の子が出来たんだ。
羽鳥さんと同じくらい好きになれる女の子なんて絶対にいないと思ってたけど、“ラーメン 安部”で出会った一美さんのことを俺は一瞬で好きになった。」
「うん・・・っ」
「凄く好きで・・・もう、めちゃくちゃ好きで・・・。
一美さんの為なら何でもしたいと思ったし、一美さんの為にどんな男にも・・・凄い男にでもなりたいと思った。」
「うん・・・っ」
「“先生”から俺は“普通”程度の男にして貰えていたから・・・。
だから一美さんのことを“可哀想”にしない為に、俺は“凄い男”になることを目的地に変えた。
俺の家は“普通”以下みたいな家だけど、それでも俺は・・・俺が一美さんのことを幸せにしたいと思って・・・。」
「うん・・・っ」
「でも・・・・でもさ、俺、分からなくて・・・。
羽鳥さん・・・。」
幸治君がまた“羽鳥さん”と呼び、重い声を出した。
「やっぱり、俺じゃダメだった・・・。」
その言葉に大きく涙が流れる。
「もう、ダメでさ・・・。
何を言っても、どう伝えても全然ダメでさ・・・。
マジでもう分からない・・・。
これ以上どう頑張れば良いのか分からない・・・。」
「・・・・・・っっ」
「一美さんのお腹の中には俺との子どもまでいるのに、ですよ・・・?
俺も遅くはなったけど“凄い男”になれたのに、一美さんは俺じゃなくて他の男と結婚をして他の男との子どもまで生む目的地に変えたらしい・・・。」
「・・・・・っっ」
「“悩み”なんてレベルじゃなく、死ぬほどショックな話なんっすけど。」
「・・・・・・っうん。」
「愚痴を聞いて貰ってもいいですか?」
「うん・・・。」
返事をした私に幸治君は一瞬だけ黙り、それから早口でペラペラと愚痴を言い始めた。
「俺は一美さんのことを忘れるって言われましたけど、一美さんこそ俺のことなんてすぐに忘れるんですよ。
俺の母親だって“父さん”の子どもである俺のことを妊娠してたのに“お父さん”のことを好きになって結婚して、俺を産んだ後に年子の子を2人も産んでさ~・・・。
めっちゃセックスしまくってるじゃん。
ていうか、産後すぐに妊娠とかマジでナイ。
・・・・・・・マジでナイって、一美さん・・・。」
“一美さん”のことを自分のお母さんに重ねているであろう幸治君がそう嘆き・・・
「一美さんの次の男がさ・・・俺の“父さん”みたいに変になったら・・・その時は離婚するのかな・・・・。」
小さな小さな声で呟いた。
「そしたら・・・その時はさ・・・“父さん”みたいに、俺もまた一美さんと・・・一美さんと一緒にいられるのかな・・・。
俺・・・・俺も、俺も一美さんと結婚したいんですけど、一美さんの子ども達はそれを許してくれるかな・・・。」
幸治君のその言葉には私の口から嗚咽まで出てきて、慌てて口を押さえる。
「俺は“お父さん”からも“父さん”からも育てられてるから・・・自分の子どもじゃないと分かってても・・・ちゃんと育てられるから・・・。
でも・・・」
言葉を切った幸治君がゆっくりと吐き出した。
「きっと、子どもにとっては“自分のお父さん”が1番良いからな・・・。
きっと・・・俺が一美さんと再婚することで子ども達を凄く傷付けることになるからな・・・。
俺・・・一美さんの子ども達に“あんな思い”なんてさせたくないな・・・。」
幸治君と出会った日も幸治君の18歳の誕生日の日もこんな青空だったからかもしれない。
「羽鳥さん、俺・・・好きな女の子が出来た。」
「うん・・・。」
「羽鳥さんと同じ歳のお姉さんで、羽鳥さんと同じ生粋の・・・本物のお嬢様で・・・。」
「うん・・・。」
「羽鳥さんもよく知ってる女の子、一美さんっていうお姉さん。」
「うん・・・・っっ」
何でか涙が溢れてきて、幸治君の好きな相手である“一美さん”の話を“羽鳥さん”は聞いていく。
「俺、羽鳥さんと同じくらい好きな女の子が出来たんだ。
羽鳥さんと同じくらい好きになれる女の子なんて絶対にいないと思ってたけど、“ラーメン 安部”で出会った一美さんのことを俺は一瞬で好きになった。」
「うん・・・っ」
「凄く好きで・・・もう、めちゃくちゃ好きで・・・。
一美さんの為なら何でもしたいと思ったし、一美さんの為にどんな男にも・・・凄い男にでもなりたいと思った。」
「うん・・・っ」
「“先生”から俺は“普通”程度の男にして貰えていたから・・・。
だから一美さんのことを“可哀想”にしない為に、俺は“凄い男”になることを目的地に変えた。
俺の家は“普通”以下みたいな家だけど、それでも俺は・・・俺が一美さんのことを幸せにしたいと思って・・・。」
「うん・・・っ」
「でも・・・・でもさ、俺、分からなくて・・・。
羽鳥さん・・・。」
幸治君がまた“羽鳥さん”と呼び、重い声を出した。
「やっぱり、俺じゃダメだった・・・。」
その言葉に大きく涙が流れる。
「もう、ダメでさ・・・。
何を言っても、どう伝えても全然ダメでさ・・・。
マジでもう分からない・・・。
これ以上どう頑張れば良いのか分からない・・・。」
「・・・・・・っっ」
「一美さんのお腹の中には俺との子どもまでいるのに、ですよ・・・?
俺も遅くはなったけど“凄い男”になれたのに、一美さんは俺じゃなくて他の男と結婚をして他の男との子どもまで生む目的地に変えたらしい・・・。」
「・・・・・っっ」
「“悩み”なんてレベルじゃなく、死ぬほどショックな話なんっすけど。」
「・・・・・・っうん。」
「愚痴を聞いて貰ってもいいですか?」
「うん・・・。」
返事をした私に幸治君は一瞬だけ黙り、それから早口でペラペラと愚痴を言い始めた。
「俺は一美さんのことを忘れるって言われましたけど、一美さんこそ俺のことなんてすぐに忘れるんですよ。
俺の母親だって“父さん”の子どもである俺のことを妊娠してたのに“お父さん”のことを好きになって結婚して、俺を産んだ後に年子の子を2人も産んでさ~・・・。
めっちゃセックスしまくってるじゃん。
ていうか、産後すぐに妊娠とかマジでナイ。
・・・・・・・マジでナイって、一美さん・・・。」
“一美さん”のことを自分のお母さんに重ねているであろう幸治君がそう嘆き・・・
「一美さんの次の男がさ・・・俺の“父さん”みたいに変になったら・・・その時は離婚するのかな・・・・。」
小さな小さな声で呟いた。
「そしたら・・・その時はさ・・・“父さん”みたいに、俺もまた一美さんと・・・一美さんと一緒にいられるのかな・・・。
俺・・・・俺も、俺も一美さんと結婚したいんですけど、一美さんの子ども達はそれを許してくれるかな・・・。」
幸治君のその言葉には私の口から嗚咽まで出てきて、慌てて口を押さえる。
「俺は“お父さん”からも“父さん”からも育てられてるから・・・自分の子どもじゃないと分かってても・・・ちゃんと育てられるから・・・。
でも・・・」
言葉を切った幸治君がゆっくりと吐き出した。
「きっと、子どもにとっては“自分のお父さん”が1番良いからな・・・。
きっと・・・俺が一美さんと再婚することで子ども達を凄く傷付けることになるからな・・・。
俺・・・一美さんの子ども達に“あんな思い”なんてさせたくないな・・・。」
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