【R18・完】お嬢様は“いけないコト”がしたい

Bu-cha

文字の大きさ
上 下
542 / 585
36

36-9

しおりを挟む
号泣しながらもしっかりと早足でエレベーターを降りられていた、その時・・・



私の鞄からスマホの着信が聞こえた。



それには一気に冷静になり、早退してしまった仕事のことを思い浮かべ急いでスマホを取り出した。



そしたら、見えた。



スマホの画面に表示されている番号が。



登録していない番号なのにちゃんと知っている番号。



ちゃんと覚えている番号。



私が“いけないコト”を幸治君と始めるキッカケとなった番号。



私が“忘れた”と嘘をついた幸治君のスマホの電話番号が、私のスマホに表示されていた。



「私の番号・・・っ渡したのなんて、ずっと昔なのに・・・っ」



幸治君の18歳の誕生日の日に渡した私の連絡先に、幸治君がこのタイミングで電話をしてきた。



これから先、幸治君に何を言われても私は幸治君からのどんな言葉も受け取るつもりはない。



幸治君のことを“可哀想”にしない為に。



だって、私は“普通”ではないから。



私は増田財閥の分家の女。



私の家族以外の分家の人間達はまだ財閥に戻ることを許されていない。



そんな中でこの子が私のお腹に来たということを、私の家や加藤の家だけではなく他の分家達が黙っているわけがない。



譲社長だってどう判断するのかも分からない。



“幸治君のことを巻き込みたくない”と強く思う。



幸治君には本当に幸せになって欲しいと心から願っていたから。



昔から本当に、ちゃんとそれを望んでいたから。



幸治君が若くて可愛い女の子と幸せになっている姿を想像し、どんなに苦しくても昔からそれを心から望んでいた。



だから、私は幸治君からのどんな言葉も受け取るわけにはいかない。



“俺の幸せを一美さんが決めないでください”



何度その言葉を言われたとしても、私は絶対に受け取ることはない。



そう思う・・・。



本当に、そう思う・・・。



スマホの画面に表示されている幸治君の電話番号を見下ろしながら、そう思う・・・。



「今更もう遅いよ・・・。」



“待っていたんだよ。”



““羽鳥さん”はずっと、幸治君からの連絡を待っていたんだよ。”



“幸治君が言っていたから・・・。”



““いつスマホを持つかも分かりませんし、スマホを持った時に羽鳥さんがまだここに来てくれているかも分かりませんけど、絶対に連絡します。”と、そう言っていたから。”



「今更もう遅いよ・・・。」



もう1度そう文句を言った。



文句を言ったけれど・・・



通話ボタンを押した後にスマホをゆっくりと耳に当てた。



“凄く嬉しい”と思いながら。



“やっぱり、凄く凄く嬉しい”と思いながら。



幸治君からの電話を、私はずっと待っていたのだと改めて思いながら。



号泣しながら電話に出た私の耳に、幸治君の声が直接響いてきた。



私の耳に、頭に、全身に響くくらい愛おしい幸治の声が・・・



「“羽鳥さん”。」



と・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

処理中です...