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「こっちじゃなくて譲社長の社長室だろ?
聞いてないのか?」
ムカつきすぎて・・・もう、マジで・・・死ぬほど大嫌いすぎて・・・怒りで震えてくる口元に気付く。
口元だけではなく全身が震えてくる。
頭に一気に血が巡ってきた。
でも・・・
身体はこんなにも熱くなったはずなのに、頭までこんなにも沸騰したはずなのに、なんでか次の瞬間には全身がサッ─────...と凍えてきて、身体中から汗が吹き出た。
そんな私のことを見下ろす松戸先生が珍しく慌てた顔をしたかと思ったら、高級ブランドであろうスーツを着ている片手を私に伸ばしてきたのが見えた。
“普通”に見えたのではない。
なんでか揺れる視界の中で・・・
深く深く堕ちていく身体を感じながら、眺めていた。
資料とノートパソコンが先に地面へと堕ちた音が聞こえ、私の身体も地面へと沈んでいくのだと分かった。
咄嗟に両手で下腹部をおさえたけれど両手以外の身体には一切力が入らなくて・・・。
“倒れる”
そう思った瞬間・・・
私の身体に伸びてきた松戸先生の手、その手より先にもう1本の手が私の元へ伸びてきて・・・
地面に完全に堕ちる直前の私の身体を少しだけ引き、抱きかかえてくれた。
「また一美さんが迎えに来てくれましたね、すみません。
今度は俺が迎えに行くって言ったじゃないですか。」
大好きな人の声が・・・
愛している人の声が・・・
こんなにも安心してしまう香りの中で、しっかりとした温かさの中で、響いた・・・。
ぼやけていく視界の中で見えたのは凄く凄く心配している幸治君の顔で・・・。
幸治君の後ろには松戸先生のムカつくくらい整っている顔も見えて・・・
“今更遅いです。”
私の32歳の誕生日までに私のことを幸治君の相手として認めてくれなかった松戸先生に向かって口を動かした。
でも、その文句を言う前に目の前は真っ暗になってしまった・・・。
薄くなっていく意識の中でこれだけは思った。
「さいごに・・・シミができるまえに、あえて・・・よかったぁ・・・」
また会えたことが、本当に迎えに来てくれたことが、こんなにも・・・こんなにも“嬉しい”と思いながら吐き出した。
“私のことをこんなにも“苦しい”と思わせて”
“なのにこんなにも“嬉しい”とも思わせてくれるのは”
“いつだって幸治君だけだな。”
怒りであんなにも震えていた口元がちゃんと笑えているのに気付きながら、強く強く思った。
“幸治君のことを可哀想な子には絶対にしない・・・。”
強く強く、強く強く、そう思った・・・。
─────
────────
────────────────・・・・
聞いてないのか?」
ムカつきすぎて・・・もう、マジで・・・死ぬほど大嫌いすぎて・・・怒りで震えてくる口元に気付く。
口元だけではなく全身が震えてくる。
頭に一気に血が巡ってきた。
でも・・・
身体はこんなにも熱くなったはずなのに、頭までこんなにも沸騰したはずなのに、なんでか次の瞬間には全身がサッ─────...と凍えてきて、身体中から汗が吹き出た。
そんな私のことを見下ろす松戸先生が珍しく慌てた顔をしたかと思ったら、高級ブランドであろうスーツを着ている片手を私に伸ばしてきたのが見えた。
“普通”に見えたのではない。
なんでか揺れる視界の中で・・・
深く深く堕ちていく身体を感じながら、眺めていた。
資料とノートパソコンが先に地面へと堕ちた音が聞こえ、私の身体も地面へと沈んでいくのだと分かった。
咄嗟に両手で下腹部をおさえたけれど両手以外の身体には一切力が入らなくて・・・。
“倒れる”
そう思った瞬間・・・
私の身体に伸びてきた松戸先生の手、その手より先にもう1本の手が私の元へ伸びてきて・・・
地面に完全に堕ちる直前の私の身体を少しだけ引き、抱きかかえてくれた。
「また一美さんが迎えに来てくれましたね、すみません。
今度は俺が迎えに行くって言ったじゃないですか。」
大好きな人の声が・・・
愛している人の声が・・・
こんなにも安心してしまう香りの中で、しっかりとした温かさの中で、響いた・・・。
ぼやけていく視界の中で見えたのは凄く凄く心配している幸治君の顔で・・・。
幸治君の後ろには松戸先生のムカつくくらい整っている顔も見えて・・・
“今更遅いです。”
私の32歳の誕生日までに私のことを幸治君の相手として認めてくれなかった松戸先生に向かって口を動かした。
でも、その文句を言う前に目の前は真っ暗になってしまった・・・。
薄くなっていく意識の中でこれだけは思った。
「さいごに・・・シミができるまえに、あえて・・・よかったぁ・・・」
また会えたことが、本当に迎えに来てくれたことが、こんなにも・・・こんなにも“嬉しい”と思いながら吐き出した。
“私のことをこんなにも“苦しい”と思わせて”
“なのにこんなにも“嬉しい”とも思わせてくれるのは”
“いつだって幸治君だけだな。”
怒りであんなにも震えていた口元がちゃんと笑えているのに気付きながら、強く強く思った。
“幸治君のことを可哀想な子には絶対にしない・・・。”
強く強く、強く強く、そう思った・・・。
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