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金曜日 夜
「佐伯さん・・・あの、これは・・・?」
定時後に佐伯さんが私と福富さんのことを連れてきた場所は、会社の近くにあるチェーンの居酒屋だった。
それについては全然問題はないのだけど・・・。
「うちのアパレル事業の営業さん達も此処で飲み会だって、若松から聞いていたので。」
佐伯さんが綺麗で可愛い顔をニッコリとさせそんなことを言ってきて、佐伯さんと私のことをお座敷に座るように促してきた営業の男の子達が、私達2人のことを囲うように座った。
それに慌てながら福富さんの方を見ると、福富さんはバカにしたような顔でこちらを見ながら笑っていて、私達全員が座ったのを確認してから1番端に腰を下ろした。
いつもは佐伯さんや福富さんに沢山声を掛けている男の子達が、何でか今日は福富さんのことを全然見ていなくて・・・。
「後で若松が来るので福富さんは大丈夫ですから。」
佐伯さんがメニューを見下ろしながら小さな声で私にそう言ってきて、それにはお節介だろうけど私も小さな声で聞いた。
「いいの?」
「何がですか?」
「その・・・若松さんのこと。」
“waka”の服を佐伯さんの為に作っているであろう若松さん。
2人は幼馴染みだと聞いているけれど、“普通”の幼馴染みとも違うのだとは分かる。
聞いた私に佐伯さんは“普通”の横顔で・・・
「私は恋愛も結婚も興味ないので。」
女の子の園江さんと付き合った佐伯さん。
その園江さんは砂川課長と結婚をしてしまった今だからこの言葉が出てくるのか何なのか。
「興味を持ったとしても私は恋愛も結婚も出来ない。」
「私とお揃いだね。」
思わず呟いた私に、佐伯さんは優しい顔で笑った。
「羽鳥さんは出来ますよ。
だから今日はこうして此処にお邪魔しました。」
佐伯さんがそんなことを言って、大きな声で男の子達に吐き出した。
「羽鳥さん、今婚約者を募集中です~!!」
それには男の子達がウワッと異様な盛り上げを見せた。
「砂川さんと結婚しませんでしたからね!!」
「砂川課長、まさかの“純愛ちゃん”と結婚!!!」
「園江課長大荒れっすよね~・・・。」
「お前ら、羽鳥さんの前でそういう話するなって・・・!!」
砂川課長とはお仕事の話でもプライベートの話でも他の男の人よりも話すからか、男の子達がそんな勘違いをしてしまっている。
それには否定の言葉を何度も言ったけれど、お酒が入っている男の子達は逆に盛り上がってしまって・・・。
「羽鳥さんって若い男がタイプらしいですからね!!」
「俺、若くて良かった・・・!!」
「見た目はこの中だと誰がタイプっすか?」
「お前、顔は自信あるからってうるせーよ!!」
「羽鳥さん羽鳥さん!!
俺、家事全般得意です!!
年上のお姉さんも得意です!!」
「俺だって年上のお姉さん得意だし・・・ていうか、年上のお姉さん好きだし!!!」
「俺も!!!年上のお姉さん大好きです!!!」
お花見や花火を一緒にした“あの男の子達”よりも何となく“怖い”と思うような勢いがある子達で、それには気付かれないように苦笑いで笑う。
そしたら、佐伯さんの静かな声が私の隣から聞こえて・・・
「“幸治君”よりタイプの男はいますか?」
そんな質問をされ、それには何も言えない。
「うちの社員なので増田財閥を支え増田財閥の為に動ける男ですし、アパレル事業の男子達なので“Koseki”の為にも動ける男子達です。」
盛り上がり続ける若い男の子達を眺めながら思うことは1つで。
たった1つで。
「その子の“パパ”に出来るような若い男の子はいますか?」
佐伯さんの静かなのによく聞こえる声に釣られるように、私は下腹部に手を優しく置いた。
そして、呟く。
「みんな、若いね・・・。」
「そうですね、でもこれが4大卒で新卒入社の20代前半の“普通”の男子です・・・いや、“普通”以上の男子です。
結構以上の良い家に生まれて良い教育を受けて良い学校にも行けて良い上司にも恵まれた、“普通”以上の男子達ですよ?」
「うん、そうだね。」
そう吐き出してから、私は佐伯さんが頼んでくれていた氷の入っていない水を一口飲んだ。
“私はやっぱり、幸治君がいい。”
その言葉と一緒に、アルコールが入っているお酒でもカフェインが入っているお茶でもなく、何の味もしない常温の水を飲み込んだ。
何度も何度も、飲み込んだ。
“普通”でも“普通”以上でもなく、私にとっては出会った時から“特別”な男の子であった幸治君のことを考えながら、長く感じる時間が早く終わることを願い、この子のパパにはなれないような若い男の子達のことを眺めながら飲み込み続けた。
「佐伯さん・・・あの、これは・・・?」
定時後に佐伯さんが私と福富さんのことを連れてきた場所は、会社の近くにあるチェーンの居酒屋だった。
それについては全然問題はないのだけど・・・。
「うちのアパレル事業の営業さん達も此処で飲み会だって、若松から聞いていたので。」
佐伯さんが綺麗で可愛い顔をニッコリとさせそんなことを言ってきて、佐伯さんと私のことをお座敷に座るように促してきた営業の男の子達が、私達2人のことを囲うように座った。
それに慌てながら福富さんの方を見ると、福富さんはバカにしたような顔でこちらを見ながら笑っていて、私達全員が座ったのを確認してから1番端に腰を下ろした。
いつもは佐伯さんや福富さんに沢山声を掛けている男の子達が、何でか今日は福富さんのことを全然見ていなくて・・・。
「後で若松が来るので福富さんは大丈夫ですから。」
佐伯さんがメニューを見下ろしながら小さな声で私にそう言ってきて、それにはお節介だろうけど私も小さな声で聞いた。
「いいの?」
「何がですか?」
「その・・・若松さんのこと。」
“waka”の服を佐伯さんの為に作っているであろう若松さん。
2人は幼馴染みだと聞いているけれど、“普通”の幼馴染みとも違うのだとは分かる。
聞いた私に佐伯さんは“普通”の横顔で・・・
「私は恋愛も結婚も興味ないので。」
女の子の園江さんと付き合った佐伯さん。
その園江さんは砂川課長と結婚をしてしまった今だからこの言葉が出てくるのか何なのか。
「興味を持ったとしても私は恋愛も結婚も出来ない。」
「私とお揃いだね。」
思わず呟いた私に、佐伯さんは優しい顔で笑った。
「羽鳥さんは出来ますよ。
だから今日はこうして此処にお邪魔しました。」
佐伯さんがそんなことを言って、大きな声で男の子達に吐き出した。
「羽鳥さん、今婚約者を募集中です~!!」
それには男の子達がウワッと異様な盛り上げを見せた。
「砂川さんと結婚しませんでしたからね!!」
「砂川課長、まさかの“純愛ちゃん”と結婚!!!」
「園江課長大荒れっすよね~・・・。」
「お前ら、羽鳥さんの前でそういう話するなって・・・!!」
砂川課長とはお仕事の話でもプライベートの話でも他の男の人よりも話すからか、男の子達がそんな勘違いをしてしまっている。
それには否定の言葉を何度も言ったけれど、お酒が入っている男の子達は逆に盛り上がってしまって・・・。
「羽鳥さんって若い男がタイプらしいですからね!!」
「俺、若くて良かった・・・!!」
「見た目はこの中だと誰がタイプっすか?」
「お前、顔は自信あるからってうるせーよ!!」
「羽鳥さん羽鳥さん!!
俺、家事全般得意です!!
年上のお姉さんも得意です!!」
「俺だって年上のお姉さん得意だし・・・ていうか、年上のお姉さん好きだし!!!」
「俺も!!!年上のお姉さん大好きです!!!」
お花見や花火を一緒にした“あの男の子達”よりも何となく“怖い”と思うような勢いがある子達で、それには気付かれないように苦笑いで笑う。
そしたら、佐伯さんの静かな声が私の隣から聞こえて・・・
「“幸治君”よりタイプの男はいますか?」
そんな質問をされ、それには何も言えない。
「うちの社員なので増田財閥を支え増田財閥の為に動ける男ですし、アパレル事業の男子達なので“Koseki”の為にも動ける男子達です。」
盛り上がり続ける若い男の子達を眺めながら思うことは1つで。
たった1つで。
「その子の“パパ”に出来るような若い男の子はいますか?」
佐伯さんの静かなのによく聞こえる声に釣られるように、私は下腹部に手を優しく置いた。
そして、呟く。
「みんな、若いね・・・。」
「そうですね、でもこれが4大卒で新卒入社の20代前半の“普通”の男子です・・・いや、“普通”以上の男子です。
結構以上の良い家に生まれて良い教育を受けて良い学校にも行けて良い上司にも恵まれた、“普通”以上の男子達ですよ?」
「うん、そうだね。」
そう吐き出してから、私は佐伯さんが頼んでくれていた氷の入っていない水を一口飲んだ。
“私はやっぱり、幸治君がいい。”
その言葉と一緒に、アルコールが入っているお酒でもカフェインが入っているお茶でもなく、何の味もしない常温の水を飲み込んだ。
何度も何度も、飲み込んだ。
“普通”でも“普通”以上でもなく、私にとっては出会った時から“特別”な男の子であった幸治君のことを考えながら、長く感じる時間が早く終わることを願い、この子のパパにはなれないような若い男の子達のことを眺めながら飲み込み続けた。
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