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10月2日 月曜日
毎月下旬までにある松戸先生の訪問。
9月はうちの財閥との日程調整が上手くいかずに10月になってしまっていた。
こんなことは松戸先生がうちの顧問会計士になってから初めてのことで。
私としては松戸先生に会わなくて良いことにホッとしていたけれど、遂に訪問の時が訪れてしまった。
“苦しい”だけではなく全ての“負”の感情を抱きながら会議室に入ると、松戸先生は私と2人きりになった瞬間に凄く・・・もう、めちゃくちゃ不機嫌な顔になった。
それにはもっと“負”の感情に支配されながらも挨拶をし、松戸先生の前に資料とノートパソコンを持って座った。
あれから生理が来ることもなく、なのに幸治君と暮らす家から出ることも出来ていない中で、座った。
更に・・・
妊娠しているかの検査も出来ていない中で。
怖くて・・・
もう、死んでしまうくらいに怖くて・・・
どうしても検査が出来ていない中で、座った。
そんな私のことを外面なんて何もない顔でいつもよりもジッと見てきた松戸先生。
絶対に幸治君とのことについてまた攻撃をされると思い全身が強張った。
そしたら・・・
少しだけ開いた口を一旦閉じた松戸先生が私のことをマジマジと見てきた。
さっきまでの不機嫌な目ではなく、どちらかというと観察されているような目で。
「なんでしょうか・・・。」
「いや・・・ちょっとな・・・。」
松戸先生が何だか悩んだ様子になりながら私のことを見詰めてくる。
「この感じ、なんだったか・・・。」
予想をしていなかった展開には無言になっていると、松戸先生はノートパソコンの方に視線を移した。
でも、その目がノートパソコンの画面を眺めているだけだとは何となく分かる。
それには疑問に思っていると、松戸先生はそのまま口を開き・・・
「最近寝てる?」
そんな質問を私にしてきた。
それにはムッとしながら吐き出した。
「よく眠れるわけないじゃないですか。」
「食欲は?」
「ありませんよ。」
「吐き気は?」
「それはないですね。」
「頭痛は?」
「ありません。」
「顔色が悪いから病院に行った方が良い。」
「そこまでではありません・・・って、お医者様みたいですね。」
ノートパソコンから目を離さない松戸先生に言うと、松戸先生はまた私のことをゆっくりと見てきた。
「俺の両親は医者だからな。」
「松戸先生はお医者様じゃないですけどね。」
「俺の母親は天才小児外科医なんだよ。」
「それは存じておりますが・・・。」
「国光の血が流れている医者なんだよ。」
「はあ・・・。」
「だから俺にも一応国光の血が流れてる。」
元気君の奥さんになった旧姓国光さんのことを思い浮かべ、それには身体の熱が若干引いていき冷や汗が少しだけ出た。
例え天気予報が雨だとしても傘を持ち長靴姿で現れる国光さんの姿を。
増田財閥の全ての力を使っても潰れることがなかった商店街、“ゆきのうえ商店街”のすぐ近くにある小さな神社の娘である国光さんの巫女姿を。
恐らく、“普通”ではない血がこの人にも流れている・・・。
そう思ったら“怖い”と思って・・・。
“苦しい”ではなく、“怖い”と思った・・・。
私の生理が来ていないことに気付かれたら“怖い”と・・・。
私のお腹の中に幸治君との赤ちゃんがいるかもしれないことがバレてしまったら“怖い”と・・・。
もしかしたら、私のお腹の中には・・・
このお腹の中には・・・
そう思うと、凄く凄く“怖い”・・・。
“松戸先生のこの目が怖い・・・”
そう思った瞬間、松戸先生がパッと視線を資料に移した。
「ダメだ、今日は全然頭回んねー。」
仮にもうちの顧問会計士の立場である先生がそんなことを言って・・・
「昨日の千寿子の誕生日に、普通に振られて今日はマジで死にそう。」
見たこともないくらい頭を下げた松戸先生には驚き、でも自然と笑いながら吐き出した。
「好きな相手と結婚出来ないということは、私とお揃いですね♪」
「うるせーよ・・・。」
本当に死にそうになっている松戸先生と、少しだけ笑えるくらいの元気さの私が2人で今月もお仕事をしていった。
お互いに絶不調の中でも、ちゃんとお仕事だけはしていった。
毎月下旬までにある松戸先生の訪問。
9月はうちの財閥との日程調整が上手くいかずに10月になってしまっていた。
こんなことは松戸先生がうちの顧問会計士になってから初めてのことで。
私としては松戸先生に会わなくて良いことにホッとしていたけれど、遂に訪問の時が訪れてしまった。
“苦しい”だけではなく全ての“負”の感情を抱きながら会議室に入ると、松戸先生は私と2人きりになった瞬間に凄く・・・もう、めちゃくちゃ不機嫌な顔になった。
それにはもっと“負”の感情に支配されながらも挨拶をし、松戸先生の前に資料とノートパソコンを持って座った。
あれから生理が来ることもなく、なのに幸治君と暮らす家から出ることも出来ていない中で、座った。
更に・・・
妊娠しているかの検査も出来ていない中で。
怖くて・・・
もう、死んでしまうくらいに怖くて・・・
どうしても検査が出来ていない中で、座った。
そんな私のことを外面なんて何もない顔でいつもよりもジッと見てきた松戸先生。
絶対に幸治君とのことについてまた攻撃をされると思い全身が強張った。
そしたら・・・
少しだけ開いた口を一旦閉じた松戸先生が私のことをマジマジと見てきた。
さっきまでの不機嫌な目ではなく、どちらかというと観察されているような目で。
「なんでしょうか・・・。」
「いや・・・ちょっとな・・・。」
松戸先生が何だか悩んだ様子になりながら私のことを見詰めてくる。
「この感じ、なんだったか・・・。」
予想をしていなかった展開には無言になっていると、松戸先生はノートパソコンの方に視線を移した。
でも、その目がノートパソコンの画面を眺めているだけだとは何となく分かる。
それには疑問に思っていると、松戸先生はそのまま口を開き・・・
「最近寝てる?」
そんな質問を私にしてきた。
それにはムッとしながら吐き出した。
「よく眠れるわけないじゃないですか。」
「食欲は?」
「ありませんよ。」
「吐き気は?」
「それはないですね。」
「頭痛は?」
「ありません。」
「顔色が悪いから病院に行った方が良い。」
「そこまでではありません・・・って、お医者様みたいですね。」
ノートパソコンから目を離さない松戸先生に言うと、松戸先生はまた私のことをゆっくりと見てきた。
「俺の両親は医者だからな。」
「松戸先生はお医者様じゃないですけどね。」
「俺の母親は天才小児外科医なんだよ。」
「それは存じておりますが・・・。」
「国光の血が流れている医者なんだよ。」
「はあ・・・。」
「だから俺にも一応国光の血が流れてる。」
元気君の奥さんになった旧姓国光さんのことを思い浮かべ、それには身体の熱が若干引いていき冷や汗が少しだけ出た。
例え天気予報が雨だとしても傘を持ち長靴姿で現れる国光さんの姿を。
増田財閥の全ての力を使っても潰れることがなかった商店街、“ゆきのうえ商店街”のすぐ近くにある小さな神社の娘である国光さんの巫女姿を。
恐らく、“普通”ではない血がこの人にも流れている・・・。
そう思ったら“怖い”と思って・・・。
“苦しい”ではなく、“怖い”と思った・・・。
私の生理が来ていないことに気付かれたら“怖い”と・・・。
私のお腹の中に幸治君との赤ちゃんがいるかもしれないことがバレてしまったら“怖い”と・・・。
もしかしたら、私のお腹の中には・・・
このお腹の中には・・・
そう思うと、凄く凄く“怖い”・・・。
“松戸先生のこの目が怖い・・・”
そう思った瞬間、松戸先生がパッと視線を資料に移した。
「ダメだ、今日は全然頭回んねー。」
仮にもうちの顧問会計士の立場である先生がそんなことを言って・・・
「昨日の千寿子の誕生日に、普通に振られて今日はマジで死にそう。」
見たこともないくらい頭を下げた松戸先生には驚き、でも自然と笑いながら吐き出した。
「好きな相手と結婚出来ないということは、私とお揃いですね♪」
「うるせーよ・・・。」
本当に死にそうになっている松戸先生と、少しだけ笑えるくらいの元気さの私が2人で今月もお仕事をしていった。
お互いに絶不調の中でも、ちゃんとお仕事だけはしていった。
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