【R18・完】お嬢様は“いけないコト”がしたい

Bu-cha

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しっかりと歩けていたからすぐに着いた私達が住むマンションの前。



「一美さん?」



幸治君が少し驚いた顔で私のことを振り向いた。
手を繋いでいる私の身体が立ち止まってしまったから。



「なに泣きですか?」



涙の理由を聞かれ、私は泣きながら幸治君に手を伸ばした。
そんな私のことを幸治君が優しく抱き締めてくれて。



「セックスしたくない?」



「ううん・・・。」



「特別サービスじゃ不満?」



「ううん・・・。」



「ヒントは?」



「ヒント・・・?」



「ヒントくらいくださいよ。」



「えっと・・・ヒントの方が難しいからもう言っていい?」



「はい。」



私の扱いのプロである幸治君には思わず笑ってしまい、幸治君の肩におでこをのせてから吐き出した。



「帰りたくないな・・・。」



「まだ“いけないコト”を続けるんだから帰らないでよ。」



「そっちの家にじゃなくて・・・幸治君と暮らす家に・・・。」



「何で・・・?」



私のことを強く抱き締めてきた幸治君に私も強く抱き締め返す。



「和希から連絡が来てるかも・・・。」



「スマホを確認するのはやめよう。」



「エッチなことをしてる時に連絡が来るかも・・・。」



「着信音を無視しよう。」



幸治君の提案には口を閉じると、幸治君が私のことをギュッと抱き締めた後に小さく笑った。



「そういう“いけないコト”が出来ないお嬢様ですからね、一美さんは。」



そう言って・・・



私の唇にチュッ─────...とキスをした幸治君は私の手をタオルハンカチごとまた包み、マンションの前から歩き始めた。



「それなら、これから2人で家出をしよう。」



幸治君は私の手を引きながらスマホを操作し、しばらくしてから口を開いた。
電話の向こう側にいるのは幸治君のきょうだいなのだと思う。
桜とブタネコ之助のことをお願いしてくれている会話を聞き、それには安心した。



「お~、お帰り!!!」



また“ラーメン 安部”へと戻るとオジサマ達が大きく笑いながらそう言っていて、私が恥ずかしくなりながら小さく会釈をしている間に、幸治君は妹に鍵を手渡していた。



「桜とブタネコ太郎のことよろしくな。」



「桜のことは分かるけど、あのぬいぐるみに何のお世話をするのが正解なの?」



幸治君の妹が楽しそうに笑いながら手を振っていて、私はそれにも小さく会釈をし、幸治君の手に引かれながらまた“ラーメン 安部”から足を踏み出した。



「何処に行くの・・・?」



「明日も仕事なのがな~。
一美さんはもう32だし。」



「・・・32歳でごめんね。」



「いや、そういう意味じゃないって!!
夜更かしするのキツイでしょって!!」



「それは幸治君が朝までエッチなことをするからだもん。
普通に起きてるだけだったらそこまでキツくないもん。」



「じゃあ朝帰りをするということで、どっか行こうか。
ゴムも3つしか入ってなから3回しか出来ないし!!」



「3回でも私には多いからね・・・!?」



「それは流石にババアですって一美さん。」



「・・・ひど~いっっ!!!」



さっきまであんなに泣いてしまっていたのに、2人で大きくて笑いながらタクシーに向かって大きく手を上げた。



当たり前だけど家出も朝帰りも初めてで。
“いけないコト”の代表みたいなことを私もやることになるなんて。



幸治君と2人で夜のオフィス街を抜け出していく。



凄くドキドキとして。



凄く凄く、ワクワクとした。
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