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まだ明るい夜のオフィス街をスーツ姿の幸治君の隣に並び歩いていく。
私は“中華料理屋 安部”のティーシャツとハーフパンツとヒールの靴で。
和希からの連絡が来るかもしれないスマホは家に置いてきた。
幸治君からラーメン1杯をご馳走して貰えるのでお財布も置いてきた。
幸治君と一緒に家に帰るので鍵まで置いてきた。
何も持っていない両手で幸治君の腕を組み歩いていく。
何も持たないとこんなにも身体が軽くて。
その両手で幸治君の腕に支えて貰うとこんなにも簡単に歩けて。
幸治君の横顔を見上げただけでこんなにも心が落ち着いて。
私が大好きだった“中華料理屋 安部”はなくなってしまったけれど、“ラーメン 安部”で幸治君の醤油ラーメンが残っている。
そのことがとても嬉しいと思えた。
幸治君の醤油ラーメンを食べに幸治君と一緒に歩いて行けることがとても幸せだと思った。
終わらないで欲しい。
ずっとずっと、このまま・・・
このまま、終わりたくないと思ってしまう。
「私がもう少し若かったらな・・・。」
そしたらこの身体のタイムリミットはまだ先だったはずで。
そう思いながら呟いた私に幸治君は深刻そうな声で・・・
「今月も2日前に婦人科で診て貰ったんですよね?」
アプリで排卵日の管理もしているけれど、排卵がきちんと出来ているかの確認の為に毎月かかりつけの病院の先生に診て貰っている。
今月も2日前に行き、その際はいつもの先生が急遽不在で男性の先生に初めて診て貰ったと幸治君に話していた。
「うん、行ったよ。
“明後日には排卵しそう”って言われた。」
「それで今日も股を広げてきたのか・・・。」
「言い方・・・っ。
いつもは排卵日当日も診て貰ってるけど、いつもの先生に手術が入ってるって聞いたから今日は行かなかったの。
だから男の先生にも診て貰ってないよ?」
「一昨日も診て貰わなければよかったのに。
その話を聞いた時は我慢してたけど、後から更に無理になってきて、その先生から一美さんの股の記憶を消し去りたくなってた。」
「先生からしてみたらお仕事だよ?」
「仕事モードで見てたとしても後から絶対思い出すじゃん。
俺以外の男の記憶に一美さんの股があるとかマジで無理。
・・・いや、笑い事じゃないから。」
「その時我慢しないで言えばよかったのに~。」
「流石にその時は我慢しましたよ。
一美さんは自分の身体のことを心配して病院に行ってるし。」
「今は言って良かったの?」
「そんな嬉しそうな顔でその質問する?
その顔結構ブスだよ?」
「・・・そういう返し、私以外の女の子にしたら嫌だ。
絶対幸治君のこと好きになっちゃうもん。」
「普通ここでならねーだろ!!
ただ悪口言われてるだけじゃん!!」
「そういうの言われたことがないから嬉しいし、なんかキュンキュンしちゃうもん!!」
そう言ってから、松戸先生のことを思い出し・・・
「でも、松戸先生の意地悪は全然好きじゃない・・・!!
あの人の悪口は私に対する悪意しかない!!」
夜の空にそう叫ぶと、幸治君が大きく笑った。
そして・・・
「所長、お疲れ様です!」
と・・・。
それにはビッッックリして身体が跳び跳ねた。
「まあ、嘘ですけど。」
「・・・・もぉぉぉぉぉ~っっっ!!!
事務所ここら辺だから本気にしちゃった~・・・っっっ!!!
もぉぉぉぉぉ~~~~っっっっ!!!」
お互いに怒りながら、笑いながら、2人で“ラーメン 安部”までの道をゆっくりとゆっくりと歩いた。
私は“中華料理屋 安部”のティーシャツとハーフパンツとヒールの靴で。
和希からの連絡が来るかもしれないスマホは家に置いてきた。
幸治君からラーメン1杯をご馳走して貰えるのでお財布も置いてきた。
幸治君と一緒に家に帰るので鍵まで置いてきた。
何も持っていない両手で幸治君の腕を組み歩いていく。
何も持たないとこんなにも身体が軽くて。
その両手で幸治君の腕に支えて貰うとこんなにも簡単に歩けて。
幸治君の横顔を見上げただけでこんなにも心が落ち着いて。
私が大好きだった“中華料理屋 安部”はなくなってしまったけれど、“ラーメン 安部”で幸治君の醤油ラーメンが残っている。
そのことがとても嬉しいと思えた。
幸治君の醤油ラーメンを食べに幸治君と一緒に歩いて行けることがとても幸せだと思った。
終わらないで欲しい。
ずっとずっと、このまま・・・
このまま、終わりたくないと思ってしまう。
「私がもう少し若かったらな・・・。」
そしたらこの身体のタイムリミットはまだ先だったはずで。
そう思いながら呟いた私に幸治君は深刻そうな声で・・・
「今月も2日前に婦人科で診て貰ったんですよね?」
アプリで排卵日の管理もしているけれど、排卵がきちんと出来ているかの確認の為に毎月かかりつけの病院の先生に診て貰っている。
今月も2日前に行き、その際はいつもの先生が急遽不在で男性の先生に初めて診て貰ったと幸治君に話していた。
「うん、行ったよ。
“明後日には排卵しそう”って言われた。」
「それで今日も股を広げてきたのか・・・。」
「言い方・・・っ。
いつもは排卵日当日も診て貰ってるけど、いつもの先生に手術が入ってるって聞いたから今日は行かなかったの。
だから男の先生にも診て貰ってないよ?」
「一昨日も診て貰わなければよかったのに。
その話を聞いた時は我慢してたけど、後から更に無理になってきて、その先生から一美さんの股の記憶を消し去りたくなってた。」
「先生からしてみたらお仕事だよ?」
「仕事モードで見てたとしても後から絶対思い出すじゃん。
俺以外の男の記憶に一美さんの股があるとかマジで無理。
・・・いや、笑い事じゃないから。」
「その時我慢しないで言えばよかったのに~。」
「流石にその時は我慢しましたよ。
一美さんは自分の身体のことを心配して病院に行ってるし。」
「今は言って良かったの?」
「そんな嬉しそうな顔でその質問する?
その顔結構ブスだよ?」
「・・・そういう返し、私以外の女の子にしたら嫌だ。
絶対幸治君のこと好きになっちゃうもん。」
「普通ここでならねーだろ!!
ただ悪口言われてるだけじゃん!!」
「そういうの言われたことがないから嬉しいし、なんかキュンキュンしちゃうもん!!」
そう言ってから、松戸先生のことを思い出し・・・
「でも、松戸先生の意地悪は全然好きじゃない・・・!!
あの人の悪口は私に対する悪意しかない!!」
夜の空にそう叫ぶと、幸治君が大きく笑った。
そして・・・
「所長、お疲れ様です!」
と・・・。
それにはビッッックリして身体が跳び跳ねた。
「まあ、嘘ですけど。」
「・・・・もぉぉぉぉぉ~っっっ!!!
事務所ここら辺だから本気にしちゃった~・・・っっっ!!!
もぉぉぉぉぉ~~~~っっっっ!!!」
お互いに怒りながら、笑いながら、2人で“ラーメン 安部”までの道をゆっくりとゆっくりと歩いた。
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