【R18・完】お嬢様は“いけないコト”がしたい

Bu-cha

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幸治君のお母さんの印象よりももっと驚いたことは、幸治君がお母さんのことを振り返らなかったこと。
私のことを見ることもなく、お母さんのことを見ることもなく、勿論従妹のことも見ていない。



少しだけ俯いた状態の顔を少しも動かすことなく止まっている。



やっぱり普通の様子ではなかった。
お父さんが亡くなったのだから普通のはずはないけれど、それにしてもその“普通”とも違うように見える。



「夜も遅いし帰って貰うから必要ない。」



「こんな夜遅くにわざわざ駆けつけて来てくれて、それなのに追い返すように帰すっていう男にお母さんが育てたと思われるでしょ?」



「俺は母さんから中1までしか育てて貰ってない。」



「私がそんな男に産んだと思われるでしょ?」



その言葉に幸治君は開いた口を慌てたように閉じた。



「コウちゃん・・・親子喧嘩中?
さっきまで普通にしてたじゃん。」



「別に喧嘩なんてしてない。
でも母親面をして俺のことに口を出されたからムカついただけ。」



「それは口も出すでしょう、幸治の母親なんだから。
不誠実なことをしていたらそれは黙っていられない。」



幸治君のお母さんは自分の方を一切見ることがない幸治君の後ろ姿を真っ直ぐと見詰めている。



確かに“何でも話している”ようにも見えるけれど、何でか違和感を覚える。



まるで幸治君が“何か”を吐き出すことを誘い出そうとしているように私には見えてしまう。



「上がってください。」



幸治君のお母さんがそう言って私に笑い掛けて来た。



それに頷き返そうとしたら・・・



「母さんには言われたくない。」



幸治君がいつもよりも低い声でそう言った。



“不誠実なことをしてたらそれは黙っていられない”に対しての返事なのか、“上がってください。”に対しての返事なのか、それは分からないけれどとにかく幸治君はお母さんに対して凄く反抗的で。


 
「幸治には反抗期という反抗期を迎えてあげることなく大人にさせてしまったので、遅く来た反抗期ですかね。
この子のことを中学1年までしか育ててこなかった私には対応出来そうにありません。
今日はここに泊まってくださって結構ですので、私の代わりに幸治の対応をお願い出来ますか?」



幸治君のお母さんの言葉に幸治君が口を開いたけれど、私は幸治君よりも早く声を出した。



「はい。」



私の返事に少しだけ安心をした顔になった幸治君のお母さんに私は改めてご挨拶をする。



「私は羽鳥一美と申します。
幸治君の同居人でして、いつも息子さんには大変お世話になっております。
ご挨拶に伺えずに申し訳ございませんでした。」



「うちは息子だしそういうのは本当に大丈夫で・・・。」



幸治君のお母さんが急に私のことをジーッと見てきて・・・



「子ども達から話は聞いていたけど、確かにあんまり見掛けないくらいの美人さんだね。」



幸治君のお母さんからのそんな嬉しい言葉を貰えた瞬間、幸治君がいきなりバッとお母さんを振り返った。



「どう考えたって“あんまり”じゃないだろ!!
こんなに美人を“たまに”でも見掛けるかよ!!」



「幸治の仕事柄そうなだけでしょ?
お母さんはお店でたまに見掛けるから。」



「いや、絶対にそれはナイ。
一美さん今そこに立ってるからよく見えないだろうけど・・・一美さん、入って。
ほら・・・!!こんなに綺麗な人俺見たことないから!!!
お前ある!!?」



「え~、それ私に聞く~?
私がコウちゃんのことを狙いまくってるの分かってるでしょ?
おっぱいだってパンツだって見せちゃってるし。」



「そんなの見たところで咲希の裸を見慣れてるからマジでどうでも良い。」



「うそ・・・っ!!
めっちゃ見てたじゃん!!」



「ああ・・・まあ、“普通の女の身体はこんなもんなのか”って確認はした。」



「はあ!?“こんなもん”って何!!!?」



「いや、だってこのお姉さんってマジで凄い・・・めちゃくちゃ、めっっっっっちゃ凄い身体してるから。
あ、母さん!!!身体も含めてだと流石に見掛けないだろ!!!
顔も身体も整形とかしてないでこれだから!!!
・・・・・え、整形してます?
全身にお金掛けてるって・・・。」



笑いを堪えていたけれど思わず吹き出してしまった。



「私が整形してたらどうする?」



「驚きはするけど見た目で好きになったわけじゃないから全然余裕。」



「うん、私も。」



玄関の向こう側になかなか進めない所で、幸治君のことを真っ直ぐと見詰めて吐き出す。



「私もどんな幸治君でも好きだよ?」



私のことをあのまま帰そうとしたり、私のことを同居人と言った幸治君に伝える。



「私は幸治君より7歳も年上だからね。
7歳も年下の男の子の“何か”くらい余裕で受け止められちゃう。」



「7歳年上とかオバサンじゃん。」



「オバサンで悪かったわね、オバサンで。」



幸治君の従妹の発言に素早く反応をしたのは私でも幸治君でもなく、幸治君のお母さん。
幸治君のお母さんはニコニコと明るい笑顔になり玄関の向こう側へ進むよう手を伸ばした。



「私もパパより8歳も年上のお姉さんなの。」



上機嫌になった幸治君のお母さんが、幸治君の腕に絡まり続けている幸治君の従妹に向かって大きく笑った。



「残念だったね、幸治って昔から私のことが大好きだったから!!
中学1年からお母さんから育てて貰えなくなったようだから、年上のお姉さんがタイプなんだって!!」



「・・・一美さんの前で俺がマザコンみたいなこと言うなよ!!
全然そんなんじゃないだろ!!!」



さっきまでとは違う、息子として“普通”の反抗をしている幸治君。
これがきっといつもの2人のやり取りなんだろうなと、そのイメージは出来た。



「一美さん!!俺マザコンじゃないので!!!」



「幸治君がマザコンでも全然余裕だよ?」



「いや・・・!!マジで違うから!!!」
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