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夜、幸治君が帰宅をするよりも前に私の部屋のベッドに入り眠ろうとした時・・・



トッ───────...と小さな衝撃が足元にあり、薄暗い部屋の中で確認をしてみると桜が私の布団の上に乗っていた。



土曜日の夜も日曜日の夜もゲージの中かリビングの中にいた桜。
そもそも私の所に桜から来てくれることはなく、幸治君にばかり寄って行っていた。



「部屋の扉を少しだけ開けておいて良かった。」



顔を緩めながら薄暗い部屋の中で桜のことを見ていると、桜は前足で私の布団をフミフミしている。



「“パパ”の布団よりも気持ち良いでしょ?」



昨日の夜は幸治君のベッドで一緒に寝ていた所に桜が来てくれて、幸治君の布団をこんな風にフミフミとしていた。



今日は私だけなのに私の所に来てくれ、喉を鳴らしながら一生懸命フミフミしている。



もう、ほんっっっっっっとうに可愛すぎて、ブタネコ之助を抱き締めながら長い時間桜のフミフミを見守っていた。



そしたら、その時・・・



プルルルルルルル───────────...



こんな時間に家の電話が鳴った。
それには桜だけではなく私もビクッとなり、何となくだけど嫌な予感がした。



慌ててベッドから立ち上がりリビングの電話の受話器を手に取る。



“非通知”



その文字を眺めながら「もしもし。」と、慎重に声を出した。



『すみません、寝てましたか?』



受話の向こう側からは幸治君の声が聞こえた。
いつもと変わらないように聞こえる幸治君の声を聞くことが出来て少しだけホッとする。



「ううん、まだ寝てなかったよ。
どうしたの?」



『すみません、今日は帰れなくなってしまって。』



「お仕事?」



『いえ、仕事ではないんですけど・・・。
明日の夜には帰れると思いますので、その時に話します。
桜を迎えたばかりなのに本当にすみません。』



「分かった・・・。」



何も“分かった”ではないけれど、幸治君が理由なくこんなことをするはずがない。
そのことは“分かった”ではあるので何も吐き出さないように口を閉じる。



そしたら電話の向こう側の幸治君が無言になり、口を閉じ続けながら幸治君の次の言葉を待った。



どれだけ待っていたか。



途中で電話が切れているのではないかと電話機を何度か確認をするほど待った。



暗いリビングの中で待ち続けていた時、電話の向こう側から幸治君が“普通”の声で吐き出してきた。



「実『は、父が亡くなりました。』
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