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月曜日
「おはようございます、羽鳥さん。」
朝、いつもよりも早めに出勤をしたエレベーターの中、ボタンの前の場所で“開閉”をしていた私に挨拶をしてきた女の子。
振り向くと、そこには“純”が・・・園江さんが爽やかな笑顔で近付いてきていた。
「おはよう、同じエレベーターだったんだね。」
「そうみたいですね、代わります。」
「あ・・・っ俺が代わりますよ羽鳥さん!」
「いや、私が・・・!!」
「僕がやります!!」
たまたまボタンを押していただけなのに、園江さんの一言によりみんなが私に気を遣い始めてしまった。
それには苦笑いになっていると、園江さんが大きく笑った。
「羽鳥さんにボタンを押して貰えるなんて朝からめちゃくちゃテンション上がります。
このままお願い出来ますか?」
「うん・・・。」
いや、もう、凄く格好良くて・・・。
朝から園江さんは凄く綺麗で格好良くて・・・。
こちらこそ、めちゃくちゃテンションが上がってしまう。
顔が熱くなってしまっていることに気付き、ボタンの所に置いている指先の桜のネイルを見詰め続けていたら・・・
「爪・・・。」
園江さんが私のすぐ後ろで小さく呟いた。
「羽鳥さん、ネイルをしてるんですね。」
「うん、昨日変えたばっかり。
ネイルが苦手な方もいらっしゃるから今までシンプルな物にしてたんだけど、初めて桜にしちゃった。」
「可愛いですね。」
「ありがとう。」
園江さんから“可愛い”と言って貰えて、幸治君からの“可愛い”よりも何だかドキドキとしてしまう。
「羽鳥さんって休日は何をしてるんですか?」
園江さんが本社の経理部に来てから初めて話し掛けて貰えた。
何となくだけど目が合わないような気もしていて、どことなく避けられているのかと思っていた。
「お買い物とかお掃除とか勉強が多いかな。」
経理部のフロアでエレベーターが開き、“開”ボタンを押したけれど園江さんはエレベーターから出ない。
それには自然と笑顔になり、私が先にエレベーターを降りた。
私の後からエレベーターを降りた園江さんが私の隣に並び、まだ会話を続けてくれる。
「昨日と一昨日は何をしていたんですか?」
「昨日と一昨日もお買い物をして、昨日はネイルサロンにも行って。
それと2日間ともお花見をしたんだぁ。」
「花見・・・ですか。」
「うん、若い男の子と。」
「え・・・!!!?」
園江さんの新しい表情を見られ、驚いた可愛い顔に朝からキュンキュンとしてしまう。
「一昨日は就職活動のアドバイスの流れで若い男の子達に囲まれながらお花見をして、昨日は1番お気に入りの若い男の子とお花見をしてきちゃった。」
“少しだけでも嫉妬をしてくれないかな?”なんて思いながらそう言ってみると、園江さんは凄く驚いた顔から深刻そうな顔になった。
「小関の“家”のお嬢様が大丈夫なんですか?」
「あ、望さんからそういうのも聞いてるんだね?」
佐伯さんと付き合うという“いけないコト”どころか“羨ましい”ことをしている園江さんに笑い掛けた後、経理部の部屋の扉の前で立ち止まった。
「うちの財閥は大きく変わったけど私は分家の女として綺麗で正しく生きてきた。
これからもそうやって生きていく。
でも・・・」
言葉を切った後に扉をゆっくりと開けた。
「今後は許される範囲で、私は“いけないコト”もするの。」
そう言って、出来るだけ可愛く笑ってみた。
「だから園江さんも“いけないコト”をしていいからね?」
幸治君は女の子である園江さんには嫉妬をしないようなので、少しだけ誘惑をするという“いけないコト”をしてしまった。
“あ、課長とはどうなったんだろう・・・。”
心の中で疑問に思いながら、珍しく課長席にまだ座っていない砂川課長の姿を探したけれど経理部のフロアにはまだ来ていないようだった。
「おはようございます!」
園江さんがみんなに挨拶をするより先に、私は経理部の中に元気に挨拶をした。
「おはようございます、羽鳥さん。」
朝、いつもよりも早めに出勤をしたエレベーターの中、ボタンの前の場所で“開閉”をしていた私に挨拶をしてきた女の子。
振り向くと、そこには“純”が・・・園江さんが爽やかな笑顔で近付いてきていた。
「おはよう、同じエレベーターだったんだね。」
「そうみたいですね、代わります。」
「あ・・・っ俺が代わりますよ羽鳥さん!」
「いや、私が・・・!!」
「僕がやります!!」
たまたまボタンを押していただけなのに、園江さんの一言によりみんなが私に気を遣い始めてしまった。
それには苦笑いになっていると、園江さんが大きく笑った。
「羽鳥さんにボタンを押して貰えるなんて朝からめちゃくちゃテンション上がります。
このままお願い出来ますか?」
「うん・・・。」
いや、もう、凄く格好良くて・・・。
朝から園江さんは凄く綺麗で格好良くて・・・。
こちらこそ、めちゃくちゃテンションが上がってしまう。
顔が熱くなってしまっていることに気付き、ボタンの所に置いている指先の桜のネイルを見詰め続けていたら・・・
「爪・・・。」
園江さんが私のすぐ後ろで小さく呟いた。
「羽鳥さん、ネイルをしてるんですね。」
「うん、昨日変えたばっかり。
ネイルが苦手な方もいらっしゃるから今までシンプルな物にしてたんだけど、初めて桜にしちゃった。」
「可愛いですね。」
「ありがとう。」
園江さんから“可愛い”と言って貰えて、幸治君からの“可愛い”よりも何だかドキドキとしてしまう。
「羽鳥さんって休日は何をしてるんですか?」
園江さんが本社の経理部に来てから初めて話し掛けて貰えた。
何となくだけど目が合わないような気もしていて、どことなく避けられているのかと思っていた。
「お買い物とかお掃除とか勉強が多いかな。」
経理部のフロアでエレベーターが開き、“開”ボタンを押したけれど園江さんはエレベーターから出ない。
それには自然と笑顔になり、私が先にエレベーターを降りた。
私の後からエレベーターを降りた園江さんが私の隣に並び、まだ会話を続けてくれる。
「昨日と一昨日は何をしていたんですか?」
「昨日と一昨日もお買い物をして、昨日はネイルサロンにも行って。
それと2日間ともお花見をしたんだぁ。」
「花見・・・ですか。」
「うん、若い男の子と。」
「え・・・!!!?」
園江さんの新しい表情を見られ、驚いた可愛い顔に朝からキュンキュンとしてしまう。
「一昨日は就職活動のアドバイスの流れで若い男の子達に囲まれながらお花見をして、昨日は1番お気に入りの若い男の子とお花見をしてきちゃった。」
“少しだけでも嫉妬をしてくれないかな?”なんて思いながらそう言ってみると、園江さんは凄く驚いた顔から深刻そうな顔になった。
「小関の“家”のお嬢様が大丈夫なんですか?」
「あ、望さんからそういうのも聞いてるんだね?」
佐伯さんと付き合うという“いけないコト”どころか“羨ましい”ことをしている園江さんに笑い掛けた後、経理部の部屋の扉の前で立ち止まった。
「うちの財閥は大きく変わったけど私は分家の女として綺麗で正しく生きてきた。
これからもそうやって生きていく。
でも・・・」
言葉を切った後に扉をゆっくりと開けた。
「今後は許される範囲で、私は“いけないコト”もするの。」
そう言って、出来るだけ可愛く笑ってみた。
「だから園江さんも“いけないコト”をしていいからね?」
幸治君は女の子である園江さんには嫉妬をしないようなので、少しだけ誘惑をするという“いけないコト”をしてしまった。
“あ、課長とはどうなったんだろう・・・。”
心の中で疑問に思いながら、珍しく課長席にまだ座っていない砂川課長の姿を探したけれど経理部のフロアにはまだ来ていないようだった。
「おはようございます!」
園江さんがみんなに挨拶をするより先に、私は経理部の中に元気に挨拶をした。
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