上 下
407 / 585
27

27-15

しおりを挟む
一美side.......





翌日 日曜日の夜



「こんなに美味しい焼きそばを初めて食べた~!」



仕事終わりの幸治君と一緒に買ったレジャーシートに座り、屋台で買った焼きそばを食べていく。
初めて食べた屋台の食べ物、こんなに美味しい焼きそばを私は初めて食べた。



「こっちのお好み焼きも美味しいですよ?」



幸治君が食べやすく切ったお好み焼きを割り箸でつまみ、それを私の口元に運んでくれた。
幸治君の自然な動作に私も自然と口を開け、お好み焼きをパクッ─────...と食べた。



そして・・・



「美味し~い・・・っっ!!!
私お好み焼きを初めて食べた!!!
こんなに美味しかったんだ!!!」



初めて食べたお好み焼きはビックリするくらい美味しかった。



「お好み焼き初めて食べたんですか?
うちホットプレートがあるので今度家でやります?
職場の人達でお好み焼きパーティーをあの人抜きでしたことが何度かあるんですよね。」



「お家でお好み焼きが本当に出来るんだぁ!
やってみたい!!
所長さんも誘ってあげればよかったのに、可哀想に。」



「あの人はお好み焼きとか食べられないんですよね。
“よく分からない食べ物”っていう認識になるらしいですよ、こんなに美味しいのに。」



幸治君の話に大きく笑い、それからまた上を見上げた。
幸治君と私の頭の上には夜の空をバッグに桜の花が広がっている。



幸治君と私の頭の上だけではない。
この公園にいる沢山の人達の頭の上に淡いピンク色の桜の花が広がっている。



「幸治君と“初めて”のお花見、幸せだな。」



ブタネコ之助のことを抱き締めながら、私のすぐ隣に座る幸治君の肩にトンッと頭をのせた。



「いや、朝から言ってますけど“初めて”じゃなくて2回目ですからね?
昨日の花見にも俺いましたから。」



「幸治君が来てくれたことは覚えてるけど、幸治君の姿を見て凄く凄く嬉しくなった後のことは何も覚えてないんだもん。」



「マジでただのエロいお姉さんだったよ?
最後の方はあの子達の前で普通に俺との夜の夫婦生活の話まで始めようとしてて、それには慌てて俺が一美さんのことを連れて帰った。」



「やだ~・・・恥ずかしい・・・っもうあの子達に会えない!!」



「連絡先も交換していませんしもう会うことはありませんよ。」



「連絡先を交換しておけばよかったな・・・。」



「・・・それは無理、マジで無理。
俺は一美さんと交換出来てないのにマジで無理。」



旦那さんである幸治君がそう嘆き・・・



幸治君の肩の上にのっている私の頭に優しく手をのせた。



「うちの奥さんはやっぱり年下の男の子が大好きだと分かり、旦那はヒヤヒヤですよ。」



私の髪の毛を指先で優しくといていく。



「若い男の子は可愛いなと思うくらいだよ?」



「“可愛い可愛い”を連呼してましたもんね?
旦那はそれにヒヤヒヤして夜の夫婦生活に気合いを入れましたよ。」



「気合いを入れすぎだよ~。
“Hatori”のスーツの店員さん、私がフラフラ歩いてて絶対にバレちゃってたよ?」



「バレたとしたら俺が気合いを入れたせいではなく、一美さんが“ちょっと筋肉痛で”ってめちゃくちゃ恥ずかしそうに言ったアレですよ。」



「こんなに筋肉痛になったのも初めてだよ~。」



「マジでただのエロいお嬢様でしたからね?
俺の“ペン”を虐めまくって大喜びしてましたから。」



「もう・・・っ覚えてないから言わないでぇ。
それに“ペン”って・・・凄くエッチ・・・。」



「え?何が?ペンの何がエロいの?」



「もぉ~・・・・っ」



お酒も持ってくる予定だったけれど“明日は月曜日だから”と幸治君から止められた。
私は何も覚えていないけれど凄くえっちな“いけないコト”をしまくったと幸治君から聞いている。



「“Hatori”でオーダーメイドをした幸治君のスーツ、早く受け取りたいなぁ。」



月曜日の明日から着て欲しかったくらいに幸治君のお顔と身体に合っているスーツなはずで。



「奥さんが買ってくれたスーツなので今後はスーツでエロい“いけないコト”はしませんよ?」



「私だって旦那さんが買ってくれたスーツだからエッチな“いけないコト”はしないもん。」



そう宣言をして温かいお茶が入っているボトルを持ち上げ飲んだ時、ボトルから唇を離したタイミングで幸治君が私の手に大きな手を重ね、そのボトルを自分の口元へ持っていきお茶を飲んだ。



そしてボトルから唇を離すと・・・



「あ、ネイル新しい。」



私が髪の毛を染めたことには気付かなかった幸治君は私のネイルには気付いた。



「よく気付いたね?」



「今回は花が描いてあるから。
今日の朝に別れた時はシンプルな爪だったし。
・・・あ、桜?可愛い。」



「うん、今日のお花見が楽しみすぎて。
幸治君がお仕事に行っている間にネイルに行って、桜のネイルにして貰ったの。」



「俺はこれで花見のし放題じゃん。」



「これではお花見は出来ないよぉ!」



「普通に出来るし、なんなら実物の桜の花よりも一美さんの爪の桜の花の方が綺麗だし。」



「それは嘘!」



「いや、マジで。」



「もぉ~・・・。」



幸治君と“初めて”したお花見は凄く楽しくて、凄く凄く幸せで。



見上げた桜の花はこれまで生きてきた中で1番綺麗な桜の花だった。



「桜の花が散っちゃうのは嫌だな・・・。」



膝の上に広げている幸治君から貰ったタオルハンカチを握り締めながら小さく呟いた。



そしたら・・・



「来年もまた一緒にお花見をしましょう。」



幸治君が未来の約束をしてきて、私はそれに頷けずにいた。



そんな私の肩に幸治君の大きな手が移動し、キュッ──────...とされた。



「俺は来年も一美さんと一緒にお花見をしますから。」



幸治君からのその言葉を聞きながら見上げていた桜の花は、涙が流れるくらいに綺麗だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

今日のオツボネさん

菅田刈乃
大衆娯楽
このお話はフィクションです。あなたの身近にいるおばさんとは一切関係ありません。  (気が向いたら投稿)

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

女性執事は公爵に一夜の思い出を希う

石里 唯
恋愛
ある日の深夜、フォンド公爵家で女性でありながら執事を務めるアマリーは、涙を堪えながら10年以上暮らした屋敷から出ていこうとしていた。 けれども、たどり着いた出口には立ち塞がるように佇む人影があった。 それは、アマリーが逃げ出したかった相手、フォンド公爵リチャードその人だった。 本編4話、結婚式編10話です。

処理中です...