【R18・完】お嬢様は“いけないコト”がしたい

Bu-cha

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土曜日



百貨店の静かな店内。
“中学料理屋 安部”のティーシャツにハーフパンツ、そこにヒールの靴とブランドのバッグという“いけない格好”で、いつものようにブタネコ之助を抱っこし結婚指輪をした私がスーツ姿の幸治君と手を繋ぎながら歩く。



「今朝もゆっくり“いけないコト”をしちゃったから、お買い物の時間があんまりないね。」



繁忙期の為、午後は事務所でお仕事をするという幸治君。
幸治君の左手と繋がった自分の右手を顔の前に持ってきて、幸治君の腕時計で時間の確認をした。



「お嬢様が俺の“道具”を検査しまくってきたんじゃないですか。
“昨日いっぱい使っちゃったので壊れていないか検査をしていきます”とか言って。」



「壊れちゃってたよね?」



「・・・アレが俺の“普通”ですから。
すみませんね、そんなに長くもたなくて。」



「そこじゃないよ・・・!!
ピュッてしたのに何回もだったから!!」



「それこそ俺の“普通”じゃないですか。」



「でも、昨晩はいつも以上にピュッてしてたから・・・。」



「お嬢様、百貨店の中で“ピュッ”とか言わないでくださいよ。
・・・・てか、たっっっっか。
嘘だろ?風呂の椅子だろ?風呂の椅子なんて100円でも買えるんだぞ?
それが1万を余裕で超えてるとかどんな椅子だよ?」



幸治君が並んでいるバスチェアを見ながら驚いているけれど、私の方が驚く。



「バスチェアが100円で買えるの・・・?」



「100均に普通に売ってる!」



「100円ショップってお風呂の椅子まで売ってるの?」



「売ってる、マジで色んな物が売ってる。
まあ・・・こんなにちゃんとした感じの物ではないけど。
・・・あ、これは1万切ってる。」



幸治君が1万円を切ってるという白いバスチェアを手に取った。
片手でそれをマジマジと見ていて、首を何度も傾げている。



「座ったら何かが違うんですかね・・・。
何でこの椅子がこんなに高いのかマジで分からない。」



「100円ショップに行ってみる?」



「それ、お風呂の椅子っていうよりも一美さんが行ってみたいだけですよね?」



「うん!!」



「いや、でもちゃんとした物を買いたいので此処で買います。」



幸治君がそう言って、手に持っていた白いバスチェアを置いてから少し向こう側へと歩き・・・



2万円弱のバスチェアを手に取った。



そのバスチェアを見て、繋がれたままの幸治君の左手を思わずキュッ────...とした。



「一美さんが欲しいの、これですよね?」



「何で分かったの・・・?」



「一美さんの好みって分かりやすいですから。
手、いい?」



頷きながら幸治君の左手を放すと、幸治君はまたもう少し向こう側へと歩いていき・・・



バスチェアと同じデザインのウォッシュボウルも手に取った。



それはバスグッズのエリアに入ってからすぐに目に入った物。
半透明の白い椅子に可愛いピンク色のバラが散りばめられているデザインのバスグッズ。
私が“1番可愛いな”と思っていた物だった。



「折角なので揃えましょうか。」



幸治君がカゴを持つと、次々とそのデザインのシャンプー・トリートメントボトルや泡石鹸ボトル、コップなどをカゴに入れていく。



「バスチェアだけの予定だったのにいいの?
それに100円でも買える物をこんなに沢山・・・。」



「100円の物よりもこんなに高いので、長く大切に使ってくださいよ?」



「はい。」



深く頷き、鞄から封筒を取り出した。
それから幸治君のすぐ近くまで近寄りソッと囁く。



「誕生日にお父さんから貰った商品券を持ってきたから、それで買おう?」



「これは俺が出しますから。
それは一美さんのお父さんからの誕生日プレゼントなので、一美さんが欲しい一美さんの物を買ってください。」



「うん、だからこれで買うんだよ?」



そう答え、鞄の中に封筒を仕舞ってから幸治君が持つカゴを奪い取るように持った。
その代わりブタネコ之助を幸治君に託すと、幸治君は当たり前かのようにブタネコ之助を優しく抱っこをしてくれる。



それには微笑みながら続ける。



「大好きな旦那さんと一緒に暮らす家、そこで旦那さんと一緒に使う物を私のお父さんにプレゼントをして貰うの。」



両手でカゴの持ち手を少し上げながら吐き出す。



「これが私の欲しい私の物。
私は、大好きな旦那さんである幸治君と一緒に使う、私好みのこのバスグッズが欲しい。」



嬉しそうに、でも少しだけ照れた顔で笑う幸治君に私は大きく笑った。
静かな百貨店の中で私の大きな笑い声が響いてしまう。



そんな“いけない笑い声”を上げながら吐き出した。



「幸治君はこのバスグッズとか全然好みじゃないだろうから、なんかごめんね?
ピンクのローズ柄のオーガンジー生地が挟み込まれてる物なんて、普通の旦那さんなら嫌がってもおかしくないのに。
それもバスチェアだけじゃなくてウォッシュボウルとかまで。
・・・あ、折角商品券があるからハンドペールも追加します。」



私が吐き出した言葉に幸治君は何故か難しい顔になり、手に取ったハンドペールをカゴに入れられないでいた。



そしたら・・・



「すみません、俺の知らない単語がいくつか出てきたんですけど・・・え、それ“普通”はみんな知ってることですか?
俺の育ちの問題なんっすかね。」



不安そうな顔になった幸治君に首を傾げながら聞く。



「何が知らなかった?」



「オー・・・なんとか生地とか。」



「オーガンジー?」



「はい。」



「パニエとかストールとかコサージュで使われることが多い生地なんだよね。」



「・・・なんっすか、それ。
やっぱり、お嬢様って凄いっすね。」



「これはお嬢様とか関係ないと思うよ?
女なら多くの人が知ってることだよ。」



「俺、女じゃなくてマジで良かった・・・!!
女同士の話についていける気が1ミリもしない!!!」









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