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翌日
「おはよう。」
会社のエレベーターに私よりも先に乗り込んだ人、振り向いた男の人はお兄ちゃんだった。
後ろ姿だけではお兄ちゃんだと分からないくらいに私はお兄ちゃんとの関わりが昔から薄い。
「おはよう。」
昨日の青さんとのことはお兄ちゃんに報告をしていないので少しドキドキてしていると、お兄ちゃんの声が隣から聞こえた。
「始業前に少しいい?
経理部のフロアの会議室を予約してるから。」
絶対に昨日のことだと覚悟を決め、お兄ちゃんと並んで経理部のフロアにある会議室へと入った。
そして言われたことが・・・
「これ、俺と貴子の結婚式の招待状。」
6月に行われるお兄ちゃんと貴子さんの結婚式。
シンプルな招待状を手渡してきたお兄ちゃん。
それを頷きながら受け取り、私はなかなか顔が上げられない。
「永家の方も来るからかなりの人数になる。」
「そうだろうね。」
「と、言いたいところだけど、うちの分家の人間達は招待出来ないから、お互いの家族や呼びたい親族、友人を少しだけにして貰った。」
「うちと永家の人間の結婚式なのにそんなことが可能なの?」
「可能だよね、譲君の・・・譲社長の結婚式がそうだったし。」
「私は招待されなかったね。
増田社長や譲社長から了承は貰ってるの?」
「うん、貰ってる。
本家からは元気君が出席してくれることになったよ。」
「増田社長と譲社長は来ないんだ。」
「商店街のイベントに譲社長のお子さんも参加するらしくて、パパとジージは大張り切りらしいよ?」
そんな2人の姿は全然想像出来ず、これには自然と笑いながらお兄ちゃんのことを見上げる。
「それで、本題は?」
「本題?」
「私に言いたいことがあるよね?」
「・・・和希も呼んでるから。」
「そう。それで?」
「あと貴子側からは翔子さんと一夜さんも来てくれるって。」
「そう・・・それで?」
「え?あとは・・・う~ん・・・スピーチは元気君にお願いしてるから楽しいと思うよ?」
それにはやっぱり自然と笑いながら頷き、これが本当に本題だったお兄ちゃんに私から聞いた。
「お兄ちゃんのお友達は何人か来るのかな?」
「うん、大学の時の友達と総務部の数人。」
「中学と高校の時のお友達は?」
「中学と高校からの友達で今でも付き合いのある人はいないんだよね。」
「鎌田さんは?
私昨日美容院に行ったから会ったよ?」
私の言葉にお兄ちゃんは一瞬だけ反応し、嬉しそうに笑った。
「鎌田が俺の友達だってやっと分かったか。
一美にしては遅かったな。」
「鎌田さんって全然自分の話をしないからお兄ちゃんとの共通点が出てこなかったの。
私も自分の話はそこまでしなかったし。」
「鎌田は絶対に一美を狙うと思ったから、アピール凄いだろうなと踏んでたけど。」
「全然狙ってこなかったよ、昨日までは。
むしろ他の男の人とくっつけようとしてきたくらいだったの。」
「他の男?」
「青さん。」
鎌田さんの名前を出した時よりもお兄ちゃんは少しだけ大きく反応をした。
でも、本当に少しだけ。
「青にも会った?」
「うん、会った。」
「元気だった?」
「困っちゃうくらい元気だった。」
私の返事にお兄ちゃんは楽しそうに笑う。
「どうして私に鎌田さんの美容院をすすめたの?」
「一美の相手に鎌田はどうかなと思って。」
それを聞き、それには驚きしかない。
「あの人、うちの財閥を支えうちの財閥の為に動ける?」
「当時、うちの財閥は崩壊に向かってた。
父さんからは母さんと離婚することを相談されていたし、俺なりに一美が女の子として幸せになることを考えてたんだよね。
鎌田は青よりドSだけど、女の子の扱いにも慣れてるし何より“普通”に優しい奴でもあるから。」
「“普通”に優しそうだよね、鎌田さんは。
青さんの優しさは“普通”ではなさそうだけど。」
「青と結構話したんだ?
あいつの優しさが“普通”じゃないのが分かるっていうことは、結構仲良くなった?」
「全然仲良くなれてないよ。
私もお兄ちゃんと同じく凄く嫌われてる。」
そう答えた私にお兄ちゃんはまた楽しそうに笑っている。
やけに楽しそうに笑っているお兄ちゃんの顔を見詰め、言った。
「私、鎌田さんよりも青さんの方がタイプだったのに。
青さんのことを紹介して欲しかったな。」
言った私にお兄ちゃんは固まり、困ったように笑いながら少しだけ下を向いた。
「青は・・・財閥とか嫌いな奴だから。」
「でも私は“羽鳥”にもなれる人間だった。
青さんのことを紹介してくれればよかったのに。」
「そっか・・・それは考えなかった。」
「私に青さんのことを紹介することは思い付かなかった?」
「そうだね、ごめん。」
お兄ちゃんが“普通”に笑いながら顔を上げたタイミングで続けた。
「青さんのことは望さんの結婚相手として視野に入れていたから?」
「おはよう。」
会社のエレベーターに私よりも先に乗り込んだ人、振り向いた男の人はお兄ちゃんだった。
後ろ姿だけではお兄ちゃんだと分からないくらいに私はお兄ちゃんとの関わりが昔から薄い。
「おはよう。」
昨日の青さんとのことはお兄ちゃんに報告をしていないので少しドキドキてしていると、お兄ちゃんの声が隣から聞こえた。
「始業前に少しいい?
経理部のフロアの会議室を予約してるから。」
絶対に昨日のことだと覚悟を決め、お兄ちゃんと並んで経理部のフロアにある会議室へと入った。
そして言われたことが・・・
「これ、俺と貴子の結婚式の招待状。」
6月に行われるお兄ちゃんと貴子さんの結婚式。
シンプルな招待状を手渡してきたお兄ちゃん。
それを頷きながら受け取り、私はなかなか顔が上げられない。
「永家の方も来るからかなりの人数になる。」
「そうだろうね。」
「と、言いたいところだけど、うちの分家の人間達は招待出来ないから、お互いの家族や呼びたい親族、友人を少しだけにして貰った。」
「うちと永家の人間の結婚式なのにそんなことが可能なの?」
「可能だよね、譲君の・・・譲社長の結婚式がそうだったし。」
「私は招待されなかったね。
増田社長や譲社長から了承は貰ってるの?」
「うん、貰ってる。
本家からは元気君が出席してくれることになったよ。」
「増田社長と譲社長は来ないんだ。」
「商店街のイベントに譲社長のお子さんも参加するらしくて、パパとジージは大張り切りらしいよ?」
そんな2人の姿は全然想像出来ず、これには自然と笑いながらお兄ちゃんのことを見上げる。
「それで、本題は?」
「本題?」
「私に言いたいことがあるよね?」
「・・・和希も呼んでるから。」
「そう。それで?」
「あと貴子側からは翔子さんと一夜さんも来てくれるって。」
「そう・・・それで?」
「え?あとは・・・う~ん・・・スピーチは元気君にお願いしてるから楽しいと思うよ?」
それにはやっぱり自然と笑いながら頷き、これが本当に本題だったお兄ちゃんに私から聞いた。
「お兄ちゃんのお友達は何人か来るのかな?」
「うん、大学の時の友達と総務部の数人。」
「中学と高校の時のお友達は?」
「中学と高校からの友達で今でも付き合いのある人はいないんだよね。」
「鎌田さんは?
私昨日美容院に行ったから会ったよ?」
私の言葉にお兄ちゃんは一瞬だけ反応し、嬉しそうに笑った。
「鎌田が俺の友達だってやっと分かったか。
一美にしては遅かったな。」
「鎌田さんって全然自分の話をしないからお兄ちゃんとの共通点が出てこなかったの。
私も自分の話はそこまでしなかったし。」
「鎌田は絶対に一美を狙うと思ったから、アピール凄いだろうなと踏んでたけど。」
「全然狙ってこなかったよ、昨日までは。
むしろ他の男の人とくっつけようとしてきたくらいだったの。」
「他の男?」
「青さん。」
鎌田さんの名前を出した時よりもお兄ちゃんは少しだけ大きく反応をした。
でも、本当に少しだけ。
「青にも会った?」
「うん、会った。」
「元気だった?」
「困っちゃうくらい元気だった。」
私の返事にお兄ちゃんは楽しそうに笑う。
「どうして私に鎌田さんの美容院をすすめたの?」
「一美の相手に鎌田はどうかなと思って。」
それを聞き、それには驚きしかない。
「あの人、うちの財閥を支えうちの財閥の為に動ける?」
「当時、うちの財閥は崩壊に向かってた。
父さんからは母さんと離婚することを相談されていたし、俺なりに一美が女の子として幸せになることを考えてたんだよね。
鎌田は青よりドSだけど、女の子の扱いにも慣れてるし何より“普通”に優しい奴でもあるから。」
「“普通”に優しそうだよね、鎌田さんは。
青さんの優しさは“普通”ではなさそうだけど。」
「青と結構話したんだ?
あいつの優しさが“普通”じゃないのが分かるっていうことは、結構仲良くなった?」
「全然仲良くなれてないよ。
私もお兄ちゃんと同じく凄く嫌われてる。」
そう答えた私にお兄ちゃんはまた楽しそうに笑っている。
やけに楽しそうに笑っているお兄ちゃんの顔を見詰め、言った。
「私、鎌田さんよりも青さんの方がタイプだったのに。
青さんのことを紹介して欲しかったな。」
言った私にお兄ちゃんは固まり、困ったように笑いながら少しだけ下を向いた。
「青は・・・財閥とか嫌いな奴だから。」
「でも私は“羽鳥”にもなれる人間だった。
青さんのことを紹介してくれればよかったのに。」
「そっか・・・それは考えなかった。」
「私に青さんのことを紹介することは思い付かなかった?」
「そうだね、ごめん。」
お兄ちゃんが“普通”に笑いながら顔を上げたタイミングで続けた。
「青さんのことは望さんの結婚相手として視野に入れていたから?」
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