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吐き出した私に幸治君は真剣な顔になり、私から目を逸らすことなく真っ直ぐと見下ろす。
「白髪からそこまで考えが飛躍してそんなに凹んでるの?」
「それだけじゃなくて、望さんが・・・。」
「望さんが?」
「望さんが、お兄ちゃんよりも青さんの優しさの方が好きだって・・・そう言われたんだもん・・・!!」
鎌田さんから聞こえたあの言葉は私にとってはとても辛いモノだった。
「私とお兄ちゃんの思考は世間一般の人からしてみたら到底理解出来ない・・・!!
お兄ちゃんの全てを理解して愛してくれている望さんだって本当の意味では理解してくれていないように感じちゃう・・・!!」
青さんの腕を両手で必死に掴む望さんの手を思い浮かべる。
「よりによって青さんと・・・!!!
お兄ちゃんの友達でそれも仲違いしてしまっている青さんとエッチをしてる・・・!!!」
小さな頃は自分のお兄ちゃんよりも私のお兄ちゃんにベッタリしていた望さん。
でも気付いた頃にはお兄ちゃんに触れることは絶対にしなかった。
「お兄ちゃんは望さんのことが好きだった・・・!!
お兄ちゃんだって望さんのことを愛していた・・・!!!
お父さんから望さんの結婚相手を探すように何度も言われていたのにそれが出来ないくらい、お兄ちゃんだって望さんのことを愛していた!!!」
そうやって育てられた。
私とお兄ちゃんはそうやって育てられた。
「私もお兄ちゃんも秘書のことを愛するように育てられた。
理解出来ないよね?
血の繋がりもない相手と同じ家で暮らし、家族と同じかそれ以上の存在として愛すの。
愛する秘書達の為にも“家”を存続させる為に。」
そう言った時、涙は止まった。
だからか和希の姿が思い浮かんだ。
もう何年も会っていない和希の姿が。
「幸治君と私が今こうしていられるのは望さんのお兄さん、和希のお陰。
でも和希がこれ以上は待てないと判断した時、私は必ず幸治君から引き離される。」
「一美さんと俺が一緒にいられるのは和希さんのお陰なんですか?」
「和希が幸治君のことを認めている。
他の人が幸治君のことを何て言おうと、和希が幸治君のことを認めているなら私は幸治君のことを信じる。
幸治君は“普通”の人ではない。
今は“普通”かもしれないけど、きっと未来の“幸治君”は“普通”ではなくなってる。」
「和希さんへの信頼、凄いですね。」
「幸治君には申し訳ないけど、和希により徹底的に審査されているはず。
青さんはあんなことを言っていたけど、私の相手だからこそ和希は徹底的に幸治君のことを審査している。」
自分の顔を自分の両手で拭い上半身を起こした。
「和希だって私のことを愛してくれているはずだから。
そんなのは微塵も見せないタイプだけど、和希だってそうやって育てられてきた。
小関の“家”の人間を生涯愛し抜くように育てられてきた。」
何故か少しだけ怒った顔をしている幸治君のことを見詰めながら自分の考えを整理する。
さっきまではグチャグチャだった頭の中が幸治君に吐き出せたことによりどんどんと整理がされていく。
「幸治君、たぶんもうあまり時間は残されてない。
私は今年で32歳になる。
幸治君が“不要”だと判断されたら掃除される。」
「掃除?」
「和希はうちの子会社の清掃会社の社長なの。」
増田財閥の清掃会社は“普通”の清掃会社ではない。
和希は小さな頃からあの清掃会社で働き、そして今は代表取締役にまで就任した。
譲社長が和希のことを代表取締役として選んだからだと聞いている。
「掃除される。
うちの清掃会社はどんな掃除でも掃除が出来てしまうから。」
昔よりは大人になったけれどまだまだ若い幸治君の綺麗な肌に右手をゆっくりと添えた。
「幸治君が私のことを綺麗サッパリ忘れ、他の女の子のことを好きになり、結婚するということも簡単に出来てしまう。
うちの清掃会社はそんなことまで出来てしまう。
そして・・・」
幸治君の綺麗な唇を指先でなぞる。
「青さんの会社もうちの清掃会社と同じようなことが出来る会社として青さん名義でお兄ちゃんと立ち上げた。
うちの分家が使い物にならなくなっていた時、大学生だったお兄ちゃんと青さんが立ち上げたのがワンスターエージェント。
分家の人間やその秘書達がやることもワンスターエージェントが請け負っていた。」
あの会社を永家財閥も欲しがっているということは永家の仕事も請け負っていた可能性がある。
お兄ちゃんが増田ホールディングスに就職するにあたり青さんが完全なる社長となった後だろうけど。
お兄ちゃんと立ち上げたとはいえあの会社は増田財閥の傘下ではない。
青さんがそれを許さなかったからだと聞いた時、当時は深く考えなかったけれど今なら分かる。
その頃から青さんはお兄ちゃんのことが嫌いだったのだと。
財閥の人間であるお兄ちゃんのことが青さんは大嫌いだった。
望さんのことを強引過ぎるくらい強引に扱っているように見えて、私と対峙しながらも望さんにピッタリと寄り添い立っていた青さんの姿を思い出しながら幸治君に吐き出す。
「前も話したけど、うちの財閥はあの会社が欲しい。
青さんにうちの財閥に会社を売るように仕向けて、幸治君。」
「白髪からそこまで考えが飛躍してそんなに凹んでるの?」
「それだけじゃなくて、望さんが・・・。」
「望さんが?」
「望さんが、お兄ちゃんよりも青さんの優しさの方が好きだって・・・そう言われたんだもん・・・!!」
鎌田さんから聞こえたあの言葉は私にとってはとても辛いモノだった。
「私とお兄ちゃんの思考は世間一般の人からしてみたら到底理解出来ない・・・!!
お兄ちゃんの全てを理解して愛してくれている望さんだって本当の意味では理解してくれていないように感じちゃう・・・!!」
青さんの腕を両手で必死に掴む望さんの手を思い浮かべる。
「よりによって青さんと・・・!!!
お兄ちゃんの友達でそれも仲違いしてしまっている青さんとエッチをしてる・・・!!!」
小さな頃は自分のお兄ちゃんよりも私のお兄ちゃんにベッタリしていた望さん。
でも気付いた頃にはお兄ちゃんに触れることは絶対にしなかった。
「お兄ちゃんは望さんのことが好きだった・・・!!
お兄ちゃんだって望さんのことを愛していた・・・!!!
お父さんから望さんの結婚相手を探すように何度も言われていたのにそれが出来ないくらい、お兄ちゃんだって望さんのことを愛していた!!!」
そうやって育てられた。
私とお兄ちゃんはそうやって育てられた。
「私もお兄ちゃんも秘書のことを愛するように育てられた。
理解出来ないよね?
血の繋がりもない相手と同じ家で暮らし、家族と同じかそれ以上の存在として愛すの。
愛する秘書達の為にも“家”を存続させる為に。」
そう言った時、涙は止まった。
だからか和希の姿が思い浮かんだ。
もう何年も会っていない和希の姿が。
「幸治君と私が今こうしていられるのは望さんのお兄さん、和希のお陰。
でも和希がこれ以上は待てないと判断した時、私は必ず幸治君から引き離される。」
「一美さんと俺が一緒にいられるのは和希さんのお陰なんですか?」
「和希が幸治君のことを認めている。
他の人が幸治君のことを何て言おうと、和希が幸治君のことを認めているなら私は幸治君のことを信じる。
幸治君は“普通”の人ではない。
今は“普通”かもしれないけど、きっと未来の“幸治君”は“普通”ではなくなってる。」
「和希さんへの信頼、凄いですね。」
「幸治君には申し訳ないけど、和希により徹底的に審査されているはず。
青さんはあんなことを言っていたけど、私の相手だからこそ和希は徹底的に幸治君のことを審査している。」
自分の顔を自分の両手で拭い上半身を起こした。
「和希だって私のことを愛してくれているはずだから。
そんなのは微塵も見せないタイプだけど、和希だってそうやって育てられてきた。
小関の“家”の人間を生涯愛し抜くように育てられてきた。」
何故か少しだけ怒った顔をしている幸治君のことを見詰めながら自分の考えを整理する。
さっきまではグチャグチャだった頭の中が幸治君に吐き出せたことによりどんどんと整理がされていく。
「幸治君、たぶんもうあまり時間は残されてない。
私は今年で32歳になる。
幸治君が“不要”だと判断されたら掃除される。」
「掃除?」
「和希はうちの子会社の清掃会社の社長なの。」
増田財閥の清掃会社は“普通”の清掃会社ではない。
和希は小さな頃からあの清掃会社で働き、そして今は代表取締役にまで就任した。
譲社長が和希のことを代表取締役として選んだからだと聞いている。
「掃除される。
うちの清掃会社はどんな掃除でも掃除が出来てしまうから。」
昔よりは大人になったけれどまだまだ若い幸治君の綺麗な肌に右手をゆっくりと添えた。
「幸治君が私のことを綺麗サッパリ忘れ、他の女の子のことを好きになり、結婚するということも簡単に出来てしまう。
うちの清掃会社はそんなことまで出来てしまう。
そして・・・」
幸治君の綺麗な唇を指先でなぞる。
「青さんの会社もうちの清掃会社と同じようなことが出来る会社として青さん名義でお兄ちゃんと立ち上げた。
うちの分家が使い物にならなくなっていた時、大学生だったお兄ちゃんと青さんが立ち上げたのがワンスターエージェント。
分家の人間やその秘書達がやることもワンスターエージェントが請け負っていた。」
あの会社を永家財閥も欲しがっているということは永家の仕事も請け負っていた可能性がある。
お兄ちゃんが増田ホールディングスに就職するにあたり青さんが完全なる社長となった後だろうけど。
お兄ちゃんと立ち上げたとはいえあの会社は増田財閥の傘下ではない。
青さんがそれを許さなかったからだと聞いた時、当時は深く考えなかったけれど今なら分かる。
その頃から青さんはお兄ちゃんのことが嫌いだったのだと。
財閥の人間であるお兄ちゃんのことが青さんは大嫌いだった。
望さんのことを強引過ぎるくらい強引に扱っているように見えて、私と対峙しながらも望さんにピッタリと寄り添い立っていた青さんの姿を思い出しながら幸治君に吐き出す。
「前も話したけど、うちの財閥はあの会社が欲しい。
青さんにうちの財閥に会社を売るように仕向けて、幸治君。」
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