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望さんの叫びには吹き出しながら望さんの身体を抱き締めた。
望さんは私のことを強く抱き締め返しながら叫び続ける。



「このオジサン、私のこともベタベタベタベタベタベタベタベタ触ってきたんです~・・・っ!!
ほっぺたにチューもされたし、口にチューもされそうになったし、腕も手も背中も太もももお尻も・・・おまたまで触ってきたんです~!!!」



「は・・・?」



お嬢様が出して良い声ではない声が出て、私は三山さんに視線を戻した。



「それは望ちゃんが・・・!!
望ちゃんが俺のことを誘ってきたから!!
だから少し相手をして構ってあげただけだよ・・・!!」



「私がこんな気持ち悪いオジサンのことを誘うわけないじゃないですか~・・・っ!!」



「いや・・・っ望ちゃんって若く見えるけどもう30歳だし、それで処女だって言ってくるし!!」



「キモいキモいキモい・・・!!
マジでキモい・・・!!!
大きくなったおちんちんまで見せてきて無理矢理触らせようともしてきたし、マジでキモすぎる・・・!!!
こんなキモいオジサンと不倫してる木下さんもマジでキモい・・・・・・あ。」



生粋のお嬢様には無縁のような話に私が何も言えないでいると、勢いでそんなことを暴露してしまった望さんが口を両手で抑えた。



シ──────────ン...と静まり返るオフィスの中。



“木下さん”が恐らくこの真っ赤な顔で怒りながら震えている女性なのだと分かる。
その女性のことを社員達が無意識に見ていて、それを眺めながら望さんのことをもう1度抱き締める。



うちの子会社、清掃会社で働いている望さんのことを。
うちの清掃会社は“普通”の清掃会社ではない。



“普通”の清掃もしているけれど“普通”ではない“掃除”もしている。



“お母さん、望さんに何て仕事をさせてるの?”



お母さんに対する怒りも感じながら、でも笑顔を消さないまま三山さんのことを見上げる。



増田財閥と何の関わりもないはずのミツヤマ。
なのにどうして望さんがこの会社にいるのかは分からないけれど、清掃会社でも私のお母さんでもお父さんでもお兄ちゃんでもなく私のことを頼ってきた望さんのことを思いながら。



“小関一美”でもなく“羽鳥一美”でもなく、望さんは“一美さん”を頼ってきた。



そんな望さんのことを思いながら・・・



幼い頃からずっと私のお兄ちゃんのことが好きだった望さんのことを思いながら・・・



私の妹のような存在の望さんのことを想いながら・・・。



こんな男に綺麗な身体を触られた望さんのことを強く強く抱き締めながら、吐き出した。



「私は三大財閥のうちの1つの財閥出身の者です。
こんな騒ぎになってしまった原因が望さんに全くなかったわけではないとも思いますので、この段ボールの物は全て私個人に請求してください。
詳しいやり取りは弁護士を通してになりますので、後程顧問弁護士よりご連絡差し上げます。」



望さんの“一美さん”として、笑顔を張り付けて吐き出した。
そしたら、望さんが・・・



「社長・・・奥様と離婚してあげてください・・・。
学生時代から付き合って、独立して大変な時期を支えてくれていた素敵な奥様と。
“地味”でも“冴えない”でもない素敵な奥様ですよ。
奥様と離婚をして木下さんと結婚すれば良いじゃないですか。
それかミユキさんとかアオイさんとかカナさんとかミオリさんとか、あとは・・・」



「望さん・・・っ!!」



大きく笑いながら望さんを制止すると、望さんがハッとした顔になった。



「社長の大本命ってサヤカさんでした!!
みんなにお金目当てにされてて社長も可哀想でしたけどね!!」



それには大きく笑いながら望さんの手を引き、段ボールの中を高いヒールの靴で歩き出した。
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