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12月28日
「羽鳥さんがドレスアップした姿、今年も楽しみにしてたんですけど~!」
ホテルの大きな会場を貸し切り開かれる増田ホールディングスの忘年会。
仕事納めの数時間後から始まるこの忘年会では、毎年ドレスアップした女の人達も多い。
私もあまり派手にならないようなドレスを着て毎年参加していたけれど、私の隣に立つ福富さんの言葉を聞いてから自分の姿を見下ろした。
この前のお兄ちゃんと貴子さんの結婚挨拶、その時に幸治君から買って貰った“Hatori”のワンピースを着ている自分の姿を。
「兄が奥さんとの結婚挨拶の時に買ったワンピースがあったから、今年はこれにしたの。」
「お兄さんの結婚挨拶とはいえ、ワンピースで大丈夫なんですか?
着物とかじゃなくて。
あ!結納もやっぱりやるんですか?」
「うちの財閥でも結納をする家はあるけど、我が家は向こうの家と相談してやらないことにしたみたい。
古くからある財閥とはいえ、もうそういうことに拘る時代でもないからね。」
「そうでしょうね、だから羽鳥さんの彼氏さんは普通の感じの人でしたし。」
「・・・え!!!?
佐伯さん、羽鳥さんの彼氏さんと会ったことあるの!?」
「会ったことあるよ。
私はアナタより羽鳥さんと仲が良いから。」
私を真ん中に、福富さんとは反対側に立っている佐伯さんがまた福富さんにそんなことを言って喧嘩を仕向けている。
「私だって羽鳥さんと仲良くしたいもん!!
でも・・・なんか、羽鳥さんって・・・私のことあんまり好きじゃないですよね?」
私のことを真っ直ぐと見ながら福富さんが聞いてきて、それには思わず苦笑いをした。
「アナタがいつまで経ってもそんな子どもっぽいからでしょ?
子どもっぽいのは見た目だけにして中身は大人になれば?」
そうではなくて、幸治君と学校の同級生だった福富さんに少し嫉妬している気持ちがある。
幸治君からも聞いているけれど仲も良かった2人。
福富さんに初めて“中華料理屋 安部”のことを聞いた時、「会いたいな~」と言っていた言葉が今でも忘れられない。
福富さんの前では出さないようにしていたつもりでいたけれど、佐伯さんと何かと張り合っている福富さんには、私が福富さんと話す時に少しだけ黒い気持ちが出ていることに気付かれてしまっていたらしい。
「福富さんが若くて可愛い女の子だから31歳の私は嫉妬しちゃってるみたい、ごめんね?」
佐伯さんと元気に口喧嘩をしている福富さんに謝ると、福富さんは私の顔をジッと覗き込んでくる仕草をしてくる。
その顔も凄く可愛い顔で。
女の人にも男の人にも福富さんはこんな感じで。
どこをどう見ても可愛い女の子でしかないはずなのに・・・。
シャンパンでもなく甘いお酒でもなく両手にビールが入ったグラスを持ち、ドレスでもなくワンピースでもなく数時間前まで着ていたスーツ姿の福富さんには“普通”に笑いながら見詰め返す。
「福富さん、今年はドレスを着てくれば良かったのに。
絶対に可愛いのにな。」
「会社の忘年会なんかにドレス1着買うお金も勿体無いですし、会社の忘年会だからといってドレス着るのもよく分かりませんし。
そういうのは私ではなくて佐伯さんの担当じゃないの?」
福富さんが私の向こう側に立っている佐伯さんの方を見ると・・・
「私そんな担当になった覚えなんてないけど。
それに私がドレスアップなんてしたらアナタの存在が消滅しちゃって可哀想だけどいいの?」
またそんなことを福富さんに言っていて、それには小さく笑いながら佐伯さんの方を見た。
「羽鳥さんは今年もドレスアップをしてくると思ってましたけどね。
今年はどうしたんですか?」
そう聞かれ・・・
昨日の幸治君とのやり取りを思い返した。
「羽鳥さんがドレスアップした姿、今年も楽しみにしてたんですけど~!」
ホテルの大きな会場を貸し切り開かれる増田ホールディングスの忘年会。
仕事納めの数時間後から始まるこの忘年会では、毎年ドレスアップした女の人達も多い。
私もあまり派手にならないようなドレスを着て毎年参加していたけれど、私の隣に立つ福富さんの言葉を聞いてから自分の姿を見下ろした。
この前のお兄ちゃんと貴子さんの結婚挨拶、その時に幸治君から買って貰った“Hatori”のワンピースを着ている自分の姿を。
「兄が奥さんとの結婚挨拶の時に買ったワンピースがあったから、今年はこれにしたの。」
「お兄さんの結婚挨拶とはいえ、ワンピースで大丈夫なんですか?
着物とかじゃなくて。
あ!結納もやっぱりやるんですか?」
「うちの財閥でも結納をする家はあるけど、我が家は向こうの家と相談してやらないことにしたみたい。
古くからある財閥とはいえ、もうそういうことに拘る時代でもないからね。」
「そうでしょうね、だから羽鳥さんの彼氏さんは普通の感じの人でしたし。」
「・・・え!!!?
佐伯さん、羽鳥さんの彼氏さんと会ったことあるの!?」
「会ったことあるよ。
私はアナタより羽鳥さんと仲が良いから。」
私を真ん中に、福富さんとは反対側に立っている佐伯さんがまた福富さんにそんなことを言って喧嘩を仕向けている。
「私だって羽鳥さんと仲良くしたいもん!!
でも・・・なんか、羽鳥さんって・・・私のことあんまり好きじゃないですよね?」
私のことを真っ直ぐと見ながら福富さんが聞いてきて、それには思わず苦笑いをした。
「アナタがいつまで経ってもそんな子どもっぽいからでしょ?
子どもっぽいのは見た目だけにして中身は大人になれば?」
そうではなくて、幸治君と学校の同級生だった福富さんに少し嫉妬している気持ちがある。
幸治君からも聞いているけれど仲も良かった2人。
福富さんに初めて“中華料理屋 安部”のことを聞いた時、「会いたいな~」と言っていた言葉が今でも忘れられない。
福富さんの前では出さないようにしていたつもりでいたけれど、佐伯さんと何かと張り合っている福富さんには、私が福富さんと話す時に少しだけ黒い気持ちが出ていることに気付かれてしまっていたらしい。
「福富さんが若くて可愛い女の子だから31歳の私は嫉妬しちゃってるみたい、ごめんね?」
佐伯さんと元気に口喧嘩をしている福富さんに謝ると、福富さんは私の顔をジッと覗き込んでくる仕草をしてくる。
その顔も凄く可愛い顔で。
女の人にも男の人にも福富さんはこんな感じで。
どこをどう見ても可愛い女の子でしかないはずなのに・・・。
シャンパンでもなく甘いお酒でもなく両手にビールが入ったグラスを持ち、ドレスでもなくワンピースでもなく数時間前まで着ていたスーツ姿の福富さんには“普通”に笑いながら見詰め返す。
「福富さん、今年はドレスを着てくれば良かったのに。
絶対に可愛いのにな。」
「会社の忘年会なんかにドレス1着買うお金も勿体無いですし、会社の忘年会だからといってドレス着るのもよく分かりませんし。
そういうのは私ではなくて佐伯さんの担当じゃないの?」
福富さんが私の向こう側に立っている佐伯さんの方を見ると・・・
「私そんな担当になった覚えなんてないけど。
それに私がドレスアップなんてしたらアナタの存在が消滅しちゃって可哀想だけどいいの?」
またそんなことを福富さんに言っていて、それには小さく笑いながら佐伯さんの方を見た。
「羽鳥さんは今年もドレスアップをしてくると思ってましたけどね。
今年はどうしたんですか?」
そう聞かれ・・・
昨日の幸治君とのやり取りを思い返した。
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