【R18・完】お嬢様は“いけないコト”がしたい

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数駅先にある駅へ行く為に電車に乗り、扉の所に立ち地下鉄の窓ガラスに映る自分を眺めた。



お化粧もしていない顔で髪の毛もセットしていない。
ダブダブの男の人の服を着て高級な鞄を持ちヒールの靴を履いている。



そんな姿で窓ガラスに映る私はニコニコと嬉しそうな顔をしている。
こんなに嬉しそうな顔が出来るのかと思うくらい、こんなに幸せそうに笑う顔を初めて見たと思うくらい、自分の顔なのに不思議な気持ちになりながら眺めていた。



「もしかして、羽鳥さん？」



男の人の声が後ろから聞こえ、窓ガラスの中で視線を移すと後ろにはスーツ姿の譲社長が立っていた。



「譲社長、おはようございます。
土曜日ですけどお仕事ですか？」



振り向いてからそう言うと、譲社長は驚いた顔で私の姿を上から下まで見ている。



「これからホールディングスの方で少し仕事があって・・・。
羽鳥さん、その格好どうしたの？」



「最近の私服はこんな感じなんです。」



「ラーメン屋の服？」



「そうですね。」



自分の姿を見下ろしながら返事をし、幸治君の服を見て自然と笑顔になった。



「昨日、翔子からまた向こうの財閥に来いみたいな話されただろ？」



「はい、翔子さんから聞きましたか？」



「翔子がうちの奥さんに話してきたのを奥さんから聞いた。」



怒った顔で扉に寄り掛かり、スーツのポケットに両手を入れた譲社長。
いつもは完璧な大人の男の人に見えるのに、今は何故か柄の悪い男の人にも見える。



「あいつ、一平の嫁さんに自分の所の優秀な女の子をこっちに取られるから仕掛けてきたな。」



「そうなんですかね？」



「今、ある企業にM&Aの話を話を持ち掛けてて、その件で翔子の方も動き出してる所で。
うちも向こうも同じような条件を提示してるんだよ。」



譲社長が怖い顔でそう言った後、楽しそうな笑顔になり私のことを見てきた。



「羽鳥さんは昨日も何の迷いもなく翔子の方ではなくうちを選んでくれたらしいな。」