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12月24日
「そんなにラブラブな彼氏がいるのに、金曜日のクリスマスイブに私と飲みに来てよかったの?」
お安いチェーンの居酒屋、私の向かい側でジュースを飲んでいる翔子さんがそう聞いてきた。
「彼氏といいますか、何といいますか・・・。
向こうは業界的に12月から繁忙期に入るんですよね。
クリスマスの明日は夕方には帰ってくるので、それからクリスマスパーティーをお家でやる予定です。
翔子さんも明日一夜さんとパーティーですか?」
「うちはパーティーとか特にないかな。
明日は2人して出勤だし、その後に軽く外食するくらい。」
私は甘いカクテルを飲んだ後に翔子さんに改めて聞く。
「あの・・・私もそんなにお酒を飲めませんし、翔子さんも妊娠されていてお酒を飲めないので、居酒屋ではなく他のお店に移りますか?」
おつまみが少し並んでいるだけのテーブル。
翔子さんが予約をしてくれていたこのチェーンの居酒屋に着いてすぐ、妊娠し安定期に入っていることを告げられた。
「お酒を飲みたくて来たわけじゃないからここがいい。
羽鳥さんはもっとちゃんとした所の方がよかった?」
「いえ、こういう居酒屋に入ったのは2度目なので興味はあります。」
「最初は誰と来たの?
そのラーメン屋?」
幸治君のことを譲さんと同じく“ラーメン屋”と呼ぶ翔子さん。
それを聞き、私は首を横に振りながらも少しだけ考える。
「いえ、1度目はこの前父が私の誕生日の日に連れて行ってくれました。
“こういう店は入ったことがないだろ”と言いながら。」
そう答えた後に少しだけ悩みながらも翔子さんに聞いた。
「こういうお話をするのはアレかと思いますけど、譲社長は翔子さんとお付き合いしているという噂がうちの分家の間で回っていたんですよね。」
正直ずっと気になっていた話を翔子さんに聞くと、翔子さんが楽しそうに笑った。
「あったね~、そんなことも。」
「え!?
やっぱり付き合ってたんですか!?」
「付き合ってたけど付き合ってなかった。」
そんなよく分からない話には首を傾げると、翔子さんがおつまみをつまんだ後に楽しそうに笑い続けたまま懐かしそうな顔で周りを眺めた。
「私達はこんな家に生まれ落ちたからさ。
そんなこともあった。」
「“こんな家に生まれ落ちた”って、譲社長も言っていました。」
「うん、あれは譲の言葉じゃなくて“私達”の言葉かな。」
「私達?・・・お姉さんですか?」
「うん、そう。」
永家財閥の本家には女の子2人だけしか生まれなかった。
残念ながら男の子は生まれなかった。
今日もポニーテールをし、パンツスーツに低いパンプスを履いている翔子さんを眺める。
妊娠していなくても低いパンプスを履いていた翔子さんのことを。
「うちの“家”とそっちの“家”で、私の姉と譲は最初から婚約者だったということで結婚したんだよね。
本当は凄く色々とあったんだけど。」
「そうだったんですね・・・。」
幸せそうに笑っていた譲社長の姿を思い出しながら頷き、私もおつまみを食べた。
「それを“本当”にする力が2つの財閥にはありますからね。」
「うん、だからうちに来れば?」
翔子さんが鋭い目でそう言ってきた。
「ラーメン屋と結婚する羽鳥さんのことを譲も元気も財閥を動かしてまで守るとは思えない。
でも、うちなら守るよ?」
“強い者”の目で私のことを真っ直ぐと捕らえてこようとする。
「うちなら羽鳥さんのこともラーメン屋のことも守れるし、その後のそっちの財閥のことだって守ろうと思えば守れるよ?」
そんな魅力的でしかない提案を今の私にしてきた。
「そんなにラブラブな彼氏がいるのに、金曜日のクリスマスイブに私と飲みに来てよかったの?」
お安いチェーンの居酒屋、私の向かい側でジュースを飲んでいる翔子さんがそう聞いてきた。
「彼氏といいますか、何といいますか・・・。
向こうは業界的に12月から繁忙期に入るんですよね。
クリスマスの明日は夕方には帰ってくるので、それからクリスマスパーティーをお家でやる予定です。
翔子さんも明日一夜さんとパーティーですか?」
「うちはパーティーとか特にないかな。
明日は2人して出勤だし、その後に軽く外食するくらい。」
私は甘いカクテルを飲んだ後に翔子さんに改めて聞く。
「あの・・・私もそんなにお酒を飲めませんし、翔子さんも妊娠されていてお酒を飲めないので、居酒屋ではなく他のお店に移りますか?」
おつまみが少し並んでいるだけのテーブル。
翔子さんが予約をしてくれていたこのチェーンの居酒屋に着いてすぐ、妊娠し安定期に入っていることを告げられた。
「お酒を飲みたくて来たわけじゃないからここがいい。
羽鳥さんはもっとちゃんとした所の方がよかった?」
「いえ、こういう居酒屋に入ったのは2度目なので興味はあります。」
「最初は誰と来たの?
そのラーメン屋?」
幸治君のことを譲さんと同じく“ラーメン屋”と呼ぶ翔子さん。
それを聞き、私は首を横に振りながらも少しだけ考える。
「いえ、1度目はこの前父が私の誕生日の日に連れて行ってくれました。
“こういう店は入ったことがないだろ”と言いながら。」
そう答えた後に少しだけ悩みながらも翔子さんに聞いた。
「こういうお話をするのはアレかと思いますけど、譲社長は翔子さんとお付き合いしているという噂がうちの分家の間で回っていたんですよね。」
正直ずっと気になっていた話を翔子さんに聞くと、翔子さんが楽しそうに笑った。
「あったね~、そんなことも。」
「え!?
やっぱり付き合ってたんですか!?」
「付き合ってたけど付き合ってなかった。」
そんなよく分からない話には首を傾げると、翔子さんがおつまみをつまんだ後に楽しそうに笑い続けたまま懐かしそうな顔で周りを眺めた。
「私達はこんな家に生まれ落ちたからさ。
そんなこともあった。」
「“こんな家に生まれ落ちた”って、譲社長も言っていました。」
「うん、あれは譲の言葉じゃなくて“私達”の言葉かな。」
「私達?・・・お姉さんですか?」
「うん、そう。」
永家財閥の本家には女の子2人だけしか生まれなかった。
残念ながら男の子は生まれなかった。
今日もポニーテールをし、パンツスーツに低いパンプスを履いている翔子さんを眺める。
妊娠していなくても低いパンプスを履いていた翔子さんのことを。
「うちの“家”とそっちの“家”で、私の姉と譲は最初から婚約者だったということで結婚したんだよね。
本当は凄く色々とあったんだけど。」
「そうだったんですね・・・。」
幸せそうに笑っていた譲社長の姿を思い出しながら頷き、私もおつまみを食べた。
「それを“本当”にする力が2つの財閥にはありますからね。」
「うん、だからうちに来れば?」
翔子さんが鋭い目でそう言ってきた。
「ラーメン屋と結婚する羽鳥さんのことを譲も元気も財閥を動かしてまで守るとは思えない。
でも、うちなら守るよ?」
“強い者”の目で私のことを真っ直ぐと捕らえてこようとする。
「うちなら羽鳥さんのこともラーメン屋のことも守れるし、その後のそっちの財閥のことだって守ろうと思えば守れるよ?」
そんな魅力的でしかない提案を今の私にしてきた。
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