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“中華料理屋 安部”の扉の所から、“中華料理屋 安部”のティーシャツを着ている少し幼く見える幸治君がハンカチを強く握り締めたのが分かった。
その手が大きく震え出したから、分かった。
「気持ちだけでもちょうだい・・・。」
「気持ちだけ・・・?」
「一言でいいから、ちょうだい。
それだけでいいから・・・。
その一言だけでいいから、羽鳥さんの気持ちだけでも欲しい。
吐き出してよ、羽鳥さん。」
真っ赤な顔で怒りながら、でも泣きそうな顔をしている幸治君が続ける。
「俺が受け取るから・・・。
受け取って、俺の中で絶対に外に出さないで持ち続けるから・・・。」
そんなよく分からないことを言われ、それには首を傾げながら幸治君を眺める。
両手で胸を押さえ付けながら眺める。
なんでか胸がこんなにも苦しくて。
“何か”がこの胸から飛び出そうとしていて。
凄く凄く苦しくて・・・
このまま死んでしまうのではないかと思うくらいに苦しくて・・・。
「吐き出してよ、羽鳥さん。」
怖いくらい鋭い目で幸治君からそう言われ・・・
“怖い”と思った。
それは幸治君ではなく、なんでか自分が“怖い”と思った。
綺麗で正しくいなくてはいけない・・・。
私は、綺麗で正しくいなくてはいけない・・・。
なんでかその言葉が何度も頭の中に浮かび、私は無意識に素早く一歩後ろに下がった。
下がろうとした。
でも、この両足に力を込めて一歩前に進んだ。
そして、幸治君のことを真っ直ぐと見詰めながら想いを、気持ちを吐き出した。
この胸が張り裂けそうになるほどの想いも気持ちも。
「幸治君のことが凄く好きだよ。
私、幸治君のことが大好きなの。」
そう吐き出した私に幸治君は凄く驚いた後、嬉しそうに笑った。
真っ赤な顔で照れたように、でも凄く凄く嬉しそうな顔で笑った。
「知ってます。」
そんな返事をして・・・
「俺も羽鳥さんのことが好きです。
すげー好きで・・・大好きです。」
幸治君のその言葉を聞き凄く凄く“嬉しい”と思った。
なのに幸治君が私から視線を逸らし、苦しそうに声を出した。
「俺が高校生で本当にすみません・・・。」
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“中華料理屋 安部”の扉の所から、“中華料理屋 安部”のティーシャツを着ている少し幼く見える幸治君がハンカチを強く握り締めたのが分かった。
その手が大きく震え出したから、分かった。
「気持ちだけでもちょうだい・・・。」
「気持ちだけ・・・?」
「一言でいいから、ちょうだい。
それだけでいいから・・・。
その一言だけでいいから、羽鳥さんの気持ちだけでも欲しい。
吐き出してよ、羽鳥さん。」
真っ赤な顔で怒りながら、でも泣きそうな顔をしている幸治君が続ける。
「俺が受け取るから・・・。
受け取って、俺の中で絶対に外に出さないで持ち続けるから・・・。」
そんなよく分からないことを言われ、それには首を傾げながら幸治君を眺める。
両手で胸を押さえ付けながら眺める。
なんでか胸がこんなにも苦しくて。
“何か”がこの胸から飛び出そうとしていて。
凄く凄く苦しくて・・・
このまま死んでしまうのではないかと思うくらいに苦しくて・・・。
「吐き出してよ、羽鳥さん。」
怖いくらい鋭い目で幸治君からそう言われ・・・
“怖い”と思った。
それは幸治君ではなく、なんでか自分が“怖い”と思った。
綺麗で正しくいなくてはいけない・・・。
私は、綺麗で正しくいなくてはいけない・・・。
なんでかその言葉が何度も頭の中に浮かび、私は無意識に素早く一歩後ろに下がった。
下がろうとした。
でも、この両足に力を込めて一歩前に進んだ。
そして、幸治君のことを真っ直ぐと見詰めながら想いを、気持ちを吐き出した。
この胸が張り裂けそうになるほどの想いも気持ちも。
「幸治君のことが凄く好きだよ。
私、幸治君のことが大好きなの。」
そう吐き出した私に幸治君は凄く驚いた後、嬉しそうに笑った。
真っ赤な顔で照れたように、でも凄く凄く嬉しそうな顔で笑った。
「知ってます。」
そんな返事をして・・・
「俺も羽鳥さんのことが好きです。
すげー好きで・・・大好きです。」
幸治君のその言葉を聞き凄く凄く“嬉しい”と思った。
なのに幸治君が私から視線を逸らし、苦しそうに声を出した。
「俺が高校生で本当にすみません・・・。」
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