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そんな幸治君の姿には驚き固まってしまった。
私が戻ってきたことに気付かない幸治君は私のタオルハンカチを唇につけたまま、薄く目を開けたのは分かった。
どうしようかと思いながらも口を開いた。
でも、開いた口からは何の音も出て来ない。
こんな幸治君の姿を見るのは初めてで、何と声を掛けたらいいのか分からなかった。
口を開けたまま扉の所に立ち続けていると・・・
「羽鳥さん。」
と、幸治君が私のことを呼んだ。
でも、その“羽鳥さん”はいつもの“羽鳥さん”とは違っていて・・・。
いつもの普通の“羽鳥さん”ではなく、なんとなく幸治君の声に甘さが含まれているように感じた。
それにも驚き何も言えずにいると、幸治君が・・・
幸治君が、言った。
「好きです。」
私のタオルハンカチを唇につけたまま幸治君がハッキリとそう言った。
薄く開けていた目をまたギュッと苦しそうに閉じた幸治君の横顔を、ドキドキと煩く暴れている心臓の音を聞きながら見詰め続ける。
「俺じゃダメですか?」
幸治君がそう言って、苦しそうに目を閉じ続け・・・
「羽鳥さんの初体験の相手、俺じゃダメですか?」
そんな幸治君の言葉にはこの口から“何か”が出てきそうになり、慌てて両手で口を押さえ付けた。
「俺、羽鳥さんとセックスしたい。
1回だけでいいから、羽鳥さんとセックスしたい・・・っ。」
いつものような静かな声ではなく、最後は苦しそうに言葉を吐き出した幸治君。
“例え好きな人がいても、こんな中華屋の俺が好きになったなんて相手には言えないし言いたくもない。
そんなの迷惑を掛けて困らせて俺から離れてしまうだけだから俺は絶対に言わない。
また会える未来があるなら、俺はずっとその想いを持ったまま我慢する。”
さっき偶然に知ってしまった幸治君の恋愛に関しての考え方。
まだまた若い男の子である幸治君が夢も希望もないような恋愛観を持っていた。
“私”に持っていた。
それを知ってしまい、口を押さえ付けている両手に涙が流れてきた。
そして、思ってしまった。
“どうして幸治君は高校生なんだろう”と・・・。
“どうして幸治君は“中華料理屋 安部”なんだろう”と・・・。
そう思ってしまった・・・。
“俺のことを好きになった女の子は可哀想”
幸治君のそんな言葉までも思い出し、なんでか分からないけれどこの目から沢山の涙が流れてくる。
私は幸治君のことが異性として好きでもないから“可哀想な女”ではないはずなのに、こんなにも涙が流れてくる。
「俺じゃダメですか・・・っ?」
私のタオルハンカチに唇をつけたまま苦しそうに言葉を吐き出した幸治君を、私は泣きながら眺める。
「いて・・・。」
“痛い”と言った幸治君がうっすらと目を開け、空いていた手でズボンの上から下半身を押さえた。
そしてその手をゆっくりと上下に擦り出した。
それを見て・・・
私は無意識に一歩、後退った。
そしたら、その瞬間・・・
私の後ろを車が通った。
それに気付いた幸治君がバッ────...と勢いよく扉を見た。
扉の所に立つ、両手で口を押さえ号泣している私のことを見た。
私が戻ってきたことに気付かない幸治君は私のタオルハンカチを唇につけたまま、薄く目を開けたのは分かった。
どうしようかと思いながらも口を開いた。
でも、開いた口からは何の音も出て来ない。
こんな幸治君の姿を見るのは初めてで、何と声を掛けたらいいのか分からなかった。
口を開けたまま扉の所に立ち続けていると・・・
「羽鳥さん。」
と、幸治君が私のことを呼んだ。
でも、その“羽鳥さん”はいつもの“羽鳥さん”とは違っていて・・・。
いつもの普通の“羽鳥さん”ではなく、なんとなく幸治君の声に甘さが含まれているように感じた。
それにも驚き何も言えずにいると、幸治君が・・・
幸治君が、言った。
「好きです。」
私のタオルハンカチを唇につけたまま幸治君がハッキリとそう言った。
薄く開けていた目をまたギュッと苦しそうに閉じた幸治君の横顔を、ドキドキと煩く暴れている心臓の音を聞きながら見詰め続ける。
「俺じゃダメですか?」
幸治君がそう言って、苦しそうに目を閉じ続け・・・
「羽鳥さんの初体験の相手、俺じゃダメですか?」
そんな幸治君の言葉にはこの口から“何か”が出てきそうになり、慌てて両手で口を押さえ付けた。
「俺、羽鳥さんとセックスしたい。
1回だけでいいから、羽鳥さんとセックスしたい・・・っ。」
いつものような静かな声ではなく、最後は苦しそうに言葉を吐き出した幸治君。
“例え好きな人がいても、こんな中華屋の俺が好きになったなんて相手には言えないし言いたくもない。
そんなの迷惑を掛けて困らせて俺から離れてしまうだけだから俺は絶対に言わない。
また会える未来があるなら、俺はずっとその想いを持ったまま我慢する。”
さっき偶然に知ってしまった幸治君の恋愛に関しての考え方。
まだまた若い男の子である幸治君が夢も希望もないような恋愛観を持っていた。
“私”に持っていた。
それを知ってしまい、口を押さえ付けている両手に涙が流れてきた。
そして、思ってしまった。
“どうして幸治君は高校生なんだろう”と・・・。
“どうして幸治君は“中華料理屋 安部”なんだろう”と・・・。
そう思ってしまった・・・。
“俺のことを好きになった女の子は可哀想”
幸治君のそんな言葉までも思い出し、なんでか分からないけれどこの目から沢山の涙が流れてくる。
私は幸治君のことが異性として好きでもないから“可哀想な女”ではないはずなのに、こんなにも涙が流れてくる。
「俺じゃダメですか・・・っ?」
私のタオルハンカチに唇をつけたまま苦しそうに言葉を吐き出した幸治君を、私は泣きながら眺める。
「いて・・・。」
“痛い”と言った幸治君がうっすらと目を開け、空いていた手でズボンの上から下半身を押さえた。
そしてその手をゆっくりと上下に擦り出した。
それを見て・・・
私は無意識に一歩、後退った。
そしたら、その瞬間・・・
私の後ろを車が通った。
それに気付いた幸治君がバッ────...と勢いよく扉を見た。
扉の所に立つ、両手で口を押さえ号泣している私のことを見た。
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