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チェックアウトの11時ギリギリまでベッドで横になり、それから軽くシャワーを浴びた後はドライヤーもしないまま、スキンケアもしないまま、いつもの服装で旅行鞄を持ち上げフラフラとしながらも病院の中庭のベンチまで歩いてきた。
ベンチにもたれ掛かるように座りながら12月の空を見上げ、寒い風に吹かれていく。
濡れたままの髪の毛が風になびいていき身体をもっと寒くするけれど、痛い頭にこの寒さは丁度良いとも思った。
「せっかくスイートルームを取ってくれたのに、寝室と浴室しか使わなかった・・・。」
夜に泊まるだけなのにあんなに良い部屋を取ってくれているとは思わず凄く驚いた。
「お金、大丈夫なのかな・・・。」
幸治君の所長さんのご両親の病院だという大きな病院、それを中庭から眺めながら呟いた。
そしたら・・・
「羽鳥さん・・・?」
聞き覚えのある女の子が私を呼び、その声の方をゆっくりと振り向いた。
回らない頭のままその女の子を眺め重い口を開く。
「佐伯さん。」
今度は私が佐伯さんの名前を呼ぶと、佐伯さんは大きな目をもっと見開き私のことを見ている。
そして・・・
「羽鳥さん、どうしたんですか・・・?
あ、具合が悪くなっちゃったんですよね、ここ病院ですし。」
そう聞かれ、私は素直に頷いた。
「うん、二日酔い。
でも病院には受診してなくて、ここで待ち合わせをしてて。」
「待ち合わせ・・・?
その格好でですか?
その服、男の人に借りた物ですよね?
例の彼氏さん?」
「うん、そう。」
「そうですよね、何度か羽鳥さんと街中でお会いしたことがありますけど、いつも“Hatori”ブランドの服を着ていましたし!!」
佐伯さんが物凄く安心した顔で笑い、私が座るベンチに歩いてきた。
その姿はまるで映画の1シーンかのようで。
それくらいにこの女の子は絵になっていた。
それくらいに人を惹き付ける雰囲気を持っている女の子だった。
明るく元気な福富さんとはまた違い、歩いているだけで目が離せないくらいの雰囲気のある女の子。
「佐伯さんはこの病院に通院してるんだ?」
私は譲社長のお父さんである増田社長から佐伯さんのことを頼まれていた。
それは仕事の面だけではなく健康面についても。
増田社長の幼馴染みの友達の娘さん、そんな遠いような縁で佐伯さんはうちの会社に入ってきて、増田社長は私に佐伯さんを頼んできた。
「はい、新卒の頃からまた通院することになりまして。」
「詳しいことは聞かされてないんだけど、その・・・大丈夫なの?」
「残念なことに大丈夫ですね。」
佐伯さんが可愛く笑いながらそんなことを言って、私の隣に座り空を見上げた。
「早く死にたいな。」
「そうなの?」
「羽鳥さんのそういうところ本当に好きです。
変にお説教してこないし頭ごなしに押し付けてこないし説得もしてこないし。」
「そういうことを私も親からされたことがあって、他の人にはしないようにしてるの。
・・・今一緒にいる男の子には昔からしちゃってるけどね。」
「私、お姉ちゃんがいたら羽鳥さんみたいなお姉ちゃんが欲しかったな。
幼馴染みのお兄ちゃんは2人いるし同じ歳の幼馴染みの男女は何人かいるけど、お姉ちゃんはいなかったんです。」
「一応姉妹みたいだよ?
増田ホールディングスの経理部の三姉妹って呼ばれてるんだって、私達。」
「・・・それって福富さんも入ってますよね?
福富さんとも姉妹とか嫌なんですけど。」
「本物の姉妹みたいだよ?」
「だから嫌なんですよ。」
空を見上げ続けたまま佐伯さんが呟いた。
「早く死んで生まれ変わりたい。
二十歳まで生きられないかもしれないって言われてたのにまだ生きてる。
不完全で醜い身体のまま、まだ生きちゃってる。」
ベンチにもたれ掛かるように座りながら12月の空を見上げ、寒い風に吹かれていく。
濡れたままの髪の毛が風になびいていき身体をもっと寒くするけれど、痛い頭にこの寒さは丁度良いとも思った。
「せっかくスイートルームを取ってくれたのに、寝室と浴室しか使わなかった・・・。」
夜に泊まるだけなのにあんなに良い部屋を取ってくれているとは思わず凄く驚いた。
「お金、大丈夫なのかな・・・。」
幸治君の所長さんのご両親の病院だという大きな病院、それを中庭から眺めながら呟いた。
そしたら・・・
「羽鳥さん・・・?」
聞き覚えのある女の子が私を呼び、その声の方をゆっくりと振り向いた。
回らない頭のままその女の子を眺め重い口を開く。
「佐伯さん。」
今度は私が佐伯さんの名前を呼ぶと、佐伯さんは大きな目をもっと見開き私のことを見ている。
そして・・・
「羽鳥さん、どうしたんですか・・・?
あ、具合が悪くなっちゃったんですよね、ここ病院ですし。」
そう聞かれ、私は素直に頷いた。
「うん、二日酔い。
でも病院には受診してなくて、ここで待ち合わせをしてて。」
「待ち合わせ・・・?
その格好でですか?
その服、男の人に借りた物ですよね?
例の彼氏さん?」
「うん、そう。」
「そうですよね、何度か羽鳥さんと街中でお会いしたことがありますけど、いつも“Hatori”ブランドの服を着ていましたし!!」
佐伯さんが物凄く安心した顔で笑い、私が座るベンチに歩いてきた。
その姿はまるで映画の1シーンかのようで。
それくらいにこの女の子は絵になっていた。
それくらいに人を惹き付ける雰囲気を持っている女の子だった。
明るく元気な福富さんとはまた違い、歩いているだけで目が離せないくらいの雰囲気のある女の子。
「佐伯さんはこの病院に通院してるんだ?」
私は譲社長のお父さんである増田社長から佐伯さんのことを頼まれていた。
それは仕事の面だけではなく健康面についても。
増田社長の幼馴染みの友達の娘さん、そんな遠いような縁で佐伯さんはうちの会社に入ってきて、増田社長は私に佐伯さんを頼んできた。
「はい、新卒の頃からまた通院することになりまして。」
「詳しいことは聞かされてないんだけど、その・・・大丈夫なの?」
「残念なことに大丈夫ですね。」
佐伯さんが可愛く笑いながらそんなことを言って、私の隣に座り空を見上げた。
「早く死にたいな。」
「そうなの?」
「羽鳥さんのそういうところ本当に好きです。
変にお説教してこないし頭ごなしに押し付けてこないし説得もしてこないし。」
「そういうことを私も親からされたことがあって、他の人にはしないようにしてるの。
・・・今一緒にいる男の子には昔からしちゃってるけどね。」
「私、お姉ちゃんがいたら羽鳥さんみたいなお姉ちゃんが欲しかったな。
幼馴染みのお兄ちゃんは2人いるし同じ歳の幼馴染みの男女は何人かいるけど、お姉ちゃんはいなかったんです。」
「一応姉妹みたいだよ?
増田ホールディングスの経理部の三姉妹って呼ばれてるんだって、私達。」
「・・・それって福富さんも入ってますよね?
福富さんとも姉妹とか嫌なんですけど。」
「本物の姉妹みたいだよ?」
「だから嫌なんですよ。」
空を見上げ続けたまま佐伯さんが呟いた。
「早く死んで生まれ変わりたい。
二十歳まで生きられないかもしれないって言われてたのにまだ生きてる。
不完全で醜い身体のまま、まだ生きちゃってる。」
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