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「それくらいしか出来ない男だったから、俺。
現実の世界では“羽鳥さん”にそれだけしか出来ない男だったから。
ラーメン1杯“普通”にご馳走することもハンカチを渡すことも駅まで送ることも出来ない、あのカウンターから出て“羽鳥さん”を目の前に自分の想いも気持ちも伝えられない男だったから。」



その言葉を聞き、私も幸治君のことを強く抱き締め返した。



幸治君の18歳の誕生日、最後になるはずだった時のことを思い出しながら抱き締め返した。



「連絡しないでくれてよかった。
だから私は幸治君の為に出来ることをしに“中華料理屋 安部”に行けた。
幸治君に“最後”に会いたいと思いながら、幸治君に“最後”に会えるタイミングが訪れることだけを楽しみに、私はお嬢様として生きてた。」



「あの“最後”からまさか再会出来るとは思いませんでした。
須崎さんと結婚しているのかと思っていましたし、あんな人なら幸せになれているんだろうなと思っていました。
俺のことなんてもう過去の思い出になっていると思っていました。
“羽鳥さん”とこんなことが出来る未来があったなんて思いもしませんでした。」



幸治君がそう言って・・・



私を抱き締めていた手をゆっくりと下に下ろしてきた。



「いや、マジでこんなことが出来る日が来るとは・・・。」



私のお尻をいやらしく触り始めたので、それには笑いながら口を開く。



「夜ご飯は?」



「お腹も減ってるし気持ち良い“いけないコト”もしたいし・・・。
あ、俺金曜日に出張でさ。
金曜日の定時後か土曜日に一美さんも来る?
あの人の親の病院で、俺が担当を引き継ぐことになって。
仕事は金曜日に終わるからそのまま泊まって、向こうで旅行しない?」



「そういうの、事務所的に大丈夫なの?」



「あの人に確認はしてある。
俺の帰りの新幹線代だけは経費で、ホテル代も一美さんの交通費も自腹でって、“ガキのくせに一丁前に女と旅行かよ”とか言われながら指示された。
行く?旅行。」



そう聞かれ・・・



「行く!!」



凄く楽しみになりながら答えたら、何でか幸治君の目に熱が籠った。



「一美さんの“イク”はただのエロいやつだから。」



そんな変なことを言われ、それには大きく笑った。
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