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カウンター席に座る若くてお洒落な女の子の背中は明らかに落ち込んでいる。
「あんなことを言って大丈夫なの?」
小声で幸治君に聞くと、幸治君が不思議そうな顔で私の顔を見てきた。
「何が?」
「さっきの女の子?女の人?に私のことをあんな風に言って。
顧問先で働いている女の人なんでしょ?」
「え、奥さんですって言ってよかったですか?」
「そうじゃないけど・・・。」
「じゃあ、付き合いたくてセックスしたくて結婚までしたいと思ってるお姉さん以外、どう言えばよかったんですか?
俺が片想い中のお姉さんとか?
でも、一美さんが認めてないだけで俺ら普通に両想いだしな。」
空になった丼を目の前に本気でそう言いながら悩んでいる幸治君には小さく笑い、私は残りのラーメンを食べ進めた。
少し冷めてしまったようにも思うラーメン、それも幸治君が作って出してくれたラーメンじゃなくてもこんなにも“美味しい”と思った。
こんなにも“幸せ”で、こんなにも“美味しい”と思えた。
「ご馳走さまでした。」
ラーメン屋さんを出てすぐに幸治君にそう言った。
「うん。」
再会してから幸治君と一緒に出掛けた時は必ずお会計をしてくれていて、凄く凄く嬉しそうにお金を出す幸治君。
「“ラーメン 安部”でも思いましたけど、やっぱりラーメンを一美さんにご馳走出来た達成感凄いです!!」
「あのラーメン屋さん、結構高かったね?」
「最近だとあのくらい普通じゃないですか?」
「私、“中華料理屋 安部”の醤油ラーメンが基準になってるからな~・・・。」
「俺のラーメンまた食べたい?」
そう聞かれ・・・
「食べたい!!!」
ずっとずっと思っていたことを素直に言った。
幸治君は嬉しそうに笑い、意地悪な顔で私のことを見下ろした。
「今の俺のことも“好き”だって認めてそれを俺に言えたら、その時はまた作りますよ。」
それは凄く簡単なことのようにも思うけれど、私にはとても難しいことで。
生粋のお嬢様、それも増田の分家の女として生きる私にとってはとても難しいことで。
そして、幸治君のことが“大切”だと思うただの“羽鳥一美”にとっても、とても難しいことで。
「・・・最近食べすぎちゃってるから太っちゃう。
ジムにも行かなくなっちゃったし、運動しないと・・・。」
「俺の話は無視かよ!!」
幸治君が大きく笑いながら私の右手を掴み、歩き始めた。
「一美さんがどんな姿でも俺は好きだけど、死にそうな顔をしながらそんなことを言われたら、身体動かすのに付き合うしかないじゃないですか。
家で俺と一緒に運動する為に必要な物、買いに行きますよ!」
「あんなことを言って大丈夫なの?」
小声で幸治君に聞くと、幸治君が不思議そうな顔で私の顔を見てきた。
「何が?」
「さっきの女の子?女の人?に私のことをあんな風に言って。
顧問先で働いている女の人なんでしょ?」
「え、奥さんですって言ってよかったですか?」
「そうじゃないけど・・・。」
「じゃあ、付き合いたくてセックスしたくて結婚までしたいと思ってるお姉さん以外、どう言えばよかったんですか?
俺が片想い中のお姉さんとか?
でも、一美さんが認めてないだけで俺ら普通に両想いだしな。」
空になった丼を目の前に本気でそう言いながら悩んでいる幸治君には小さく笑い、私は残りのラーメンを食べ進めた。
少し冷めてしまったようにも思うラーメン、それも幸治君が作って出してくれたラーメンじゃなくてもこんなにも“美味しい”と思った。
こんなにも“幸せ”で、こんなにも“美味しい”と思えた。
「ご馳走さまでした。」
ラーメン屋さんを出てすぐに幸治君にそう言った。
「うん。」
再会してから幸治君と一緒に出掛けた時は必ずお会計をしてくれていて、凄く凄く嬉しそうにお金を出す幸治君。
「“ラーメン 安部”でも思いましたけど、やっぱりラーメンを一美さんにご馳走出来た達成感凄いです!!」
「あのラーメン屋さん、結構高かったね?」
「最近だとあのくらい普通じゃないですか?」
「私、“中華料理屋 安部”の醤油ラーメンが基準になってるからな~・・・。」
「俺のラーメンまた食べたい?」
そう聞かれ・・・
「食べたい!!!」
ずっとずっと思っていたことを素直に言った。
幸治君は嬉しそうに笑い、意地悪な顔で私のことを見下ろした。
「今の俺のことも“好き”だって認めてそれを俺に言えたら、その時はまた作りますよ。」
それは凄く簡単なことのようにも思うけれど、私にはとても難しいことで。
生粋のお嬢様、それも増田の分家の女として生きる私にとってはとても難しいことで。
そして、幸治君のことが“大切”だと思うただの“羽鳥一美”にとっても、とても難しいことで。
「・・・最近食べすぎちゃってるから太っちゃう。
ジムにも行かなくなっちゃったし、運動しないと・・・。」
「俺の話は無視かよ!!」
幸治君が大きく笑いながら私の右手を掴み、歩き始めた。
「一美さんがどんな姿でも俺は好きだけど、死にそうな顔をしながらそんなことを言われたら、身体動かすのに付き合うしかないじゃないですか。
家で俺と一緒に運動する為に必要な物、買いに行きますよ!」
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