【R18・完】お嬢様は“いけないコト”がしたい

Bu-cha

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久しぶりに見た幸治君の姿。
その姿を見て、吐き出しそうになる言葉がこの胸から一気に沸き出てきた。
でもそれら全てを飲み込み、私は扉の所から幸治君に笑い掛ける。



「美味しい醤油ラーメンを食べに来たんだけど、いいかな?」



「美味しいかは微妙なところですけど、値段の割には美味しいくらいの醤油ラーメンなら出せます!!」



「私にとってはここの醤油ラーメンは凄く美味しいから。」



「ありがとうございます。」



幸治君が昔たまに見せていた顔、少しだけ赤らめ照れたような顔で笑う。
その顔からなんでか目が離せなくて、なんでか胸がドキドキとしてきて。
こんなにもドキドキとしてきて・・・。



それを振り切るように“中華料理屋 安部”の中に足を踏み出した。



「醤油ラーメンを2つ。」



「2つ・・・?」



首を傾げた幸治君が、カウンター席に向かう私の後ろに視線を移した。
そして一瞬だけ固まり・・・



「いらっしゃいませ!!」



と、昔と変わらない声と笑顔で一夜さんにもそう言った。



「俺の父親が好きそうな店だな・・・。」



一夜さんは小さな声でそう言いながら店内を見渡していて、いつものカウンター席に座った私の隣に座った。



幸治君がいつも立っている場所の向かい側が私の定位置。



毎週末、私はこの場所で、幸治君が出してくれる醤油ラーメンを食べていた。



随分と長い時間を掛けて、1杯の醤油ラーメンを食べていた。



「醤油ラーメンがオススメなんだ?」



壁に貼られているメニューを眺めながら一夜さんが私に聞いてきて、そしたら・・・



「今時ラーメン1杯が650円って随分と安いな!!」



結構驚きながらそう言っていて、それには笑いながら頷いた。



「税込での値段ですからね?」



「羽鳥さんがこういうお店に来ていたのは意外です。
勉強で来ていたんですか?」



「勉強・・・もあるかもしれませんけど、醤油ラーメンも美味しいですし、それに・・・」



言葉を切った後、少しだけ悩んでから続けた。



「この場所で少し息抜きをさせて貰っていました。」



「お嬢様も大変ですからね。」



「流石は婚約者様、よくご存知で。」



「財閥のお嬢様にずっと片想いをしていたくらいなので、一般家庭出身の俺でもお嬢様の大変さは分かります。」



「一般家庭って・・・。
ご両親2人とも化粧品業界最大手の社長さんなので、一般家庭ではないですよ。」



「2人とも代表に成り上がっただけの家なので、一般家庭にも満たないような親2人ですけどね。
小さな商店街出身の2人なので。」



一夜さんと話しながら、途中から私は鞄を漁っていた。



「何か忘れ物ですか?」



「ハンカチが見当たらなくて・・・。
ナプキンがない所では膝の上にハンカチを広げているんですけど・・・。」



私がそう言い終わった瞬間・・・



「俺のでよければ使いますか?」



一夜さんがすぐにハンカチを差し出してくれた。
綺麗にアイロンがかけられたブランド物のハンカチを。
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