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お酒を飲むという“いけないコト”、それに付き合って欲しいと言った私を幸治君はお洒落なバーに連れてきてくれた。



カウンターに座った幸治君と少し会話をしていたカウンターの向こう側にいるお店の人。
お酒を初めて飲むと言った私にどんな感じのお酒が飲みたいのか聞き出してくれ、私のリクエスト通り度数の高い可愛い見た目の甘いカクテルを私の目の前に出してくれた。



可愛い見た目のカクテルが注がれたグラスを持ち、薄暗い店内でそれを眺める。



少しの明かりの中で可愛いカクテルがキラキラと輝いている。



「こんなに綺麗な飲み物初めて見た。」



「初めてお酒を飲むのに度数の高いお酒で大丈夫ですか?」



「いいの、“いけないコト”をするんだもん。
私、酔っ払ってみたい。
お嬢様が酔っ払うことなんて許されないことだからね。」



そう言ってからグラスを幸治君の方に近付けた。
幸治君から貰ったタオルハンカチを膝の上に広げて座った私のすぐ隣に座っている幸治君に。
ラーメン屋さんで向かい側の席に座った時よりも、駅まで並んで歩いた時よりも、ずっとずっと近くにいる幸治君に。



幸治君も嬉しそうな顔で笑いながら私が持つグラスに自分のグラスをゆっくりと近付けてくれた。



そして・・・



幸治君のグラスと私のグラスが静かに触れ合った。



静かに触れ合ったはずなのに・・・



ほんの少しだけグラスが触れ合う音が響いた・・・。



その音を聞いて、凄く“嬉しい”と思った。



凄く凄く“嬉しい”と思った。



グラスを口に運ぶことなくすぐ隣にいる幸治君を見る。
幸治君もお酒を飲むことなく、グラスを私のグラスにつけたまま私のことを見詰め返している。



嬉しそうな顔で、でも凄く真剣な顔で・・・。



大人の男の人にしか見えないような顔で・・・。



私のことを真っ直ぐと見詰めてくる・・・。



「“いけないコト”はドキドキする・・・。
私、なんだか凄くドキドキする・・・。」



すぐ目の前にある幸治君の顔を眺めながら、そう言った。
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