122 / 266
9
9-32
しおりを挟む
早川を右手を引き、無言で店を出る。
「創さん・・・」
右手を引こうした早川に、俺はもっと力を入れた。
そのまま早足で歩く。
「創さん?なに・・・??」
不安そうな早川の声を無視する。
「創さん!どこ行くんですか!?」
大きな声で聞かれ、俺はチラリを早川を見下ろす。
「ホテルと俺の部屋どっちがいい?」
「え・・・!?」
「これからお前を抱く。」
「え・・・なんで!?」
「もう止められねぇよ・・・。」
もう、止められない。
早川に、あんなに求められるようなキスをされて。
もう、早川を抱く以外、今は考えられない。
スーツのズボンの中で痛いくらい膨らんだ高ぶりが、早川を求めてピクピクと動いているのに気付く。
それに、思わず笑ってしまった。
「29にもなって・・・これじゃあ高校生のガキみてぇだな。」
そう呟いた時・・・
早川の高校時代の制服姿が出て来て・・・
“天性の人たらし”
いつか聞いた、そんな言葉を思い出した。
それを思い出した瞬間、
早川のクラスでの姿、
部活での姿、
そして、俺と再会してからの姿、
それらが一気に頭の中でグルグルと流れてきて・・・
俺は、壮大な勘違いをしていたことに、やっと気付いた・・・。
早川を振り返る。
不安そうな顔で俺を見上げている。
俺は・・・
なんてことを・・・
なんで勘違いをしていたんだ・・・。
「ごめん、怖かっただろ?悪かった。」
必死に笑い、早川の唇を親指で拭く。
早川は小さく頷いた。
「ごめん。」
手を引いて、今度はゆっくり歩く。
駅まで。
「今日は・・・ごめん、本当に。
謝っても許してもらえないのは分かってる。
でも・・・本当に悪かった。」
俺はそう言って、早川の頬をなでる。
これが、最後だ。
本当に、本当の最後だ。
早川はまた小さく頷いた。
「何回も誘ってごめんな。
付き合ってくれてありがとな。」
精一杯、優く笑う俺に、早川が頷く。
「すげー楽しかったよ。
すげー楽しかった。」
「わたしも・・・楽しかったです。」
早川にそう言ってもらい、俺は泣きそうになった。
俺は、バカだ。
なにが、今までの経験上、だ。
なにが、いつか、大好きなアノ笑顔で、「大好き」と言ってもらう、だ。
そんなことは、絶対になかったのに。
そんなことは、有り得なかったのに。
最初から、早川と出会った最初から、有り得なかったのに。
「お前さ・・・」
「はい・・・」
「枝豆好きなの?」
「え?」
「枝豆、好きなの?」
不思議そうな顔をしている早川に、俺また
聞いた。
「好きです・・・。」
困った顔をしながらも、早川は「好き」と答えた。
俺に、「好き」と。
枝豆のことだけど、俺を見ながら「好き」と。
「俺も好きだよ。すげー好き。
大好きなんだ。ずっと。」
そう言いながら早川の唇をなぞる。
ごめんな、こんな最低な男で。
ごめんな、俺は最低な教師になっちまった。
「もう連絡しねーから安心しろ。
もう二度と会わねーから安心しろよ?
元気でな。
就活がんばれよ!」
泣きそうになるのを我慢し、早口で言い終えて、走って改札口に入った。
「創さん・・・」
右手を引こうした早川に、俺はもっと力を入れた。
そのまま早足で歩く。
「創さん?なに・・・??」
不安そうな早川の声を無視する。
「創さん!どこ行くんですか!?」
大きな声で聞かれ、俺はチラリを早川を見下ろす。
「ホテルと俺の部屋どっちがいい?」
「え・・・!?」
「これからお前を抱く。」
「え・・・なんで!?」
「もう止められねぇよ・・・。」
もう、止められない。
早川に、あんなに求められるようなキスをされて。
もう、早川を抱く以外、今は考えられない。
スーツのズボンの中で痛いくらい膨らんだ高ぶりが、早川を求めてピクピクと動いているのに気付く。
それに、思わず笑ってしまった。
「29にもなって・・・これじゃあ高校生のガキみてぇだな。」
そう呟いた時・・・
早川の高校時代の制服姿が出て来て・・・
“天性の人たらし”
いつか聞いた、そんな言葉を思い出した。
それを思い出した瞬間、
早川のクラスでの姿、
部活での姿、
そして、俺と再会してからの姿、
それらが一気に頭の中でグルグルと流れてきて・・・
俺は、壮大な勘違いをしていたことに、やっと気付いた・・・。
早川を振り返る。
不安そうな顔で俺を見上げている。
俺は・・・
なんてことを・・・
なんで勘違いをしていたんだ・・・。
「ごめん、怖かっただろ?悪かった。」
必死に笑い、早川の唇を親指で拭く。
早川は小さく頷いた。
「ごめん。」
手を引いて、今度はゆっくり歩く。
駅まで。
「今日は・・・ごめん、本当に。
謝っても許してもらえないのは分かってる。
でも・・・本当に悪かった。」
俺はそう言って、早川の頬をなでる。
これが、最後だ。
本当に、本当の最後だ。
早川はまた小さく頷いた。
「何回も誘ってごめんな。
付き合ってくれてありがとな。」
精一杯、優く笑う俺に、早川が頷く。
「すげー楽しかったよ。
すげー楽しかった。」
「わたしも・・・楽しかったです。」
早川にそう言ってもらい、俺は泣きそうになった。
俺は、バカだ。
なにが、今までの経験上、だ。
なにが、いつか、大好きなアノ笑顔で、「大好き」と言ってもらう、だ。
そんなことは、絶対になかったのに。
そんなことは、有り得なかったのに。
最初から、早川と出会った最初から、有り得なかったのに。
「お前さ・・・」
「はい・・・」
「枝豆好きなの?」
「え?」
「枝豆、好きなの?」
不思議そうな顔をしている早川に、俺また
聞いた。
「好きです・・・。」
困った顔をしながらも、早川は「好き」と答えた。
俺に、「好き」と。
枝豆のことだけど、俺を見ながら「好き」と。
「俺も好きだよ。すげー好き。
大好きなんだ。ずっと。」
そう言いながら早川の唇をなぞる。
ごめんな、こんな最低な男で。
ごめんな、俺は最低な教師になっちまった。
「もう連絡しねーから安心しろ。
もう二度と会わねーから安心しろよ?
元気でな。
就活がんばれよ!」
泣きそうになるのを我慢し、早口で言い終えて、走って改札口に入った。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
絶倫彼は私を離さない~あぁ、私は貴方の虜で快楽に堕ちる~
一ノ瀬 彩音
恋愛
私の彼氏は絶倫で、毎日愛されていく私は、すっかり彼の虜になってしまうのですが
そんな彼が大好きなのです。
今日も可愛がられている私は、意地悪な彼氏に愛され続けていき、
次第に染め上げられてしまうのですが……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件
百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。
そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。
いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。)
それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる!
いいんだけど触りすぎ。
お母様も呆れからの憎しみも・・・
溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。
デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。
アリサはの気持ちは・・・。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる