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8年前



大学のバスケ部を引退し、周りのメンバーはそれぞれ就職活動を本格的に始めていた。
体育大学の男子バスケ部、スポーツ推薦で入った奴も多かったので、企業で実業団としてバスケを続ける奴もいる。
実業団を諦め、一般企業や公務員への就職活動をしている奴もいる。




スタメンでそれなりに成績をおさめていた俺は、このままバスケを続けるのも悪くないなと思っていた。




そんな時、1人のオッサンが訪ねてきた。




受け取った名刺を見ると、強豪男子バスケ部がある私立高校の教師だった。
俺の胸は高鳴った。




でも、話を聞きすぐに落胆する。



そのオッサンは、男子バスケ部の顧問ではなく、女子バスケ部の顧問だった。
どうやら、60歳を過ぎ、後任のバスケ部の顧問を数年前から探しているらしい。




正直、男子バスケ部だったらすぐに返事をした。
幸い、メンバーの土屋から誘われ教員免許も取得していた。




だけど、女子バスケ部だと話は全く違う。
ここまで訪ねて来たオッサンには申し訳ないが、その場で断った。




落胆し帰ろうとするオッサンに、何気なく聞いてみた。




「なんで俺のこと知ったんですか?」



俺の問い掛けにオッサンは振り向く。



「ここ数年、男子バスケ部に毎年良い選手が入ってね。
技術面だけでなく精神面も。
男子バスケ部の顧問の先生と話しているうちに、その選手達はある中学の生徒だと分かってね。」




そこで、中学の名前を聞かされる。




「君の母校だよね?
それで、君はたまに母校に顔を出して生徒達に教えていると、その生徒達から聞いたんだ。
その生徒達に、うちの高校の男子バスケ部は良いと言ってくれていたみたいだね?」



「あぁ・・・戦い方も・・・あと試合以外でもみんな良い奴が多くて・・・。」



「君の助言で、君の母校の生徒達は男子バスケ部の顧問からの引き抜きにも、すぐに応じてくれていてね。」



「そうだったんですか・・・」



「それでね、数年前から女子バスケ部にも力を入れていて。
中学から良い選手を引き抜いてこられることも増えてきて、これから本格的に強く出来るところなんだ。」



そこで、オッサンが高校のパンフレットと教員募集の要項の紙を渡してきた。




「男子バスケ部の顧問とも話してね、女子バスケ部の顧問だけでなく、時間が合えば男子バスケ部のコーチとしても来てもらいたいねって。」




「え!?男子バスケ部のコーチもですか!?」





教師としての志も、女子バスケ部への熱い想いも何もないまま、俺は私立高校の教師になった。
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