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夏生と、夏生を囲う男子達の団体は、どんどんと俺に近付いてくる。
夏生はなんとなく俺に視線を向けているようだけど、男の格好をしているからか俺に気付かない。




どうしようか悩んでいると、喋る男子の大きな声が聞こえてきた。





「夏生~!!よく一緒に飲んだり、雑魚寝もしてた仲だろ~!!」





その会話に、心が痛いくらい苦しくなる。
よく見ると、夏生の周りにいる男子達は、みんな大きくてガッシリとした男らしい男子達。




たった1ヶ月半筋トレをして、筋肉がついたと心配していた自分が恥ずかしくなる。




誰が見ても綺麗に、可愛い女の子になった夏生が、俺のすぐ近くまで歩いてきた。





夏生の周りにいる男子達を見て、男の格好で来たことに後悔していく・・・





このまま逃げ出したい気持ちになっていた時、夏生が、俺を見た・・・。 





夏生の驚いた顔・・・。




怖い・・・





怖い・・・





喉がカラカラになり、足が震える・・・。





“泣かない、笑え、笑え”




俺の悩みも、不安も、葛藤も、全てを一瞬で吹き飛ばす、夏生の豪快な笑顔を思い出す・・・。





俺は、ゆっくりと、歩き出す。




夏生に向かって。





夏生は俺を見ながら、立ち止まった。






「夏生。」





夏生の目の前に立ち、自然と出た地声よりも低い声で夏生の名前を呼ぶ。
そして、俺よりも少し目線の低い夏生に、笑い掛ける。





「夏生、知り合いなの!?」





隣にいる女の子が興奮した声を上げ、周りの男子達は逆に静まり返る。





「迎えに来たよ。」





右手を夏生に差し出す。





夏生は俺の手をジッと見詰めた後、ゆっくりと左手を、俺の右手に重ねた───────。
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