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小関の“家”にいた、当時中学生だった小さな女の子。
小関の“家”に代々遣えている秘書の”家”に生まれ、“普通”とは比べ物にならないくらい“可哀想”な女の子にしか見えなかった女の子。


それでも一生懸命秘書になろうと頑張っていて、なのにやっぱり“ダメ秘書”で。


だからこの女の子はいつも口にしてしまっていた。


青にだけだけど、その望みを口から出してしまっていた。


小さな小さな、可愛い望みをこの可愛い口から出していて。


絶対に結ばれてはいけない相手である一平のことを深く深く愛しているこの女の子の姿を見て、俺はいつも“可哀想”だと思っていた。


それなのにこの女の子はいつも笑っていて。
泣きながらでもしっかりと笑っていて。


”良い子だな”と思っていた。


”凄く良い子”で・・・


青のことだけではなくこんな俺のことまでも、心から慕ってくれている良い子だなと、そう思っていた。


青といるといつも変なことや汚いなこと、オナラまでしちゃうようなある意味で“普通”ではない女の子を、俺は今回選んだ。


だって、他の誰かになんてこの気持ち悪い気持ちを言える気がしなかった。


青にだって言うつもりがなかったこんなに気持ち悪い気持ちなんて、口から出てくる気がしなかった。


でも・・・


青が見せてくれた候補者の中にこの女の子がいて、俺は迷うことなく望ちゃんのことを選んだ。


この子になら言える気がした。


いつも青の隣に並び、意地悪だけど優しい青と毎日のように一緒に過ごし、“可愛い余計なコト”を言うこの女の子になら、言えると思った。


俺以上に誰からもモテる青が、この女の子の為に一生独身でいると決めたくらいの望ちゃんになら、言えると思った。


言えると思ったし・・・


それに・・・


それに、俺は・・・


俺は・・・


「鎌田さん、ごめんなさい。」


望ちゃんがミラー越しに俺に謝ってきた。


「私、“ダメ秘書”だからやっぱり上手く掃除が出来なかったです。
愛姉さんに”結構良い”男の人を紹介することが出来ない、ごめんなさい。」


それを聞き、俺の方こそ謝った。


「うん、俺こそ望ちゃんを選んでごめんね?
愛姉に普通に結婚を勧めてみるよ。」


そしたら・・・


「そうですね、こんなに苦しそうで泣きそうなくらいなら、早く鎌田さんと愛姉さんが結婚した方が良いですよ。」


愛姉も俺のことが好きだと知っている望ちゃんが、そんなことを言い出してしまった。
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