387 / 395
27
27-2
しおりを挟む
「DVされているんですか、先輩。」
DVしないんだかするんだかよく分からない発言をしてきた先輩に聞くと、先輩が凄く怒った顔になった。
「私、今の彼氏に精神的DVをされてたのよね。
やっぱり血なのかしらね、DVされるお母さんの血が私にも流れてるのよ。」
「DVされていたのにその方と付き合っているんですか?」
「仕方ないじゃない、それでも信之のことが好きだったんだから。」
先輩のその言葉に私は固まった。
この受付に立っていて固まることなんて1度もなかったけれど、初めて固まってしまった。
「信之・・・。」
自然と口から出てきたその名前に先輩が私のことを見てきた。
「そういえば信之って永家生命で2年間働いていたのよね、永家さん信之知ってる?」
「名字は・・・。」
「橘だけど、橘信之。」
その名前を聞いて、いつも私の隣にいた雪枝にも負けないくらいの美人なこの先輩を見詰める。
「少しだけ知っています・・・。」
「そうなんだ?
信之、営業成績は日本でも良かったみたいだからね。」
「日本では?
今、信之君海外にいるんですか?」
「そうね、25歳になる年に日本を出たの。
なんでもお父さんが大きな会社の専務だったらしくて信之にも婚約者が小さな頃からいたのよね。
非の打ち所がない完璧な女の子。
そう信之から言われてたから永家さんを見るといつもイライラしたのよね。
私のお母さんに似て綺麗な心を持ってそうな子だったし、“こんな感じの子かな”なんて思っちゃって。」
「そうだったんですか・・・。」
先輩の言葉にそれだけしか返せなかった。
永家ホールディングスで専務として働いていた信之君のお父さん。
信之君が消えてしまってから信之君のお父さんは永家不動産の代表取締役に就任をした。
信之君が私の婚約者なのではという噂はそれで消え去った。
消えた信之君、なのに父親は永家不動産の代表取締役になったから。
そんな信之君のお父さんは今、翔子と一夜君を育てる為に永家不動産に残ってくれている。
翔子からの“永家ホールディングスの専務に戻してあげようか?”という言葉に大笑いで首を横に振った。
昔から信之君のお父さんは翔子のことが大好きだった。
だからこそ信之君のお嫁さんになってくれればと思っていたと思う。
そう思いながら、そう願いながら2人を見守り続けてしまった。
私と翔子の家庭教師としてのポジションを崩すことなく、信之君にいつか翔子が永家の“主”として教育してくれることを願って。
そして今は真っ黒にもなった信之君のお父さんが翔子と一夜君についている。
息子が消えると分かった時も息子を止めず、それを私のおじいちゃんやお父さんに報告することなく黙りを決め込んだ信之君のお父さん。
翔子と一夜君にはそんな人までついていて、そして翔子には“繋がり”がある。
学生時代から学校のお坊っちゃんお嬢様と“仕事”をしていた翔子。
その子達が今では自分の親の会社や親から離れた会社の元で上に登りつつある。
永家の“家”は止まらない。
的場製菓を買収出来なかったけれど、永家の“家”は止まるどころか翔ていく。
増田ホールディングスのことが心配にもなってきた時、先輩が言った。
「“楽しく生きる為に日本から出るけど、付き合えるようになったら連絡する”なんて言ってたのに何年も連絡を寄越さないで、あんなの精神的なDVよね。
私今年で30になるんだけど!!」
DVしないんだかするんだかよく分からない発言をしてきた先輩に聞くと、先輩が凄く怒った顔になった。
「私、今の彼氏に精神的DVをされてたのよね。
やっぱり血なのかしらね、DVされるお母さんの血が私にも流れてるのよ。」
「DVされていたのにその方と付き合っているんですか?」
「仕方ないじゃない、それでも信之のことが好きだったんだから。」
先輩のその言葉に私は固まった。
この受付に立っていて固まることなんて1度もなかったけれど、初めて固まってしまった。
「信之・・・。」
自然と口から出てきたその名前に先輩が私のことを見てきた。
「そういえば信之って永家生命で2年間働いていたのよね、永家さん信之知ってる?」
「名字は・・・。」
「橘だけど、橘信之。」
その名前を聞いて、いつも私の隣にいた雪枝にも負けないくらいの美人なこの先輩を見詰める。
「少しだけ知っています・・・。」
「そうなんだ?
信之、営業成績は日本でも良かったみたいだからね。」
「日本では?
今、信之君海外にいるんですか?」
「そうね、25歳になる年に日本を出たの。
なんでもお父さんが大きな会社の専務だったらしくて信之にも婚約者が小さな頃からいたのよね。
非の打ち所がない完璧な女の子。
そう信之から言われてたから永家さんを見るといつもイライラしたのよね。
私のお母さんに似て綺麗な心を持ってそうな子だったし、“こんな感じの子かな”なんて思っちゃって。」
「そうだったんですか・・・。」
先輩の言葉にそれだけしか返せなかった。
永家ホールディングスで専務として働いていた信之君のお父さん。
信之君が消えてしまってから信之君のお父さんは永家不動産の代表取締役に就任をした。
信之君が私の婚約者なのではという噂はそれで消え去った。
消えた信之君、なのに父親は永家不動産の代表取締役になったから。
そんな信之君のお父さんは今、翔子と一夜君を育てる為に永家不動産に残ってくれている。
翔子からの“永家ホールディングスの専務に戻してあげようか?”という言葉に大笑いで首を横に振った。
昔から信之君のお父さんは翔子のことが大好きだった。
だからこそ信之君のお嫁さんになってくれればと思っていたと思う。
そう思いながら、そう願いながら2人を見守り続けてしまった。
私と翔子の家庭教師としてのポジションを崩すことなく、信之君にいつか翔子が永家の“主”として教育してくれることを願って。
そして今は真っ黒にもなった信之君のお父さんが翔子と一夜君についている。
息子が消えると分かった時も息子を止めず、それを私のおじいちゃんやお父さんに報告することなく黙りを決め込んだ信之君のお父さん。
翔子と一夜君にはそんな人までついていて、そして翔子には“繋がり”がある。
学生時代から学校のお坊っちゃんお嬢様と“仕事”をしていた翔子。
その子達が今では自分の親の会社や親から離れた会社の元で上に登りつつある。
永家の“家”は止まらない。
的場製菓を買収出来なかったけれど、永家の“家”は止まるどころか翔ていく。
増田ホールディングスのことが心配にもなってきた時、先輩が言った。
「“楽しく生きる為に日本から出るけど、付き合えるようになったら連絡する”なんて言ってたのに何年も連絡を寄越さないで、あんなの精神的なDVよね。
私今年で30になるんだけど!!」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
イケメン幼馴染に処女喪失お願いしたら実は私にベタ惚れでした
sae
恋愛
彼氏もいたことがない奥手で自信のない未だ処女の環奈(かんな)と、隣に住むヤリチンモテ男子の南朋(なお)の大学生幼馴染が長い間すれ違ってようやくイチャイチャ仲良しこよしになれた話。
※会話文、脳内会話多め
※R-18描写、直接的表現有りなので苦手な方はスルーしてください
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる