【完】好き好き大好きの嘘

22

22-13

25歳、5月



「真理ちゃん、和のことをまた見掛けたのに声を掛けられなかったんだって。」



スマホの向こう側にいる結子はいつもと変わらない声で話している。
今日は久しぶりに孫会に出席をした結子。
“信之君”がいなくなり久しぶりに結子も翔子も2人で出席をしたと和から聞いた。
そしてそこで結子は過呼吸を起こした。



永家の“家”が箸まで投げ付けて結子を怒鳴り付けたらしい。
その箸は和の妹ちゃんが片手でキャッチをし、その瞬間に和は咄嗟に永家の“家”と戦おうとしてしまい、そんな和の身体も和が立ち上がろうとした瞬間に妹ちゃんが押さえ付けたらしい。



和からは結子達と別れた瞬間に電話があり、部屋にいた俺は1番目立つ棚の上に置いていた“一夜”を思わず持ち上げた。



結子にそこまでしてくる永家の“家”を今からぶっ殺しに行こうと本気で思った。



でも・・・



その隣に置いていた“譲”の一升瓶も見て、俺は“一夜”をゆっくりと置いた。



数日前に結子が“ゆきのうえ商店街”へ行き俺に買ってきてくれた“譲”の一升瓶。
早めに出社している俺に合わせて出勤をしてくれ、そこで宝多米店の紙袋に入った“譲”の一升瓶を渡してくれた。



そしたら、入っていた。



“譲”の一升瓶の底にメモ用紙が1枚、入っていた。



そのメモ用紙を、“一夜”の一升瓶を棚の上に置き直した後に手に取った。
“譲”の一升瓶の前に置いていたメモ用紙。



“タイミングを待て、必ず来る。   麒麟”



そう書かれているメモ用紙を。