【完】好き好き大好きの嘘

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それには結構驚きながら立ち止まり、ゆっくりと結子の元まで近付いていった。



そして結子が周りに誰もいないことを確認した様子になり、珍しく少し興奮した顔で俺のことを見上げてきた。



約半年ぶりに結子にこんなに見詰められ身体の熱が一気に上昇していくのが自分でも分かる。
和の妹ちゃんの膝蹴りを思い出そうとするけれど、そんなのは全く思い出せないくらい目の前の結子しか見えない。
俺の“ゆきのうえ商店街”も目に入らないくらいに、結子の姿しか見えない。



入社する前に俺と買いに行ったこの制服と合う化粧品、それだけではなく恐らく自分でも買った化粧品でメイクをしている結子。
俺が思っていた顔とも少し違うことが久しぶりにこの距離で見たことで分かり、それに大きく動揺していく。



結子も少し興奮した顔をしているので、それにつられるように俺まで更に興奮していってしまう・・・。



何も言えないままの俺に結子が先に口を開いた。



「増田君、スマホ出せるかな？」



その言葉に俺は心臓が止まるかと思うくらいに驚いた。
連絡先を交換出来るのかと期待してしまったから。



翔子とは付き合うと決まった日に連絡先は交換しているけれど、結子の連絡先は知らないままだった。



2人で時間を決めてから待ち合わせをして出掛けるようなことはしたことがないから。
たまに2人きりで出掛けられる時は、いつも何かの帰りに寄り道で出掛けるくらいしかしたことがなかった。



それでいいと、その方がいいと思っていたけれど、結子と喋ることも並んで歩くことも出来なくなった今では、連絡先くらい交換しておけばよかったと後悔していた。