【完】好き好き大好きの嘘

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少しだけ触れるような優しいキスだけど、それだけで俺の“何か”は止められなくなりそうで。



それくらいで・・・。



それくらいの中、何度も何度も頭の中で繰り返す。



“浮気も不倫もご法度”



その言葉で“結子”との初めてのキスは灰色になってしまったような気がした。



でも・・・



俺への気持ちを忘れさせることもなかったことにされることも死ぬほど無理なので・・・



俺は強行手段を取ることにする。



本当はこの胸に強い強さをを秘めている“結子”に。



酸素を求めて口を開けたであろう“結子”のその唇に、最後に少しだけしっかりと唇を重ねた。



次に重なるのはしばらく先になるはずだから。



その前に“信之君”と重ならない為に。



“結子”の唇に俺とのキスの記憶が少しでも長く残るよう、願うしかなかった・・・。



そんな願いを込めながら俺は“結子”の唇からゆっくりと唇を離した。



顔を真っ赤にして唇を開いたままでいる可愛すぎる“結子”の顔を見て、もう1度キスをしたい気持ちを必死に我慢する。



そして、俺は“結子”に言った。



「俺と付き合って。」



翔子の格好をしているけれど完全に“結子”が出て来ている“結子”に、そう言った。



自分が翔子になっていることも、自分に婚約者がいることも何もかも忘れ、目の前の俺の顔だけを見詰めている“結子”に。



俺にその胸を抑えられ、身体も抱き締められている“結子”に。



そんな“結子”はトロンとした顔で素直に頷いた。