【完】好き好き大好きの嘘

18

18-12

結子から出てきたそんな言葉を聞き、俺は初めて見た結子の寝癖に少しだけ触れた。



「いつも完璧な結子だからね、寝癖1つで面白く出来るから羨ましいよ。」



そう言ってハネている寝癖から手を離すと、寝癖はやっぱり直ることなくまたハネた。



それに結子は顔を赤くしながら俺から目を逸らす。
俺から目を逸らされたことが凄くモヤモヤとした。
何故かは分からないけど、どうしようもなくモヤモヤとした。



「信之君には寝癖見せたことあるの？」



「ないよ・・・。」



「見せない方がいいよ、可愛いから。」



それだけ言って俺がゆっくりと歩きだすと、結子が少ししてから俺の半歩後ろについてきたのが分かった。



結子の姿を確認すると顔を真っ赤にして嬉しそうな顔で笑っていた。
その顔を見て、俺はやっぱり死ぬほどホッとした。



その向こう側の“ゆきのうえ商店街”や幼馴染み達の顔なんかよりも、結子のその顔に死ぬほどホッとしていた。



そんな自分のよく分からないは感情も確認しながら、俺はゆっくりと歩いた。
結子を置き去りにしないように・・・。



出会ってからは当たり前のように結子も一緒にいて、中学に入ってからは翔子ではなく俺の隣にいることも増えて。



だから感覚が麻痺していたのかもしれない。
こんな風に俺の隣にいてくれることが、死ぬほどホッとすることだなんて気付きもしなかった。



どうしてこんな気持ちになるのかはよく分からないけれど、もう置き去りにしたくないと思った。



それだけは、強く思った・・・。