【完】好き好き大好きの嘘

Bu-cha

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「増田君が増田の会社に入るなら、増田君にも婚約者がいるのかなって思って。」



“家”をぶっ潰すことを考えていたのに、結子がそんなことを聞いてきた。



「そういえば結子は婚約者がいるんだもんな。
俺には今のところそんな話はない。
あっても断るけど。」



「断れるんだ・・・。」



「断れる断れないじゃなくて、断る。
そんなの俺が頷かなければどうにもなんねーだろ。
お前も嫌なら断れよ。」



そう言った。



どうも俺のことが好きらしい結子に。



俺の“ゆきのうえ商店街”をその背中に背負うことが出来るような結子に。



あの日の“ゆきのうえ商店街”と幼馴染み達の泣き顔を背中にしている結子に、俺は申し訳ないけど続けた。



「俺は増田の会社には入らない。
俺は俺の力であいつらより上にいく。
それでぶっ潰したい時にいつでもぶっ潰せるように、これ以上何も取られないようにする。」



そう言いながら、俺は結子を真っ直ぐと見る。



「俺は一応増田の本家の長男だからな。
結子が結婚する25歳・・・だっけ?の時にはどうにか出来たり、お前の婚約者よりも力がある増田の俺がお前と結婚するなんてことも不可能ではないだろうけど。
でも俺は増田の会社に入るつもりはないし、永家に干渉しようとかそういうつもりもない。
そっちの力にはなれなくてごめんな。」



俺がハッキリとそう伝えると、結子は少し驚いた顔をしながら何度も頷いた。



「そういうつもりなんて私もないよ。
私は永家の家の為だけに生まれてきて育てられてるから、信之君とちゃんと結婚するよ。
信之君は永家の家のことも私のこともよく理解してくれてるし、私のことを大切に考えてくれてる。」



俺は上にいくことだけを今は考えていて。
結子の気持ちにもなんとなく分かってはいるけれど、結子を恋愛として好きとかそういうのはなくて。



この綺麗な光景を何故か見せてくれる特別な存在だとは分かるけど、それで恋愛がどうとか結婚がどうとかそういうのとは違うと思っている。



でも・・・



結子の口から初めて聞いた“信之君”の名前と話には少しモヤモヤとした。
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