【完】好き好き大好きの嘘

Bu-cha

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俺がそう言うと和のお母さんからの鋭い視線はなくなり、それに心の中で笑いながら続けた。



「俺の父さんには立派な“正義”があった。
家の名前はなかったけど会社員だった頃は金もあったし、勉強だって出来たし、それなりに力もあった。
でも、守りたいと思ったモノも幸せにしたいと思ったモノも立派な“正義”だけでは難しかった。」



母さんと結婚をして商店街に戻るまでは、父さんは増田の会社で働いていた。
商店街の“麒麟”や竜さんの影響で、父さんも日本で1番の大学を出た。
“麒麟”は藤岡と繋がりを持てた状態で商店街に戻ってこられたので、父さんはもう1つの財閥である増田の方に入った。



自分は増田で得られた知識や経験、力を持って商店街に戻りたいと思っていたから。



そんな立派な正義の心を持った父さんが持って帰ってしまったのは、あの商店街を潰すという増田による真っ黒な力だけだった。



父さんや俺、元気に怒りの感情を持たせる為に。
ただそれだけの為に、“ゆきのうえ商店街”を消し去ろうとした。



「俺は家の名前なんてなくたって、金なんてなくたって、勉強もそこまで出来なくたって、力なんてなくたって、幸せだった。
でも、それでは俺は守れなかったし幸せにも出来なかった。」



隣に座る和から“ゆきのうえ商店街”を感じながら、いつか必ず戻ることを考える。
それだけを強く強く考える。



「俺が弱者だったせいで、最後は大好きな幼馴染み達の笑顔を守れなかった。
俺が弱者だったせいで、俺の存在を含めた幼馴染み達の幸せな未来を守れなかった。
俺も弱者、小学生とかそんなことは関係ない。
守りたいと思うモノを守れず、幸せにしたいと思うモノを幸せに出来なかった弱者。」



「そうだとしても、そいつらにとっても大きなモノを手に入れるキッカケになったと思うぞ。
増田自身もそうだろ。」



「そうだな。」



和からの言葉に俺は返事をした。



“ゆきのうえ商店街”には“駿と雪”がいる。
だからきっと終わらない。



“駿と雪”の隣にはいつも俺がいたけれど。



本当は、あの2人の隣にいつも俺がいたけれど。



俺が弱者だったせいで守れなかった。
あんなに泣かせてしまった。



俺のせいであんなに泣かせてしまった・・・。



そう思っていて苦しくなっていた時・・・



目の前に座っている和のもう1人の従妹が、下を向いた。
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