【完】好き好き大好きの嘘

13

13-7

そして、俺は永家不動産に入社をした。



その人を初めて見た時、強くて逞しそうな女の人だなと思った。



1人で何でも背負ってどんな道でも歩け、時代の先まで泳げる人だろうなと、女の人なのに本当にそんな人がいることに少しだけ驚いた。



お金持ち過ぎる家に生まれてきたのに、誰よりも貪欲で誰よりも働いていた。



そんな人が俺の教育担当となってくれ、その人と仕事をする毎日はとても楽しいものだった。



「翔子さんね、永家財閥の本家の次女なんだって！」



入社して数日後、同期数人で呑んでいると女の子がそれを教えてくれた。
あの人はそんなこと一言も口にすることはなかった。



「高校3年の時から付き合ってる彼氏がいるらしいぞ、相手は逆玉の輿だよな！！」



同期の男子の言葉には少しだけ驚いた。
あの人からは彼氏の“か”の字も聞いたこともなければそんな雰囲気もまるでなかった。
とにかく仕事ばかりをしている人だったから。