【完】好き好き大好きの嘘

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それから数日後には、“ゆきのうえ商店街”を中心に永家不動産は土地の売買契約を次々に進めていった。
建物の取り壊しは永家不動産が持つことにしたけれど、低価格の提示金額でも所有者は大喜びで契約書に判子を押した。



それほどに負債になっていたのだと分かる。
もう1つの財閥があの辺り一帯を力を使って抑え込んでいたから。
土地と建物を所有しているだけでも税金は掛かる。
木造でボロボロの建物だったとしても。
それを建て替えることも出来ないくらいに昔から、あの辺り一帯には力が働いていた。



そんな中、“雪枝”の家だけは1階の店部分を改装していた。
恐らく藤岡の力なのだと思うけれど・・・。



“藤岡には不動産会社もあるのに、全然連携取れてないな！”



そう言って大笑いをしていたお父さんの言葉を思い浮かべる。



麒麟も藤岡に相談をしていたはず。
藤岡にはあれと戦える力があるから。
でも、それは叶わなかった。



藤岡の古くからの不動産会社は新しい親族が代替わりしてから解体してしまった。
信じられないことに、その社長は大企業であった藤岡不動産を解体してしまった。



そして、新たに藤岡の不動産会社を作った。



その不動産会社の名前を思い浮かべて思わず笑ってしまった。



その名前は、コタ・エステート。



藤岡の“ふ”の字もない名前をつけたその社長。
藤岡は子会社の不動産会社と連携を取ることが出来ないらしい。



いくら親族だからといって、全員が全員“家”に従うとは限らない。



いくら強大な“家”だからといって、それに屈する人間ばかりではない。



「流石ユズの友達だよね、ありがとな！」



急に駿君から話し掛けられ、私はビクッと反応してしまった。