【完】好き好き大好きの嘘

Bu-cha

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私の言葉にお父さんは面白そうな顔をして、親指と人差し指で顎を触りだした。



「それで?」



「“ゆきのうえ商店街”は、うちの土地にデパートが建ったタイミングでお客さんがほとんど来なくなっていた。
麒麟から援助を受けなければならないくらい、全てのお店が潰れそうになっていた。
デパートが1つ建っただけで、そこまで影響が出るのは普通じゃない。
でも、“ゆきのうえ商店街”にはもう1つあった。」



「何があった?」



「麒麟の隣には、拘りしかないお米屋があった。」



「米屋?」



お父さんが笑いながら聞いてきたので、私は紙袋に入った駿君の家のお店、“宝多米店”の純米酒を出した。



「日本全国の酒蔵と契約をして作らせている、宝多米店のプライベートブランドの純米酒があった。」



「米屋で純米酒か。」



「“雪と駿”を中心に、味も価格も広げた純米酒を作っている。
飲食店に卸すことはあっても他の酒屋には卸していない。
この純米酒は“ゆきのうえ商店街”でしか買うことが出来ない。
この商店街に定期的に通う名目がそれで出来る。」



「藤岡と近藤だけではないな、麒麟の元を訪れているのは。」



「そうだと思う、麒麟があの商店街にいたことは予想外だったはず。
麒麟の隣にそんなモノを作ってしまう店主がいる米屋があるなんて予想外だったはず。
“ゆきのうえ商店街”には、それよりも大きなモノがあったなんて予想外だったはず。」



「それよりも?何があった?」



さっきから手に持っていた純米酒、“駿と雪”とラベルに書かれた純米酒を掲げる。



「“駿と雪”があった。」



お父さんは首を傾げながら私を見てきて、お父さんにも分からないらしい。
それには笑いながら続ける。



「米屋の息子である“駿”と、麒麟の娘である“雪”。
“ゆきのうえ商店街”にその2人が生まれることは予想外だったはず。
“ゆきのうえ商店街”はその2人がいたから終わらなかった。
商店街の土地を丸々食べることを想定していたのに、“ゆきのうえ商店街”は終わらなかった。」



そう言いながら“駿と雪”をお父さんに渡し・・・



紙袋に入れていた紙もお父さんに見せる。



「永家と藤岡、それともう1つの財閥であるこの不動産会社がこの商店街を丸々狙っていた。
でも潰れたのはたった1つだけ。
増田君の・・・増田譲君の家たった1つだけ。」
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