【完】好き好き大好きの嘘

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“翔子”のそんな力強い言葉に驚いていると、私の隣に座る一夜が私の左手に大きな手を重ねてきた。



「僕は社会人として翔子さんに教育をされて一人前になれました。
翔子さんはその時既に永家不動産の売買の部門でトップの営業成績を誇っている女性でした。
男性でも思い付かないどころか誰もチャレンジをしないような土地に売買の営業を持ち掛けたとんでもない女性です。」



一夜がそんなことを言い出して、私は左手を一夜に重ねられたまま一夜の方を見る。



「誰もが無理だと言って笑っていたあの巨大な土地の持ち主に、契約書に判子を押させました。」



「だから生意気な女なんだ！！！
男よりも口が立って仕事が出来る女なんて男が可愛がらない！！！」



「でもお祖父様、この世界は弱肉強食ですからね。」



一夜が私の左手をギュッと握ってきて、営業中のようにその目に激しさを込めた。
優しい笑顔で、その目にだけ激しさを込めた。



「強い者だけが生き残り、弱い者は食われてしまう。
それはこの世界の常識ですよね。
僕も幼い頃から父にそう教わってきました。
翔子さんはとても強くて逞しい女性です。
それはあの永家不動産の営業部に所属するどの男性よりも。
翔子さんが誰にも可愛がってもらえないのだとしたら、それ程弱い男が悪いのであって、強くて逞しい翔子さんが悪いのではありません。」