【完】好き好き大好きの嘘

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「増田君、ごめんね？
永家の“家”はこういう家なの。
翔子は生まれた時から“私”を守る為だけに育てられてきたの。
ドレスを着た“私”を守る為だけに。」



困った顔で、でも小さく笑いながら増田君を見上げ続ける“結子”。



「翔子はドレスを着られないの。
ドレスを着たら守れないでしょ？
“私”に危険が迫った時、ドレスでは守ることが出来ないから翔子はいつだってスニーカーを履いて“私”の隣にいるの。」



何も言わない譲に“結子”は続ける。



「だから、ありがとうね。
5月22日までだけど、翔子と付き合ってくれてありがとう。
この指輪はその日まで翔子が持っててもいいかな？
こんなに動揺しちゃうくらい喜んでるんだもん。」



「いや、無理。」



「・・・今返した方がいい？」



「それはもっと無理。」



譲はそう言って、怖いくらい力強い目にもっと力を入れた。
横から見ている私はその目があまりにも怖くて目を逸らしそうになる。
それなのに、“結子”はクスクスと笑いながら譲のことを見上げ続ける。



「そんなに翔子と結婚したいんだ？」



「結婚よりも何よりも、俺はこいつからワガママを聞きたい。
今の俺ならどんなワガママも叶えられるから、俺はワガママが聞きたい。」



「どんなワガママでも？
凄いね、増田君。
翔子の為にそこまで頑張ってくれるんだ？」



「俺もワガママ聞きたいけどね。」



ずっと黙っていた一夜が、一夜君が急にそう言って、“結子”のことを優しい顔で見下ろした。
でもその目には激しい力を感じる。



「俺だって叶えられるよ、どんなワガママでも。
だから俺にもワガママ言ってよ。
灰色でも真っ黒でも、俺も絶対に叶えてみせるから。」




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