【完】好き好き大好きの嘘

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「あの人のご両親はとても素敵な人達でした。
とても・・・とても綺麗な言葉が溢れている人達でした。
そういう意味では、一夜の“家”は財閥にも負けないくらいの“家”です。」



一夜のことを話ながら譲のことを考える。
さっきからずっと、譲のことを考える。
さっきからどころか、私はずっと譲のことを考えてきた。



ずっと昔から、譲のことをいっぱい考えてきた。



「永家財閥にも負けない“家”・・・。」



向上心しかないような譲。
両親が営んでいた化粧品のお店がなくなり、その時に抱いた気持ちと幼馴染みとの約束で高みを目指してきた譲。



そんな譲が選んだ会社はこの的場製菓だった。
小学校3年生から友達である和が将来の社長になる会社、的場製菓。
製菓業界では大手だけれど財閥には負けてしまうような会社。



財閥の会社にだって入れたのに・・・。
譲は、財閥の会社にだって入ることが出来たのに・・・。



それなのに、入らなかった・・・。



婚約者になるつもりなんてなかったから・・・。



譲は、私の婚約者になる気持ちなんて何もないから・・・。



何も何も、ないから・・・。